来月10日から始まるFIFA Club World Cup 。今年も日本人選手が参加する。岩本輝雄。かつて我が愛する京都パープルサンガにも所属し、1998年のシーズンには試合に敗れたとは言え国立競技場での浦和レッズ戦でゴールも決めてくれている。(私の記憶が正しければ。) 1993年代表がドーハで散ってから、ファルカンが代表監督になって何度か召集されたものの広島アジア大会で韓国に敗れ、代表監督が加茂周氏に替わってからお声が掛からなくなったのを憶えている。もしこの大会が日本以外で開催されたら昨年のKAZUの様に Auckland FC に岩本輝雄が加入する事があったかはわからない。ただ私が知りたいのは何故彼が必要とされたかだ。その回答を得られそうな貴重な機会に遭遇できた。
11月18日、ニュージーランドで一番の大都市 Auckland 。私を乗せた機体が Auckland に到着した時は雨が降っていた。初めて乗った Air New Zealand は満席にも関わらず快適であった。少なくとも Qantas よりかはサービスも客席のすわり心地も断然良く感じられた。 本当はシンガポール経由のルートを模索していたが何故かさっぱり空席が無く。東京からの直行便を余儀なくされ、その上週末のフライトは満席。金曜日の出発となってしまった。税関を抜け市内までバスに乗り、ホテルにチェックイン出来たのはフライト到着からわずか1時間半後であった。 部屋に入り地元紙に目を通す。目的は欧州遠征中の ALL BLACKS の動向だ。England 相手に歴史的勝利を収めただけでなく France をも連覇し今年の Tri Nations から絶好調。英国 TIMES 紙は早くも 1987年の第一回ワールドカップを制した時とのメンバー比較までしている。地元紙も次の France 戦も期待出来るような内容だ。他の紙面に目を通すと当日 午後3時からAuckland City FC の試合があるとの事。これは思い掛けない行であった。外はまだ雨が降り続いている。しかしここまで来てこの幸運に巡りあえたのだからと自分を納得させつつ外出の身支度を始めた。
ホテルから出てもまだ小雨模様であった。ホテルのある Down Town からタクシーで約20分。試合が行われる Kiwitae Street グランドに到着した。立派なピッチコンディションであったが、観客席はせいぜい100人程度が収容出来るくらいか?それでもゴール裏やタッチライン沿いには熱心な地元のサポーター達が。そして岩本効果?か日本人も多く目に入る。時刻は3時少し前なのに試合が始まる気配が無い。心配になって地元の子供に“何時から始まるの?”と訊ねると“3時半”と教えてもらった。これも雨の影響かな?ピッチに目を移し岩本を探すとすぐに彼を見つけることが出来た。すると遠目に目があった気がしたのか?彼が右手を高く上げた。周りを見回すとそれに応じる日本人も居ないのでもう一度彼を見るとまた右手を挙げてこちらを見ているので、私も右手を顔のところまで上げて振った。本当に私を見てたのかな?やがてストレッチからボールを使った練習そしてシュート練習が始まる。 ゴールのすぐ後ろでその練習を見られるので迫力はすごい。ただ岩本が撃つ番になるとあまり良いクロスが入らない。大丈夫かなここのウィングは?(今はウィングと言わないか?) 岩本はなかなかウィンドブレーカーを脱がないのでこれはベンチスタートかな?と思っているとやはりそのとおりだった。両チームの選手達がロッカールームに消えていく。その間に地元の人達が声を掛けて来る。質問内容は決って TERU こと岩本の事だ。驚いたことに彼が京都サンガでプレーしていたのを知っている地元の人がいた。敷地内の片隅でTシャツなどのグッズを売っている人とも話が弾む。“日本に来ますか?”と訊くと“Off Course “ と応えた。彼に見所の選手を教えてもらう。何しろまったく予備知識がないものだから。New Zealand Football Championship は8チームがホームアンドアウェー総当りでリーグ戦を行い今シーズンはこれまで6試合を終えて Waitakera が1位。 Auckland City は3位でこの日対戦する Team Wellington は4位だ。 上位2チームが来年のオセアニアクラブ選手権に出場出来る。最も力のあった New Zealand Knights が昨年から A League に参加してしまったのでリーグのレベル低下が心配されているらしい。 試合開始の3時半近くになると雨もすっかり上がった。選手のスタメン発表がアナウンスされ、両チームの選手が控え室から出て来た。
この日の対戦相手Wellington は長身190cm の Peter Halsted が1トップで2列目が2人その下に1人と前線にダイヤモンドを形成する。その下にボランチを2人置き、DFラインは4バックだ。Auckland は3バック。その前に左右1人ずつを大きくサイドにおいて2トップの下に3人の2列目を配している。監督が先週降りて今は監督不在でコーチが指揮を取っているらしい。こういう環境の変化は新加入の岩本に悪影響を与えないか心配になる。試合は開始からアウェーの Wellington が優勢に進める。2分には長身の Halsted がゴール前で競って落とした所を Barbarouses がシュートを放つが GK Nicholson がセーブ。Barbarouses はまだ16歳のNew Zeland U-17 の主将。Wellington はトップの Halsted をめがけてこぼれた所を2列目の Barbarouses や Graham Little が詰める。Little はベテラン35歳。167cmと小柄だがドリブルも上手くベテランらしくポジショニングもボールの受け方も1日の長がある。14分にはあわやのミドルシュート、15分にはドリブルからグラウンダーのシュートを逆サイドに放つ。そこにHalsted が走り込むが僅かに合わなかった。Wellington は ボランチ Wilson、Eager の押し上げが早いのでゴール前で数的優位が保てる。Eager は未だ17歳だが既に N.Z. U-20 にも名を連ねており今年はオーストラリア U-20 チームとの試合で勝利した試合にも出場している。来年、カナダで日本と対戦するかな?ラグビーで有名なニュージーランド、サッカーでも1対1の局地戦はあたりがすごい。体のぶつかる音が聞こえてくるが、選手達は何ともなさそうだ。Auckland は相手ゴール前に近づくほどボールが繋がらなくなる。選手間でも約束事云々より兎に角ドリブル突破にチャンスを見出そうとしているが、そこまでテクニックの高い選手は見あたらない。 Wellington が攻撃に転ずれば何か可能性が見られる。Wellington は25分、ゴール正面でFKを得る。5人が壁を形成するが、Patrick の放ったシュートは壁を破ってゴールに。しかしGK Nicholson がセーブをして得点を許さない。 Patrick はかつてのリーグ得点王だ。攻撃では良い所がなかった Auckland であったがこの時間から左サイドバックの Dean Gordon が積極的に上がるようになり左から攻撃の起点が作れる様になった。24歳のGordon はロンドン生まれの24歳。かつて England の U-21 で13試合出場経験がありミドルスブラ、コベントリー等にも在籍し昨シーズンはキプロスの Apoel Nicosia でプレーをした。ようやく28分に Gordon のドリブルからチャンスから Jordan ( 2トップの右 ) がナイスクロスを入れるが中の Great Young には Wellington MF Birch がしっかりとマークに着いておりシュートを撃たせない。Young は南アフリカ国籍の35歳。同国代表歴もありベルギーの Ghent でもプレーしたベテランだ。マークに着いた Birch は27歳のMF。かつては U-17 にも選ばれた。しかしまだ試合は中盤でボールをつなげる Wellington が優位に進める。36分には Birch がミドルを放つが惜しくもバーを越えていく。Auckland はロブを入れる様になるが GK Phil Patterson が落ち着いてケアーする。スタンドのAuckland サポーターからはブーイングが飛ぶが、それを笑顔でかわす。 Patterson は195cmの長身でニュージーランド代表 All Whites のGKだ。今年セビリアとの試合もゴールを守った。だが彼を驚かす事が起こる。 40分競り合いのこぼれ球が Patterson の前に跳ねて来る。そしてそれをわざと取らずにゴールキックとしたつもりが主審はCKの判定。これには Patterson も怒りをあらわにするが判定は変らない。そのCKを Auckland MF Jonathan Smith が頭で落とし、走り込んだ Gordon が Wellington ゴールに蹴り込み Auckland が先制点を挙げた。このゴールに怒りを爆発させた Patterson はボールを拾い上げると大きく前に蹴り出してしまった。よくイエローが出なかったものだ。 こうなると Auckland の動きが俄然良くなる。 ゴール直後、スコットランド国籍のBrayan Little の左からのクロスから Young が放ったシュートはGK Patterson の正面。そして右サイドの Coombes からのクロスはゴールポストを直撃する。 そして前半終了の笛が鳴る。Auckland サポーターの前を控え室に向う Patterson が走り過ぎるが大変なブーイングだ。今度はPatterson も振り向きもしない。 岩本はピッチの中をゆっくりと駆け出した…… つづく
11月18日、ニュージーランドで一番の大都市 Auckland 。私を乗せた機体が Auckland に到着した時は雨が降っていた。初めて乗った Air New Zealand は満席にも関わらず快適であった。少なくとも Qantas よりかはサービスも客席のすわり心地も断然良く感じられた。 本当はシンガポール経由のルートを模索していたが何故かさっぱり空席が無く。東京からの直行便を余儀なくされ、その上週末のフライトは満席。金曜日の出発となってしまった。税関を抜け市内までバスに乗り、ホテルにチェックイン出来たのはフライト到着からわずか1時間半後であった。 部屋に入り地元紙に目を通す。目的は欧州遠征中の ALL BLACKS の動向だ。England 相手に歴史的勝利を収めただけでなく France をも連覇し今年の Tri Nations から絶好調。英国 TIMES 紙は早くも 1987年の第一回ワールドカップを制した時とのメンバー比較までしている。地元紙も次の France 戦も期待出来るような内容だ。他の紙面に目を通すと当日 午後3時からAuckland City FC の試合があるとの事。これは思い掛けない行であった。外はまだ雨が降り続いている。しかしここまで来てこの幸運に巡りあえたのだからと自分を納得させつつ外出の身支度を始めた。
ホテルから出てもまだ小雨模様であった。ホテルのある Down Town からタクシーで約20分。試合が行われる Kiwitae Street グランドに到着した。立派なピッチコンディションであったが、観客席はせいぜい100人程度が収容出来るくらいか?それでもゴール裏やタッチライン沿いには熱心な地元のサポーター達が。そして岩本効果?か日本人も多く目に入る。時刻は3時少し前なのに試合が始まる気配が無い。心配になって地元の子供に“何時から始まるの?”と訊ねると“3時半”と教えてもらった。これも雨の影響かな?ピッチに目を移し岩本を探すとすぐに彼を見つけることが出来た。すると遠目に目があった気がしたのか?彼が右手を高く上げた。周りを見回すとそれに応じる日本人も居ないのでもう一度彼を見るとまた右手を挙げてこちらを見ているので、私も右手を顔のところまで上げて振った。本当に私を見てたのかな?やがてストレッチからボールを使った練習そしてシュート練習が始まる。 ゴールのすぐ後ろでその練習を見られるので迫力はすごい。ただ岩本が撃つ番になるとあまり良いクロスが入らない。大丈夫かなここのウィングは?(今はウィングと言わないか?) 岩本はなかなかウィンドブレーカーを脱がないのでこれはベンチスタートかな?と思っているとやはりそのとおりだった。両チームの選手達がロッカールームに消えていく。その間に地元の人達が声を掛けて来る。質問内容は決って TERU こと岩本の事だ。驚いたことに彼が京都サンガでプレーしていたのを知っている地元の人がいた。敷地内の片隅でTシャツなどのグッズを売っている人とも話が弾む。“日本に来ますか?”と訊くと“Off Course “ と応えた。彼に見所の選手を教えてもらう。何しろまったく予備知識がないものだから。New Zealand Football Championship は8チームがホームアンドアウェー総当りでリーグ戦を行い今シーズンはこれまで6試合を終えて Waitakera が1位。 Auckland City は3位でこの日対戦する Team Wellington は4位だ。 上位2チームが来年のオセアニアクラブ選手権に出場出来る。最も力のあった New Zealand Knights が昨年から A League に参加してしまったのでリーグのレベル低下が心配されているらしい。 試合開始の3時半近くになると雨もすっかり上がった。選手のスタメン発表がアナウンスされ、両チームの選手が控え室から出て来た。
この日の対戦相手Wellington は長身190cm の Peter Halsted が1トップで2列目が2人その下に1人と前線にダイヤモンドを形成する。その下にボランチを2人置き、DFラインは4バックだ。Auckland は3バック。その前に左右1人ずつを大きくサイドにおいて2トップの下に3人の2列目を配している。監督が先週降りて今は監督不在でコーチが指揮を取っているらしい。こういう環境の変化は新加入の岩本に悪影響を与えないか心配になる。試合は開始からアウェーの Wellington が優勢に進める。2分には長身の Halsted がゴール前で競って落とした所を Barbarouses がシュートを放つが GK Nicholson がセーブ。Barbarouses はまだ16歳のNew Zeland U-17 の主将。Wellington はトップの Halsted をめがけてこぼれた所を2列目の Barbarouses や Graham Little が詰める。Little はベテラン35歳。167cmと小柄だがドリブルも上手くベテランらしくポジショニングもボールの受け方も1日の長がある。14分にはあわやのミドルシュート、15分にはドリブルからグラウンダーのシュートを逆サイドに放つ。そこにHalsted が走り込むが僅かに合わなかった。Wellington は ボランチ Wilson、Eager の押し上げが早いのでゴール前で数的優位が保てる。Eager は未だ17歳だが既に N.Z. U-20 にも名を連ねており今年はオーストラリア U-20 チームとの試合で勝利した試合にも出場している。来年、カナダで日本と対戦するかな?ラグビーで有名なニュージーランド、サッカーでも1対1の局地戦はあたりがすごい。体のぶつかる音が聞こえてくるが、選手達は何ともなさそうだ。Auckland は相手ゴール前に近づくほどボールが繋がらなくなる。選手間でも約束事云々より兎に角ドリブル突破にチャンスを見出そうとしているが、そこまでテクニックの高い選手は見あたらない。 Wellington が攻撃に転ずれば何か可能性が見られる。Wellington は25分、ゴール正面でFKを得る。5人が壁を形成するが、Patrick の放ったシュートは壁を破ってゴールに。しかしGK Nicholson がセーブをして得点を許さない。 Patrick はかつてのリーグ得点王だ。攻撃では良い所がなかった Auckland であったがこの時間から左サイドバックの Dean Gordon が積極的に上がるようになり左から攻撃の起点が作れる様になった。24歳のGordon はロンドン生まれの24歳。かつて England の U-21 で13試合出場経験がありミドルスブラ、コベントリー等にも在籍し昨シーズンはキプロスの Apoel Nicosia でプレーをした。ようやく28分に Gordon のドリブルからチャンスから Jordan ( 2トップの右 ) がナイスクロスを入れるが中の Great Young には Wellington MF Birch がしっかりとマークに着いておりシュートを撃たせない。Young は南アフリカ国籍の35歳。同国代表歴もありベルギーの Ghent でもプレーしたベテランだ。マークに着いた Birch は27歳のMF。かつては U-17 にも選ばれた。しかしまだ試合は中盤でボールをつなげる Wellington が優位に進める。36分には Birch がミドルを放つが惜しくもバーを越えていく。Auckland はロブを入れる様になるが GK Phil Patterson が落ち着いてケアーする。スタンドのAuckland サポーターからはブーイングが飛ぶが、それを笑顔でかわす。 Patterson は195cmの長身でニュージーランド代表 All Whites のGKだ。今年セビリアとの試合もゴールを守った。だが彼を驚かす事が起こる。 40分競り合いのこぼれ球が Patterson の前に跳ねて来る。そしてそれをわざと取らずにゴールキックとしたつもりが主審はCKの判定。これには Patterson も怒りをあらわにするが判定は変らない。そのCKを Auckland MF Jonathan Smith が頭で落とし、走り込んだ Gordon が Wellington ゴールに蹴り込み Auckland が先制点を挙げた。このゴールに怒りを爆発させた Patterson はボールを拾い上げると大きく前に蹴り出してしまった。よくイエローが出なかったものだ。 こうなると Auckland の動きが俄然良くなる。 ゴール直後、スコットランド国籍のBrayan Little の左からのクロスから Young が放ったシュートはGK Patterson の正面。そして右サイドの Coombes からのクロスはゴールポストを直撃する。 そして前半終了の笛が鳴る。Auckland サポーターの前を控え室に向う Patterson が走り過ぎるが大変なブーイングだ。今度はPatterson も振り向きもしない。 岩本はピッチの中をゆっくりと駆け出した…… つづく