Mr.コンティのRising JAPAN

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1年振りのS League 観戦  がんばれ日本人選手達 !!

2009-07-19 | Football Asia

世界ではまだまだ新型インフルエンザの警戒が続いている。今回商用で訪れた ASEAN 諸国でも入国時に今の体調、携帯番号等の連絡先そして宿泊先のホテルの詳細を記入した書類の提出を求められた。ある外国人は宿泊先は外で待っている友人が手配しているので今は判らないと係り員と押し問答をしていた。
この時期 ASEAN 諸国は雨季で気温も低く過ごし易いとたかをくくっていた事が間違いであった事はすぐに分かった。シンガポールでは日中の強烈な日差しに閉口した。やはり赤道付近にある国は違った。

1年振りに S League 観戦の機会に恵まれた。 目当てはここシンガポールで2001年のシーズンから9シーズンプレーする日本人選手、中村彰宏。昨年は Woodland Wellington に所属し今シーズンからは6つ目の所属クラブとなる Tampines Rovers でプレーする。
そしてこの Rovers には全国高校選手権2連覇を果たし18歳で U-20 代表にも名を連ねた金古聖司が今シーズンから加入した。 金古と言えばトルシエ時代はどんな選手になるのかと思ったが怪我の為にワールドカップメンバーには選ばれなかった。でもここで金古が見れるとは、とわくわくした。しかしながら本命の中村彰宏が何と怪我でしばらく試合に出られない事を現地で知ってしまった。
現役時代故障でリタイヤした事は私も経験がありその時は焦り、どれだけ悔しいをしたか….やったものでないと解からない。もっとも私の競技レベルなど彼らに比べる事も出来ないけど……

この日の Rovers の相手は Young Lions。選手の大部分はシンガポールU-23代表候補で構成されており、対外的にはこの世代のナショナルチームとしてシンガポールを代表する事になるが、国内リーグにおいては同国協会の管理下の下、クラブチームとして運営されている。
1992年、J League が開幕する前年のナビスコカップでバルセロナ五輪予選に向けて五輪候補チームが強化の為に当時の日本リーグのチームに混じってリーグ戦を行った事を思い出す。しかし候補選手のなかには学生もおりなかなかメンバーが揃わず当時の横山五輪代表監督もチーム編成にかなり悩まされた事だっただろう。

今シーズンの S League は序盤は新加盟の Brunei DPMM が開幕10戦目を終えて負けなしの6勝4分と好調なスタートを切り話題となった。チームのHassanal Bolkiah Mu'izaddin Waddaulah 会長はブルネイ王国の政府高官も兼任しているらしい。ブルネイと言えば世界でも屈指の裕福国家。その豊富な資金を元にチームは文字通り隣国ブルネイの選手が中心でクロアチア人、韓国人そしてアルジェリア人選手が合わせて3人含まれている。しかし全ての試合が“アウェーゲーム”となるせいか第11戦目の Home United 戦で初黒星を喫すると ( 0-2 ) 以降は3勝4分1敗。ここ2試合連敗中だ。そして前節は Tampines Rovers に 1-2 で敗れた。 そして現在は4位となっている。
首位を走るのは今シーズンシンガポール史上初めて AFC Champions Leagueに進出した SAFFC 。開幕9戦目まで8勝1敗と絶好調。第10戦は Brunei との“直接対決”に 1-2 で敗れたが以降8連勝で首位を走っている。
そして2位に着けているのがこの日観戦した Tampines Rovers 。そして対戦相手の Young Lionsは12チーム中11位と低迷している。そして日本から“参戦”している アルビレックスは7月19日現在9位となっている。今後の奮起に期待したい。

競技場に着いて着席した時はキックオフから2分程度経っていた。後ろに座っていた現地の人に “ Kaneko は?“と訊くと “ Number 18 ” とピッチを指差す。左のCBのポジションにいた。 “ Nakamura ? Injured ? “ と訊くと軽くうなずき今度は後方の座席の方を指した。 チームメイトとスタンド観戦をしていた。 ピッチにいたいだろうなぁ.. 後でサインもらいに行こう…..

試合は Rovers が押す展開。15分、17分に連続して相手PA付近でFKを得る。直接狙うも GK Hyrulnizan Jumaat がナイスセーブで防ぐ。蹴ったのはタイ代表の Sutee Suksomkit。 2004年 Asian Cup の日本戦で先制ゴールを決めた選手だ。一時は欧州進出の噂もタイ国内であった選手だ。 Rovers は Sutee だけではなく、 GK Hasaan Sunny ボランチの Fahrudin Mustatic  FW の Noh Alam Shah がシンガポール代表で昨年のワールドカップ予選にも出場した。 Mustatic はユーゴからの帰化人選手。また金古とCBを組む Shariff Abdul Samat も出場こそなかったがワールドカップ予選メンバー。更に2列目の右サイド、 Ridhuan Muhammed も2007年の北朝鮮戦に出場経験がある。さすがに代表選手が相手だと選抜チームでも苦戦するということか?試合は Lions ゴール付近で展開される時間が長く最後はどうしてもファールで止めざるを得ない。24分には カウンターからAlam Shah からのスルーパスを受けた Sutee がシュートを放つがここも GK Juma’at がブロック。こぼれた所をもう一度 Sutee が詰めるがシュートは外れてしまった。
Lions はワントップの Eugene Luo のドリブルが頼り。攻撃時には左の Irwan Shah と右の Fazli Ayob らが上がって来るが1対1で Rovers DFで押さえられてしまう。27分に右サイドを Luo がドリブルで突破し中に入れると金古がマークに入る直前にボランチの Hariss Harun がシュートを放つがここは GK Sunny がナイスセーブで防ぐ。 その直後今度は Sutee がドルブルで Lions ゴール前に迫る。 PA 内で相手DF3人を引き付け最後は Alam Shah に絶妙のラストパスを送るがまたも GK Juma’at が Alam Shah のシュートをファインセーブでストップ。両GKのナイスセーブ連発は観ていてこちらも引き込まれてしまう。29分に Lions は Harun の中央突破から右に流れた Luo を経由して中に入った Ayob に渡るがシュートは大きく外れてしまった。
この時間からボランチが上がって来て Lions のも攻勢に出て来るかと思った31分、 Lions ベンチは何故か Luo を下げてしまう。周囲にいた人達と目が合いお互いに Why ? と…2トップにするのかと思ったけど投入されたKhalili D’Cruz はそのままワントップに。 188cmの長身を生かそうとするのだろうけどクロスが上がるのかな?

なかなか先制ゴールの決まらない Rovers は33分過ぎから金古が上がって来るようになった。そしてスルーパスも出すなど少し格の違いを見せる。 

   

そして36分 Alam Shah が右サイドを突破し前に上がったフリーの Ridhuan Muhammed にボールが渡る。 Ridhuan は前に出て来た GK Juma’at の動きを冷静に見てシュートを軽く浮かせて Lions ゴールネットを揺らした。 最後の砦を守り続けた Juma’at だが遂にゴールを破られてしまった。 
先制した Rovers は更に攻勢に出てくる。40分にはFKから金古がヘッドを放つが惜しくもクロスバーを越える。180cmの金古はここシンガポールでは頭が一つ抜ける。そして41分 Sutee のスルーパスから Ridhuan がシュートを Lions ゴールに蹴り込み連続ゴールを決める。これでこの試合の大勢が決まったような気がした。その直後 Lions はFKのチャンスから最後は Ayob がシュートを放つがポストの右に外れた。
1対1で劣る分、運動量でカバー…とはこの高温下ではなかなか選手も動けないだろうなぁ…と思ったら前半終了のホイッスルが鳴った。 

ハーフタイム中に中村彰宏選手のところに駆け寄り記念写真を撮影させて貰った。 
早く怪我を治して試合に出られる事を願っていることや、ホームページに掲載されているお子さんのが随分と大きくなりましたね、といった話をしたら丁寧に応じてくれてとても嬉しかった。せっかく来たのに怪我で欠場で少し残念に思う事を伝えると
“その代り金古がいますから”と応えてくれた。
でも本音は昨年に続いてあなたを見たかったんだけど…. とは言いたかったけど言えなかった。そんなこと言って焦らせてもと思ったけど、やっぱり言ったら方がよかったかな…… 話ではもう少ししたら復帰可能との事。現場復帰がする来る事を祈願している事を伝え、挨拶をして座席に戻った。
日本じゃ現役選手とこういう形で試合中に話せるなんて考えられない.....

後半開始直後の45分56秒に Faireoe Hassan からボールを受けた D’Cruz がドリブルでRovers ゴールに迫ったが以降は Rovers が主導権を握る。54分47秒、Ridhuan のドリブル突破で中に切れ込み中の Aliff Shafaein がシュートを放つがジュストミートしなかった。 Rovers は2トップ、左の Shafaein、右の Alam Shah が上がると Sutee が左サイド、2得点の Shafaein が右サイドラインからフォローに入りボランチの Skukor Zallan, Mustatic の押し上げも早く数的優位が常に形成される。ボランチの2人は上背もあるなぁと思ったが後で調べたら180cm程。欧州では決して大きい部類では無いがそこは ASEAN 諸国….でも改めて体格の大きさは football では大きな武器になる事が良く解かってしまったなぁ….
何とか1点を還したい Lions は61分、ボランチの Izzdin Shafiq を下げて 19歳の Gabrie Qual Jun Yi を投入する。フォーメーションをどう変えて来るのかと目を凝らして見るのだが Rovers の攻勢が続きなかなかわからなかったが、どうやら D’Cruz と Jun Yi が2トップとなりMFの Shah が左サイドバックに入り Abdul Rahman が右サイドから左サイドバックに回った。そしてCBの Safuwan Baharudin がボランチに入り右サイドだった Madhu Mohana がナイジェリア人選手の Aikhena とCBを組む様になった。これで少し一方的な展開から脱するだろうかを思ったが両チーム前線へスルーパスを狙い過ぎているみたいで今度はシュートシーンが減ってしまった。

72分 Rovers は最初の交替選手、中国からの帰化人選手 Qiu Li を2得点の Ridhuan に替えて投入する。ベンチに下がった Ridhuan が他の控え選手と次々にハイタッチをしていた。Ridhuan は上背はないがドリブルの速さは魅力的。日本でいえば田中達也タイプか....

      


 Qiu は 2005年に中国からシンガポールに渡って来て2006年には Young Lions と契約。25試合に出場し19ゴールを決め、2008年5月28日のバーレーン戦ではシンガポール代表デビューを果たす。 そして代表では4試合プレーするもシンガポールに移住して5年経っていないという事からワールドカップ予選には出場できなかった。
来年から FIFA の公式戦にも出場できるがまず代表と Qiu が目指すは Asian Cup の出場か? Lions のナイジェリア人選手 Aikhena もそのうち帰化するんだろうなぁ..  これからシンガポールも帰化人選手が増えるだろうなぁ…,そんな事を考えていると約10分後の 83分、 Sutee からのスルーパスを受けた Qiu が相手DF二人をかわして Lions ゴールにシュートをねじ込み試合を決定づけた。 

    

残り時間の約10分間、Rovers はお役目御免と Sutee , そしてGK までもが交代でベンチに下がった。 Lions は選手交代もなく時間が過ぎそのまま Rovers が 3-0 の勝利を収めた。

この敗戦にも Lions の Pathmanathan 監督は肯定的なコメントを残す。

“ 得点に結び付かなかったが選手達はチャンスを創ろうと試みた事が嬉しかった。選手達は簡単にボールを失ってしまっていた。そして Rovers の様にテクニックがありインテリジェンスに富んだチーム相手にこの様な事をすればどういう目に合うかも分かっただろう。”
そして監督は Lions は発展途上の段階にありまたシンガポールサッカー界の発展を担っている事も示唆。
“我々は基礎作りの段階にあり、これからも出来るだけ多くの選手にそれぞれ出来るだけ多くのチャンスを与えるつもりだ。私は基本はそこにあり選手達は発展を見せてくれており結果はすぐに出て来るだろうと信じている。”
翌週、 Lions は先発選手3人を入れ替え、 Sengkang を 3-2 で破り3試合ぶりの勝利を収めた。年末には South Eastern Asian Games がラオスで開催され Lions を中心としたシンガポール U-23 が出場する。今年はこの大会が彼らの最終目標だ。

来シーズン、AFC Champions League に今年 SFACC が出場権を勝ち取った様にまた S League の チームが出場権を勝ち取る事を祈る。そしてそこに日本人選手が居てJリーグのチームと試合が行われる…今年福澤や新井がアントラーズ戦に出場した様に… Rovers も今は2位だがこれから中村が戻って来て戦力が揃うとまだまだ優勝のチャンス、そして AFC Champions League への路も残っている。

来年もし中村、金古といった選手が J のチームと一戦を交えられたら....そういう日が来る事を今から楽しみだ…

ガンバレ !! シンガポールの日本人選手達。