元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ブラッド・イン ブラッド・アウト」

2013-04-27 06:22:27 | 映画の感想(は行)
 (原題:Blood in Blood out)93年作品。メキシカン・マフィアの生態を、ロスアンジェルス東部地区で生まれ育った3人の少年たちの成長を通して描く。

 72年のロスアンジェルス。メキシコ系アメリカ人で、血の気が多いパコ(ベンジャミン・ブラット)、絵の才能があるクルズ(ジェス・ボレッゴ)、白人とのハーフであるミクロ(ダミアン・チャパ)。ミクロはクルズたちと敵対する不良グループのボスを殺して投獄される。クルズは麻薬中毒になって自堕落な生活を送るようになり、パコは警官となってカタギの道を歩む。

 ミクロは獄中で早くも悪の才能を発揮。メキシコ系ギャング団を牛耳った彼は、黒人たちと手を組んで刑務所内の白人グループを皆殺し。そのあと黒人グループも潰す。さらには刑務所の外にも勢力を延ばし、一大組織を作る。



 メキシカン・マフィアを描いた映画としては、以前紹介したエドワード・ジェイムズ・オルモス監督の「アメリカン・ミー」が強烈に印象に残っているが、この映画は実によく似ている。主人公3人の友情がらみで描いていることを除いては、ほとんど同じ設定といってよい。

 しかし、同じラテン系のオルモス監督の切迫感に比べ、メガホンを取っているのが「愛と青春の旅立ち」(82年)や「ホワイトナイツ/白夜」(85年)などのテイラー・ハックフォード監督、しかもいくらメキシカンに関心を持っているとしても、しょせんはハリウッドにどっぷり浸かった白人、出来映えはかなりの差がある。

 3時間という上映時間の中には、程度を知らない暴力描写が満載である。しかし、何となく描写が平板なのだ。暴力場面を並べても単なる“見せ物”にしか感じない。娯楽映画の“添え物”以上の効果が上がらない。これではいけないとアセったのか、ミクロと刑務所の外の2人の生き方を対比させ、アメリカ社会の問題点をえぐり出す作戦に切り替えようとするが、ラテン系俳優の動かし方がキマらないこともあって、焦点が定まらないまま映画は終わりに近づいていく。

 そしてこの映画は明確な結末を着けないまま、尻切れトンボのままENDマークを迎える。クルズのバタバタした一人芝居で何とかラストに持って行こうとする様子は、はっきり言ってみっともない。結果として大味で凡庸な作品でしかなく、監督の勝手な思い入れだけが空回りしている。「ラ・バンバ」のように、ハックフォードは製作に専念し、演出を本場の精鋭に任せた方がよかった。

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