元・副会長のCinema Days

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「から騒ぎ」

2013-03-23 07:37:05 | 映画の感想(か行)

 (原題:Much Ado About Nothing)93年作品。当時は才気煥発だったケネス・ブラナーが、デビュー作の「ヘンリー五世」(89年)に続いて再びシェイクスピアの戯曲に挑んだシャシンで、間違いなく彼の代表作の一つである。

 イタリア、トスカーナ地方。領主のドン・ペドロが部下のクラウディオとベネディック(ブラナー)、腹違いの弟ドン・ジョンを引き連れてレオナート家にやってくる。クラウディオとレオナートの娘ヒーローは恋仲であり、とんとん拍子で結婚が決まるが、ヒーローの従姉のベアトリスはベネディックとケンカばかり。しかし二人は内心互いに好意を持っていた。

 ところが、ペドロとベネディックに反感を持つドン・ジョンは、スキャンダルをでっちあげて、クラウディオたちの結婚式をつぶそうとする。果たして無事に二人はゴールインできるのか。

 冒頭のドン・ペドロの一隊が到着する場面から、そのダイナミックな俳優の動かし方、音楽の盛り上げ方、大胆なカメラワークなどで、イッキに映画の中に引き込まれてしまう。とにかく演出力がすさまじい。キャラクター設定やセリフは間違いなくシェイクスピアだが、見事に映画として、スクリーンの中でドラマを躍動させている。

 「ヘンリー五世」では、シリアスなセリフ回しだけで観客を感動させたブラナーだが、今回はコメディということで、チャップリンばりの大コミカル演技で爆笑の渦。ここまでやる人だとは思っていなかった(^_^;)。ドン・ペドロに扮するのがデンゼル・ワシントン。弟のドン・ジョンにはキアヌ・リーブス(どうして兄が黒人で弟が白人なのかと文句は言いっこなし)。ベアトリスはもちろんエマ・トンプソン(今回はあまりクサくなかった。いい演技だった)。さらに自警団長ドグベリー役としてマイケル・キートンまで出てきて、これが「ビートルジュース」を上回る変態ぶりで大いに笑わせてくれる。

 クラウディオには「いまを生きる」のロバート・ショーン・レナードで、ヒーローに扮しているのが当時は初々しさのあったケイト・ベッキンセールだ。まさにオールスター・キャストだが、これだけ個性の強い面々を自由自在に動かして、映画にしか表現できないシェイクスピア劇を構築するこの頃のブラナーの才能は恐るべきものがあった。

 ギャグの洪水で楽しませ、中盤はハラハラドキドキ、当然最後はハッピーエンドで感動させてしまう、娯楽映画のお手本のような作品。実際にトスカーナ地方でロケされた、イタリアらしい鮮やかな映像に目がくらむ。パトリック・ドイルの音楽も素晴らしい。

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