憧れのミランダービー
欧州というよりも世界屈指の好カード、インテル対ACミランのミランダービーが先週の日曜日2月27日、スタジオジョゼッペメアッツァで行われた。イタリア国内のみならずペイTVの発達した昨今、世界中で視聴料を支払えばこのゲームが生中継で楽しめる。私が初めて生中継を見たのは15年前であった。ミランにはオランダ代表のフリット、ファンバステン、ライカールトが攻撃を形成し一方のインテルはドイツ代表主将のマテウス、ブレーメそしてクリンスマンがいた。そして82年ワールド杯優勝時のアズーリの一員であったジュゼッペ=ベルゴミも名を連ねていた。他にもミランにはバレジ、アルベルティーニらがいた。世界のサッカーを見られる機会が少なかった当時、録画して繰り返し観ていた。以降90年代の半ばまでサビチェビッチ、マッサーロ等の選手が入団しつつもバレジやアルベルティーニ、マルディーニらの選手を中心に構成された独特の戦術を擁し89,90, 年のチャンピオンズカップに続いて94年はチャンピオンズリーグを勝ち取る。93年、95年は決勝で敗れたものの彼ら時代であった。これはひとえに会長職に就いたベルルスコーニ氏の手腕で、サッカーを完全に1つのビジネスに確立させてしまった事に尽きる。後にレアルマドリードがスター選手を揃えて主役の座を奪うが、欧州のカップ戦のフォーマットを替えさせたり世界的に有料放送を発達させたりと現イタリア首相の影響は大きい。一方のインテルは対照的だ。かつてはソーサ、ロナウドやバッジョ(ミランにも在籍したが)らを採ったほど資金はあるのだがチャンピオンズリーグでのタイトルはおろか、セリエAのタイトルすら無縁だ。今シーズンも首位を走るミラン、ユーベントスに勝ち点で10点以上離され4位に甘んじている。残り試合から考えて優勝は難しい。インテリスタ達はライバルに勝って大いに溜飲を下げたいであろう。この日のミラン。シェフチェンコは不在だが若いクレスポは健在だ。南米からは他にも4カ国8名の選手がこの2チームにやってきている。ボスマン裁定のおかげでEU諸国を含めたイタリア以外の欧州国籍の選手は7名、インテルのマルティンの様なアフリカからやって来た選手も。
試合は相変わらずの一進一退。最近のミランダービーがスペクタクルに欠けて見えるのは有り難味が薄れたのか?それともレベルが落ちたのか?目が行くのは私の好きなネスタとベテラン、マルティーニの動き。マルティン、ヴィェリをきちんとケアー。中盤を形成するベロン、スタンコビッチ、エムレらの個人能力は高いが他の選手を生かす動きが出来ない。中田や中村、小笠原が居れば面白いのではと想像が膨らむ。一方のミランは華麗というよりも労働者の様なサッカーだ。だが私はこういうのも好きである。82年ワールド杯のブラジルを見て以来何を見ても華麗さを感じなくなったが。中盤のゼードルフ、ピルロ、ガッツゥーゾ、セルジーニョは攻守にわたりその分厚さを感じさせるのだがミランのツートップ、クレスポとルイコスタは今一ボールに絡めないのはザネッティの出来が良いからであろう。だが、得点は最後までボールを追いかける労働者タイプのミランがこぼれダマをカカが押し込んだ。GKトルドもオフサイドではと手を挙げるが、そこにもカカがいるとは思わなかったのだろう。得点は今ひとつのルイコスタに替えてコスタクルタが投入された後に生まれたが、コスタクルタが控えという選手層の厚さはミランならではだ。インテルも失点後はカンビアッソに替えてアドリアーノを入れるが、ネスタを破れない。3年前のワールド杯の韓国戦での敗戦は審判よりも韓国のスタミナよりもビエリの決定力不足よりもネスタの不在だと私は信じている。 その数ヵ月後のチャンピオンズリーグでのネスタの動きは冴えていた。特にドルトムント戦では自分よりも20cm以上長身のチェコ人ストライカー、ヤン=コレルの頭を技ありの動きで抑えた。年を取ったせいか、最近はDFの選手ばかりに目が行く。結局試合はそのままタイムアップ。ユーベとの並走を続ける貴重な勝利を宿敵から挙げた。今季のセリエAは一時ユーベが独走を続けたが、ここに来てミランが並びこの日の勝利で3位サンプドリアは勝ち点差を13と広げられ完全に3位以下は置いていかれたと言える。5月8日サンシーロで開催予定の直接対決までもつれるかに興味の焦点は絞られるであろう。ミラニスタ達も喜びと安堵の表情だ。かつて欧州を支配していた時代から、一時の低迷期を経験し、勝利の喜びを知ったのだろう。優勝を果たした2002-2003のチャンピオンズリーグの最中に見られたミラニスタ達の雰囲気はそういう思いが伺えた。 早くこういう試合に日本人選手が混ざっているのを見たい。それには技術、実力以外にも他に何かが必要なのかも知れない。何年後になるか?自分自身の姿がそこにあるのはもう想像も不可能だ。息子の姿を当てはめるのは親ばか以外の何者にもならないか?
※今回の掲載写真は、中村俊介の活躍を伝える新聞です。
欧州出張の合間に原稿を書いてきましたが、ようやく帰国が近づきました。この次はまた地元、埼玉より掲載していきたいと思います。それにしても欧州はサッカー情報の宝庫です。
欧州というよりも世界屈指の好カード、インテル対ACミランのミランダービーが先週の日曜日2月27日、スタジオジョゼッペメアッツァで行われた。イタリア国内のみならずペイTVの発達した昨今、世界中で視聴料を支払えばこのゲームが生中継で楽しめる。私が初めて生中継を見たのは15年前であった。ミランにはオランダ代表のフリット、ファンバステン、ライカールトが攻撃を形成し一方のインテルはドイツ代表主将のマテウス、ブレーメそしてクリンスマンがいた。そして82年ワールド杯優勝時のアズーリの一員であったジュゼッペ=ベルゴミも名を連ねていた。他にもミランにはバレジ、アルベルティーニらがいた。世界のサッカーを見られる機会が少なかった当時、録画して繰り返し観ていた。以降90年代の半ばまでサビチェビッチ、マッサーロ等の選手が入団しつつもバレジやアルベルティーニ、マルディーニらの選手を中心に構成された独特の戦術を擁し89,90, 年のチャンピオンズカップに続いて94年はチャンピオンズリーグを勝ち取る。93年、95年は決勝で敗れたものの彼ら時代であった。これはひとえに会長職に就いたベルルスコーニ氏の手腕で、サッカーを完全に1つのビジネスに確立させてしまった事に尽きる。後にレアルマドリードがスター選手を揃えて主役の座を奪うが、欧州のカップ戦のフォーマットを替えさせたり世界的に有料放送を発達させたりと現イタリア首相の影響は大きい。一方のインテルは対照的だ。かつてはソーサ、ロナウドやバッジョ(ミランにも在籍したが)らを採ったほど資金はあるのだがチャンピオンズリーグでのタイトルはおろか、セリエAのタイトルすら無縁だ。今シーズンも首位を走るミラン、ユーベントスに勝ち点で10点以上離され4位に甘んじている。残り試合から考えて優勝は難しい。インテリスタ達はライバルに勝って大いに溜飲を下げたいであろう。この日のミラン。シェフチェンコは不在だが若いクレスポは健在だ。南米からは他にも4カ国8名の選手がこの2チームにやってきている。ボスマン裁定のおかげでEU諸国を含めたイタリア以外の欧州国籍の選手は7名、インテルのマルティンの様なアフリカからやって来た選手も。
試合は相変わらずの一進一退。最近のミランダービーがスペクタクルに欠けて見えるのは有り難味が薄れたのか?それともレベルが落ちたのか?目が行くのは私の好きなネスタとベテラン、マルティーニの動き。マルティン、ヴィェリをきちんとケアー。中盤を形成するベロン、スタンコビッチ、エムレらの個人能力は高いが他の選手を生かす動きが出来ない。中田や中村、小笠原が居れば面白いのではと想像が膨らむ。一方のミランは華麗というよりも労働者の様なサッカーだ。だが私はこういうのも好きである。82年ワールド杯のブラジルを見て以来何を見ても華麗さを感じなくなったが。中盤のゼードルフ、ピルロ、ガッツゥーゾ、セルジーニョは攻守にわたりその分厚さを感じさせるのだがミランのツートップ、クレスポとルイコスタは今一ボールに絡めないのはザネッティの出来が良いからであろう。だが、得点は最後までボールを追いかける労働者タイプのミランがこぼれダマをカカが押し込んだ。GKトルドもオフサイドではと手を挙げるが、そこにもカカがいるとは思わなかったのだろう。得点は今ひとつのルイコスタに替えてコスタクルタが投入された後に生まれたが、コスタクルタが控えという選手層の厚さはミランならではだ。インテルも失点後はカンビアッソに替えてアドリアーノを入れるが、ネスタを破れない。3年前のワールド杯の韓国戦での敗戦は審判よりも韓国のスタミナよりもビエリの決定力不足よりもネスタの不在だと私は信じている。 その数ヵ月後のチャンピオンズリーグでのネスタの動きは冴えていた。特にドルトムント戦では自分よりも20cm以上長身のチェコ人ストライカー、ヤン=コレルの頭を技ありの動きで抑えた。年を取ったせいか、最近はDFの選手ばかりに目が行く。結局試合はそのままタイムアップ。ユーベとの並走を続ける貴重な勝利を宿敵から挙げた。今季のセリエAは一時ユーベが独走を続けたが、ここに来てミランが並びこの日の勝利で3位サンプドリアは勝ち点差を13と広げられ完全に3位以下は置いていかれたと言える。5月8日サンシーロで開催予定の直接対決までもつれるかに興味の焦点は絞られるであろう。ミラニスタ達も喜びと安堵の表情だ。かつて欧州を支配していた時代から、一時の低迷期を経験し、勝利の喜びを知ったのだろう。優勝を果たした2002-2003のチャンピオンズリーグの最中に見られたミラニスタ達の雰囲気はそういう思いが伺えた。 早くこういう試合に日本人選手が混ざっているのを見たい。それには技術、実力以外にも他に何かが必要なのかも知れない。何年後になるか?自分自身の姿がそこにあるのはもう想像も不可能だ。息子の姿を当てはめるのは親ばか以外の何者にもならないか?
※今回の掲載写真は、中村俊介の活躍を伝える新聞です。
欧州出張の合間に原稿を書いてきましたが、ようやく帰国が近づきました。この次はまた地元、埼玉より掲載していきたいと思います。それにしても欧州はサッカー情報の宝庫です。