今回のお気に入りは、「鳥を描き続けた男」です。
国松俊英著「鳥を描き続けた男~鳥類画家 小林重三」を読みました。
大正から昭和にかけて図鑑などに鳥の図版を描き続けた画家小林重三の伝記です。
裏方の仕事ですので、彼の名を知る人はほとんどいないと思います。
本書は随分前に購入しましたが、正直言ってそれほど急いで読みたいと思わなかったので、随分と後回しにしました。
ところがいざ読み始めるととても面白くて、時間を忘れて読みました。
まず本書の内容紹介を引用します。
==========
鳥類画家小林重三(しげかず)―大正、昭和の戦前、戦後と六十年にわたって、ひたすら鳥の絵を描き続けた男。日本の鳥の三大図鑑といわれる、黒田長礼『鳥類原色大図説』、山階芳麿『日本の鳥類と其生態』、清棲幸保『日本鳥類大図鑑』、そのどれにも鳥類画を描き、その絵はいまも鳥を愛する人々を魅きつけてやまない。忘れられた鳥類画家の生涯を掘りおこし、日本の鳥学を築いた人々の情熱を蘇らせる、興趣あふれる伝記。
==========
以前当ブログで、薮内正幸という画家の鳥のスケッチ画集をご紹介しました。
薮内の描く鳥は、ラフスケッチひとつをとっても、神業と言いたくなるほど生き生きしています。
その彼が手本にした画家が今回ご紹介する小林重三です。
「日本の鳥の三大図鑑」すべてに鳥の図版が採用された、という事実も小林重三の確かな実力を物語ります。
これまで「細密でかつ美しい博物画」の鑑賞を続けてきた私にとって、小林は行き当たるべくして行き当たった人物。
「三大図鑑」に収録された図録は「細密でかつ美しい博物画」のひとつの到達点といえるでしょう。
三大図鑑・・・いずれは鑑賞したいと思っていました。
「鳥を描き続けた男」を読んで「三大図鑑」にまつわるエピソードをたっぷり知ることができました。
それぞれの著者(黒田・山階・清棲)の素性、図鑑の内容、完成までの経緯など。
私のような単に博物画を鑑賞したいという者の「三大図鑑のどれか1冊入手したいが、どれを選べば良いかわからない」という疑問に対し、本書は十分な答えを用意していました。
求めるのは小林重三の描いた原色図版が一番多く収録されている図鑑。
その答えは「鳥類原色大図説」でした。
1092種類の鳥の原色図版が掲載されているのだそうです。
早速調べると復刻版全3巻が7千円で販売されていましたので、思い切って注文しました。
「鳥類原色大図説」の誕生秘話を知った上で鑑賞するなんてわれながら良い流れ。到着がとても楽しみです。
最後に「鳥を描き続けた男」を読んで知ったエピソードをひとつ。
本書には、先にあげた三大図鑑の著者たちだけでなく松平頼孝、蜂須賀正氏といった研究者と主人公小林の交流が描かれています。
小林に図版を依頼した彼ら5人=日本の鳥類研究をリードした人々が、揃いも揃って将軍家、大名家、公家などの流れをくむ人々だったことに驚きました。
簡単に紹介すると、
松平頼孝 → 石岡藩藩主松平頼策の子。徳川御三家水戸徳川家の支流の末裔。
蜂須賀正氏 → 旧徳島藩主蜂須賀家当主。秀吉の家臣蜂須賀小六の末裔。母は15代将軍慶喜の娘。
黒田長礼 → 福岡藩藩主の孫。秀吉の軍師黒田官兵衛の末裔。
山階芳麿 → 元皇族。昭和天皇の従兄弟。
清棲幸保 → 信州松代藩藩主真田幸民の子。松代藩初代は真田信之(幸村の兄)。
「野鳥の会」の方ならきっとご存知かもしれませんが、一般には知られていないエピソードだと思います。
そういえば以前「ジョン・グールドの鳥類図鑑」を選んでいたときに、紀宮清子様が編者である「ジョン・グールド鳥類図譜総覧」という本に行き当たったことがありました。
その時は、なぜ皇族が鳥類図鑑に関わっているのか疑問に思いましたが、今回そのとき協力した山階鳥類研究所が皇族の流れを汲んでいることがわかり、ようやく結びつきました。
「日本の鳥の三大図鑑」が、資金を湯水の如く使える立場の人々が純粋な研究のために制作した、まさに贅をつくした図鑑だったことが、このエピソードからもわかります。
国松俊英著「鳥を描き続けた男~鳥類画家 小林重三」を読みました。
大正から昭和にかけて図鑑などに鳥の図版を描き続けた画家小林重三の伝記です。
裏方の仕事ですので、彼の名を知る人はほとんどいないと思います。
本書は随分前に購入しましたが、正直言ってそれほど急いで読みたいと思わなかったので、随分と後回しにしました。
ところがいざ読み始めるととても面白くて、時間を忘れて読みました。
まず本書の内容紹介を引用します。
==========
鳥類画家小林重三(しげかず)―大正、昭和の戦前、戦後と六十年にわたって、ひたすら鳥の絵を描き続けた男。日本の鳥の三大図鑑といわれる、黒田長礼『鳥類原色大図説』、山階芳麿『日本の鳥類と其生態』、清棲幸保『日本鳥類大図鑑』、そのどれにも鳥類画を描き、その絵はいまも鳥を愛する人々を魅きつけてやまない。忘れられた鳥類画家の生涯を掘りおこし、日本の鳥学を築いた人々の情熱を蘇らせる、興趣あふれる伝記。
==========
以前当ブログで、薮内正幸という画家の鳥のスケッチ画集をご紹介しました。
薮内の描く鳥は、ラフスケッチひとつをとっても、神業と言いたくなるほど生き生きしています。
その彼が手本にした画家が今回ご紹介する小林重三です。
「日本の鳥の三大図鑑」すべてに鳥の図版が採用された、という事実も小林重三の確かな実力を物語ります。
これまで「細密でかつ美しい博物画」の鑑賞を続けてきた私にとって、小林は行き当たるべくして行き当たった人物。
「三大図鑑」に収録された図録は「細密でかつ美しい博物画」のひとつの到達点といえるでしょう。
三大図鑑・・・いずれは鑑賞したいと思っていました。
「鳥を描き続けた男」を読んで「三大図鑑」にまつわるエピソードをたっぷり知ることができました。
それぞれの著者(黒田・山階・清棲)の素性、図鑑の内容、完成までの経緯など。
私のような単に博物画を鑑賞したいという者の「三大図鑑のどれか1冊入手したいが、どれを選べば良いかわからない」という疑問に対し、本書は十分な答えを用意していました。
求めるのは小林重三の描いた原色図版が一番多く収録されている図鑑。
その答えは「鳥類原色大図説」でした。
1092種類の鳥の原色図版が掲載されているのだそうです。
早速調べると復刻版全3巻が7千円で販売されていましたので、思い切って注文しました。
「鳥類原色大図説」の誕生秘話を知った上で鑑賞するなんてわれながら良い流れ。到着がとても楽しみです。
最後に「鳥を描き続けた男」を読んで知ったエピソードをひとつ。
本書には、先にあげた三大図鑑の著者たちだけでなく松平頼孝、蜂須賀正氏といった研究者と主人公小林の交流が描かれています。
小林に図版を依頼した彼ら5人=日本の鳥類研究をリードした人々が、揃いも揃って将軍家、大名家、公家などの流れをくむ人々だったことに驚きました。
簡単に紹介すると、
松平頼孝 → 石岡藩藩主松平頼策の子。徳川御三家水戸徳川家の支流の末裔。
蜂須賀正氏 → 旧徳島藩主蜂須賀家当主。秀吉の家臣蜂須賀小六の末裔。母は15代将軍慶喜の娘。
黒田長礼 → 福岡藩藩主の孫。秀吉の軍師黒田官兵衛の末裔。
山階芳麿 → 元皇族。昭和天皇の従兄弟。
清棲幸保 → 信州松代藩藩主真田幸民の子。松代藩初代は真田信之(幸村の兄)。
「野鳥の会」の方ならきっとご存知かもしれませんが、一般には知られていないエピソードだと思います。
そういえば以前「ジョン・グールドの鳥類図鑑」を選んでいたときに、紀宮清子様が編者である「ジョン・グールド鳥類図譜総覧」という本に行き当たったことがありました。
その時は、なぜ皇族が鳥類図鑑に関わっているのか疑問に思いましたが、今回そのとき協力した山階鳥類研究所が皇族の流れを汲んでいることがわかり、ようやく結びつきました。
「日本の鳥の三大図鑑」が、資金を湯水の如く使える立場の人々が純粋な研究のために制作した、まさに贅をつくした図鑑だったことが、このエピソードからもわかります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます