Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

ノルディック勢 メダルに届かず… 健闘なのか、苦戦なのか…

2010-02-28 | 冬季五輪
現地時間の2月23日、日本時間の24日早朝。ジャンプ競技と云うよりもノルディック種目で最もメダルに近いと思っていた Team Large Hill ( HS140 ) で日本チームは5位に終わりこれで3大会連続メダル無しの結果に終わろうとしていた。
でも入賞は何度も、90年代に入り欧州の列強とはアジアからただ1カ国肩を並べるまでになった日本であるが、その後欧州勢に勝たせる為のルール改正にもひるまず世界選手権では上位に入る事も少なくない。それでも世界に存在意義を示すのにはやはり五輪でのメダルを見せつけたかったなぁ…でもそうなるとまたルールを変えられるかもしれないなぁ……

LH では葛西が1人気を吐き8位に入賞した。しかし私を含め多くのノルディックファンはこの Team Large Hill にメダルの期待をかなり掛けていた事だろう。世界選手権では 2007年札幌、2009年 Liberec 共に3位。Vancouver ではオーストラリアが断然抜けていたが鳥人 Simon Ammann のスイスは 2009年世界選手権 Large Hill 金メダルのKüttel こそいるが4人まではメンバーが揃わない。 Adam Malysz のPoland も Stefan Hulla 以降の選手は力がおちる。そしてドイツ勢、フィンランド勢はかつての勢いはない。特にフィンランドは復帰して Normal Hill で4位に入った Ahonnen が怪我で Team LH には出場出来ない。 Large Hill に強いはずの Norway は Tom Hillde の11位が最高。上手くすれば銀メダルの可能性もあると期待は高まるばかりだった。しかし試合後よく考えればそれは勝手な私の胸算用に過ぎなかった。 
今回の L.H. の結果を見ても葛西こそ8位に入ったが伊東大貴は 20位。栃本、竹内は2回目に進めなかった。一方ライバル国を見るとノルウェーは最も成績の良かった Hillde は11位で葛西の後塵を拝したが、Jacobsen が12位、さらに Top 30には Evensen ( 15位 ) Bardel ( 22位) と4人が入り、ドイツは6位に Neumayer , LH 4位のUhrman が25位、そしてかつての英雄 Martin Schmitt が30位に入った。 Uhrman, Schmitt がもし本来の力を出してしまえば日本は太刀打ち出来ない。 

列強ばかりではない、チェコ、スロベニアはTop 30 にそれぞれ3人ずつ入っている。ポーランドも LH で30以内に入った選手は銀メダルの Malysz と19位の Hulla の二人だけだが、この二人の合計点が 486.6 ( Malysz 269.4, Hulla 217.2 ) は日本の 466.1 ( 葛西 239.2, 伊東 216.9 ) を上回る。 メダルどころか1回目が終わって上位8位内に入る事も何も保証されている訳では無かった。 メダル獲得条件は葛西にスーパージャンプを2本揃えて貰う事と他の3選手に自己ベストに近いジャンプをしてもらう事だった。 

前半終わって5位。しかしメダルは射程距離内。

日本のトップバッターは伊東大貴。 K点を越える 129.5m ( 122.1pt ) のジャンプはここにきて最高のジャンプだった。Austria のLoizel の138m ( 140.4pt ) は別格としてメダル争いをするドイツの Neumayer が 138m ( 135.6pt ) を飛んで 2位に入り、日本、フィンランド、ノルウェーとの差をつけるスタート。Norway は Bardel が 128m(118.4pt ) で 伊東を下回ったが フィンランドの Hautamaki が実力を見せ133.5m( 129.8pt )Poland の Hulla が129mながら飛型点が良く 122.2pt で4位に入り、日本は5位スタートだった。
日本の2人目は竹内。 NH, LH 共に2回目に進めなかった。竹内は 125.5m ( 113.4pt ) 飛んだが Hillde (118.5pt ) が飛んだ Norway とKoudelka ( 124.3pt ) が飛んだチェコに逆転された。ただ Poland の Rutkowski が 108.4pt で落ちて来て日本は順位を一つ落として6位に。3位 Finland とは 14.6pt 差となった。
3人目の栃本は 128m ( 118.4pt ) を飛んだが順位を上げる事は出来なかった。しかし Finland の Keituri が 123m ( 108.4pt ) に留まり4位に後退。J.R. Evensen が131.5m ( 127pt ) を飛んで3位に浮上。そして日本と3位 Norwayの差は9.7pt となった。何とかメダル圏内に近づいてきたが Slovenia の Peter Prevc が3人目の中では Morgenstern の 135.5m ( 135.9pt ) に次ぐ2番目の132m ( 127.1pt ) の大ジャンプで得点を稼ぎ Poland を抜いて7位に上がり6位の日本とは 2.9pt 差に迫って来た。さすがは N.H. 7位 の選手。
そして4人目、葛西が 133.5m ( 130.8pt ) を飛んで、チェコのJacob Janda ( 128m, 119.4pt ) を大きく上回り5位に浮上。そしてSlovenia のRobert Kranjec ( 129m 121.2pt ) も上回り後続を引き離す。ただ Poland のMalysz が 136.5m ( 137.2pt ) を飛んで Slovakia に替って日本と 0.7pt 差の7位に上がって来た。さすが Malysz と云うジャンプだった。 
そして上位陣は Finland Harri Olli が 134m ( 131.7pt ) , Norway のAnders Jacobsen 138m ( 140.4pt ) ドイツのUhrmann 135m ( 133.5pt ) そして Austraia の Schlirenzauer が 140.5m ( 144.9pt ) 。次々と葛西の記録を上回り徐々に引き離されてくる。 Schlirenzauer のジャンプはこの日初の Hill Size 越え。そして N.H. でスーツ違反で2回目に進めなかった Olli が意地を見せた。葛西としては Malysz と同じくらい飛びたかったかもしれない。そうすればこの時点で4位には上がれたかも……

1人目を全て終えての結果は下記の通りだった。

1. Austria      547.3pt
2. Germany    509.3pt
3. Norway      504.3pt
4. Finland       490.2pt
5. Japan        484.7pt
6. Poland       484.0pt
7. Czech        477.4pt
8. Slovenia     472.2pt

3位の Norway とは 20pt 開いた。2人目でどれだけ挽回できるか…しかし飛べば飛ぶほど差が開く様にも感じた。

差は縮まらず…メダルは遠かったのか…

2回目伊東は 133.5m ( 130.8pt ) を飛んだ。NH の2回目で失敗して以降少し生彩を欠いていたが Team L.Hでは力を発揮してくれた。彼の個人の記録 252.9pt ( 129.5m 133.5m ) は32人中16番目の成績だった。 Finland の Hautamaeki が 130m ( 123.5pt ) で日本が Finland を抜いて4位に。そして Norway の Bardel が127m ( 117.1pt ) に留まり総合で3位ながら 621.1pt で4位の日本は 5.6pt 差でメダル圏内に再び大きく近づいてきた。 

こうなると葛西の前の竹内、栃本のジャンプが非常に大切になって来た。 
竹内は1回目の 125.5m を上回る 129.5m ( 122.1 pt ) を飛ぶ。だが前を飛んだチェコの Kodelka が 135.5m ( 134.4pt ) の記録を出し、日本はチェコに抜かれた。そして更に Finland Happonen ( 139m 142.2pt ) Norway Hillde ( 139m 141.7 pt ) Germany Anders Wank ( 139m 141.7pt ) そして Austria Anders Kofler ( 142m 138.6pt ) とHill Size 付近、そして Hill Size 越えのジャンプが続く。Happonen の時から非常に良い向かい風が吹き出したと言う幸運に恵まれた。出来れば竹内の時からこういう風になって欲しかったが… 竹内の2回目の記録は2回目2人目8人の選手の中では最下位だった。 結果的のここでの結果が試合を大きく左右した。 日本は6位に後退した。そして3位 Norway とは25.2pt 離された。

3人目栃本。葛西に繋げる為に 1m でも遠くに飛んでくれ…と願う。栃本は 132m ( 126.6 pt ) 飛んでまず チェコを抜いた。続く実力者 Slovenia の Prevc は 127.5m ( 118pt ) に留まり日本を抜けない。Poland の Stoch は 2回目3人目の選手の中では Morgenstern に続く134.5m ( 132.6pt ) を出し日本と10.6 pt 差の7位に。最後の Malysz が大ジャンプをすれば5位の日本、6位チェコは抜かれてしまう。 Finland の Keituri は栃本と同じ 132m ( 126.6pt ) 飛んで日本を近づけさせない。 Norway の Evensen は 129.5m ( 122.1pt ) の記録を出しここでも差は少ししか詰められない。
2位のドイツは Schmitt がK点にも届かない 122m ( 106.6pt ) に沈んだ。1999,2001年世界選手権 L.H. 2連覇を達成したベテラン Schmitt はショックで中々立ち上がれない。そして次に飛ぶ Uhrmann の表情がアップになる。Schmitt は2009年の世界選手権の Team L.H.でも失敗していてそれが原因でドイツは10位に沈んだ。 
こんなことを言うのは不謹慎だが、Norway のEvensen がこういうジャンプだったら…日本のメダルの可能性も出て来たのだけど…..
次に飛んだ Morgenstern が 135m ( 135pt ) を飛び Austria は2位ドイツと 70.4 pt 差の 962.7pt となりこの種目ほぼ金メダルを決めた。

  

最後の選手の飛行を前に上位の得点は下記の通りだった。

1.Austria      962.7pt
2.Germany   892.3pt
3.Norway      884.9pt
4.Finland      882.5pt
5.Japan       864.2pt
6.Czech       860.1pt
7.Poland      853.6pt
8.Slovenia    816.6pt

日本は既にメダル争いから脱落していたかもしれない。
葛西が大飛行を見せて、Uhrmann( ドイツ ) Jacobsen ( ノルウェー ) のどちらかの選手に失敗が無い限りメダルの可能性は無いという状況になっていた。順番が変わる最後の4人目。まず Slovenia の Kranjec が 139m ( 142.2pt ) を飛べば続く Malysz も 139.5m ( 143.1pt ) を飛ぶ。チェコの Janda は 129m ( 121.7pt ) に留まり Poland がチェコを抜いた。

そして葛西がスタートを迎える。 これまで五輪では悔しい思い出しかないと語っていた。6回目の五輪の最後となるアプローチに入ると素晴らしい大飛行を見せ Hill Size Jumpの 140m ( 145.4 pt ) を飛んでガッツポーズを見せる。ここでも Kamikaze Kasai の存在を見せつけてくれた。さすがベテランと云うパフォーマンスだった…..

これで日本の総合得点は 1007.7 pt となった。続く Olli が125.2pt 約 132m 程度飛んでしまえば Finland に抜かれてしまう。そして Olli は134.5m ( 132.1pt ) 出し、6.9pt 日本を上回ってしまった。続く Jacobsen には何とか 130m 前で落ちてくれ… と願うも140.5m ( 145.4pt ) のHill Size Jump でこの時点でトップに立つ。そしてメダルを決めた。 日本は3位に後退するが、最後に飛ぶ Austria が控えているのでこの時点でメダルの可能性は潰えていた。 
ドイツの Uhrman は122.3pt , 約 130m 飛んで Finland を上回ればメダルが決まる。そして Uhrmann も Hill Size Jump の 140m ( 143.5pt ) でトップに立つ。 Uhrmann を囲んで勝ったかの様に喜ぶドイツ選手団。 特に Schmitt は本当に安心しただろう。 
そして最後の Schlirenzauer は Hill Size を大きく超える 146.5m ( 145.2pt ) 貫録のジャンプで締めくくった。

    

1.Austria     1107.9pt
2.Germany  1035.8pt
3.Norway    1030.3pt
4.Finland     1014.6pt
5.Japan      1007.7pt ( 伊東 252.9, 竹内 235.5, 栃本 245.0 葛西 274.3 )
6.Poland       996.7pt
7.Czech        981.8pt
8.Slovenia     958.8pt

World Cup Ranking の2位から5位を占める Austria の圧勝だった。2位ドイツとは 72.1pt も差がついた。 
 
  


2位のドイツは Schmitt が失敗をしたが Uhrmann, Neumayer が実力を発揮した。 そして個人種目では良いところが無かった Norway が3位に。同国ではWorld Cup Ranking トップである 9位の Jacobsen , そして LH 11位の Hilde がよくチームを引っ張った。 
Finland は 15.7 pt 差でメダルを逃した。Ahonenn が Team LH に出ていればメダルに届いたかもしれない。

そして日本はかえすがえす、竹内の2回目の風向きが悔まれる。 ここで上位4カ国と20点差がついてしまった。葛西、伊東に続く選手が上位国と比較すると少し層が薄かったか…しかしその思いを4年後に。長野五輪では葛西が補欠に回されるほど選手層が厚かったのだ…結果論だけど昨年世界選手権 Team L.H. 金メダルの Austria そして銀メダルのノルウェーはこの五輪も同じメンバーでそれぞれメダルを勝ち取った。 日本は岡部が外れた。今シーズンは大不調だったらしいが、昨年の世界選手権の2回目はLoitzl に次ぐ2番目の 135m を飛んで日本にメダルをもたらした。一発を持った選手に掛けても良くはなかったか…
4年後に向けてと云うよりの明日からに向けてまずコーチから替えないとなぁ…. フィンランド人のユリアンティラコーチは問題だらけだったらしい。詳しくは知らないけど、今年に入り来日したのは札幌でのWorld Cup の頃だけだったらしい。 先週の近くにいないコーチなんて意味あんのか?かつては英雄マッティ=ニッカネンを育て上げたと言う肩書があるらしいが、日本人はどうも名前と肩書に弱い。本当にニッカネンを育てたのかも怪しい。ただニッカネンがずば抜けた才能があって、代表クラスになった時にたまたまコーチだったのではないか? もし“ニッカネンの肩書”に頼るのなら、ニッカネンを無名から有名にしたコーチを連れてこないとなぁ…
無差別に大会社や大商社から役員、部長クラスとして人を迎える企業みたいだ。 大概はそういうのは役に立たない。 

  

だが最後の葛西は圧巻だった。彼の記録、274.3pt は全体の6位に相当する記録だった。
  1. Schlirenzauer : AUT   290.1pt 140.5m / 146.5m
  2. Jacobsen       : NOR  285.8pt 138.0m / 140.5m
  3. Loizel            : AUT   282.2pt 138.0m / 138.5m
  4. Malysz           : POL  280.3pt 136.5m / 139.5m
  5. Uhrmann        : FRG  277.0pt 140.0m / 135.0m
  6  葛西             : JPN  274.3pt 133.5m / 140.0m
  7  Morgenstern   : AUT  270.9pt 135.5m / 135.0m
  8. Neumayer       : FRG  270.3pt 137.0m / 136.5m
  9. Kofler            : AUT   264.7pt 138.0m / 142.0m
10.  Olli                : FIN     263.8pt 134m  / 134.5m

この後行われた Nordic 複合の団体戦も日本は6位に終わった。
この種目も昨年の世界選手権では金メダルだったんだけどなぁ.... だけどこの世界選手権の成績も素晴らしい成績。もっとマスコミは報道しろよ。
Team L.H. が終わった翌日偶然 Finland のお客と話す機会があった。そして話題は五輪の事にも及んだ。そして私は訊ねられた。 

         Kasai, how old ?

一般のフィンランド国民の間でもKamikaze Kasai は知られている事が解った。その事実が何だか一矢報いてくれた様でものすごく嬉しかった……