元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「レミーのおいしいレストラン」

2007-08-04 06:55:49 | 映画の感想(ら行)

 (原題:Ratatouille )CGアニメーションの信頼のブランド“ピクサー”の新作ということで期待したが、これはどうも愉快になれない。何より、いくらレミー(声:パットン・オズワルト)の造型が巧みだといっても、しょせん彼はドブネズミではないか。ドブネズミが作った料理なんて、どんなに美味しそうに見えてもノーサンキューだ。

 しかも、レミーがどうして天才的な料理人としての技量を身につけたのか、なぜ人間の言葉が分かるのか、納得できる説明はない。単に“生まれつきそうだから”とか“有名シェフのガイド本を読んでいたから”とかいった御都合主義的な前提だけで押し切っている。

 レミーの“相棒”になるコック見習いのリングイニ(声:ルー・ロマノ)に至っては実力のカケラもなく、ただ“職にありつきたいから”といった下世話な動機で厨房に入り込み、でも“少しは料理もやってみたい”という手前勝手で身の程知らずな願望だけは持っているという、どうしようもない奴だ。実は彼は先代の名シェフの息子(隠し子)である事実が中盤で発覚するのだが、少しは技能を父親から受け継いでいる・・・・わけでは全くなく、ただの見栄っ張りな無能者である。何しろレミーがいなければ料理の仕込みさえ出来ない始末。先輩の女スタッフのコレット(声:ジャニーン・ガロファロ)がどうしてこんなのに惚れるのか、さっぱり分からない。とにかく、感情移入できないタイプだ。

 今回の敵役は店を乗っ取ろうとする意地悪なシェフと毒舌料理評論家だが、どちらもあまり愛嬌がない。でも、少なくともリングイニ達よりは行動パターンに筋が通っていて納得できるキャラクターなのだから、この主人公側の影の薄さには困ったものだ。

 技巧的には“さすが”と言うしかない。レミーをはじめとするネズミの描写は精細を極め、料理のヴィジュアル化はヘタな実写映画も顔負けだ。ネズミの視点からのスピード感のあるカメラワークも見事。ただしそれら映像面のクォリティの高さは単に“個的に存在している”といった具合で、物語世界の構築の礎にはなっていない。逆に言えば、映像技巧の喚起力が大風呂敷を広げる際の助力にあまりなっていないような、その程度の題材である。このへんが「Mr.インクレディブル」や「カーズ」に比べて大きく見劣りがする理由だろう。なお、マイケル・ジアッキノのジャジーな音楽は聴き応えがある。

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