元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「フロム・ダスク・ティル・ドーン」

2009-10-06 06:25:23 | 映画の感想(は行)
 (原題:From Dusk till Dawn )96年作品。危険な極悪犯罪者コンビ、セス(ジョージ・クルーニー)とリチャード(クエンティン・タランティーノ)の兄弟は脱獄から銀行強盗を経て、人質を取ってのメキシコへの高飛びをたくらむが、荒野の真ん中で立ち寄ったキャバレーがなんと吸血鬼の巣。人質の親子(ハーヴェイ・カイテル、ジュリエット・ルイス)も巻き込んでの血を血で洗う大激闘が始まる。ロバート・ロドリゲスがタラン氏の脚本を映画化。公開当時は全米第一位を記録した話題作だ。

 とにかく仰天したのが、タラン氏得意のクライム・アクションの前半と、「ブレインデッド」の姉妹編みたいな後半に何の脈絡もないことだ。上映時間109分のうち、丁度半分ずつこのパートに分かれている。前半はかなり陰惨な話だ。タラン氏自身は残念ながら役に合っているとは思わないが(役者稼業は脇役にとどめてほしい)、相手に言いがかりをつけて殺すシーンや、人質のオバさんを惨殺する場面は異常さたっぷり。兄に対する屈折した愛情もうかがえ、「ナチュラル・ボーン・キラーズ」の中身のない殺人カップルとは違うところを見せる。

 殺しの血の描写や妻を亡くして神を信じなくなったカイテル扮する元牧師などが後半の吸血鬼ネタの伏線となっているとも言えなくもないのだが、このまま犯罪ロードムービー路線で行ってもおかしくない。しかし、なぜか後半はスラップスティックに展開し別の映画になってしまう。こんな風に続く必然性は何もないし、通常のドラマツルギーを完全に無視している。

 では焦点の定まらない失敗作かというと、これがけっこう面白いのである。“偶然性によるドラマの解体”などの面倒くさい映像論を持ち出す人もいるだろうが、これは単純に“前半のままじゃ暗いから後半はおちゃらけてしまった”という作者の気分の問題でしかない。このいいかげんさがタラン氏とロドリゲスのコンビでは許されてしまったと・・・特にロドリゲスの「エル・マリアッチ」の八方破れさに追随しているのは「デスペラード」ではなく、こっちの方であった。

 後半のいかがわしいキャバレーの様子から血みどろバトル・シーンにいたるジェットコースター的展開は、観ていてムチャクチャ楽しい。効果的なギャグの挿入やアクションの呼吸の妙、意外性に富んだ立ち回り、スプラッタ度も満点で、まさに爆笑の連続。犯罪者コンビを描くはずが、終わってみれば目立っていたのはジュリエット・ルイスで、この一貫性のなさも“いいじゃん、面白ければ”の軽いノリで納得させてしまうのが、作者の“勢い”ってやつだろう(^^)。

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