元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「愛はさだめ、さだめは死」

2008-03-30 21:35:47 | 読書感想文
 ヒューゴー賞やネビュラ賞の受賞作を含めたSF短編集。まず驚くべきはその文体だ。

 翻訳本でも十分伝わるブッ飛んだサイバーパンクな語り口は、読んでいて目眩を起こしてしまう。題材も異星生物の奇態なライフサイクルを独自の視点で描いた表題作をはじめ、多岐にわたっており飽きさせない。

 圧巻はコンピューターで他人の肉体とつながれた女の悲惨な運命を描いた「接続された女」で、壮絶な描写の連続とシニカルな結末は忘れがたい。

 彼女の小説自体はSFファンの間ではポピュラーであるが、同じSFといってもフィリップ・K・ディックなどの諸作とは違って映像化は至難の業だと思われる。もしもチャレンジする作家がいたら敬意を払いたい。

 なお、作者は名前こそ男性だが実は女性である。しかも波瀾万丈の人生を送り、悲劇的な最期も遂げている。そのへんを考え合わせると感慨深い。まさに異形の作品と言える。

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