元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「レッド・イーグル」

2011-09-25 06:48:03 | 映画の感想(ら行)

 (英題:The Red Eagle )アジアフォーカス福岡国際映画祭2011出品作品。随分と荒っぽい作劇で、しかも2時間以上も引っ張った末にラストでは“つづく”の文字がスクリーン上にデカデカと表示されるのだから、まさに開いた口がふさがらない(爆)。いくら本国では娯楽大作で通っているといっても、こっちはたまたま映画祭で接しただけであり、続編が観られるかどうかはまったく分からないのである(笑)。

 近未来のバンコク。政治は腐敗し、実質的に国を動かしているのはマフィアと軍産複合体だけといった絶望的な状況の中、謎のヒーロー“レッド・イーグル”は次々と悪者どもを処刑していく。業を煮やした組織側は、冷酷非情の殺し屋“ブラック・デビル”を雇って、レッド・イーグルを消そうとする。

 とにかくこのレッド・イーグルの“仕事ぶり”というのが程度を知らないほど残虐で、正義の味方とも思えない。肝心のアクションシーンは頑張ってはいるのだが、ワイヤーやCGを多用しているところが丸わかりで、同じタイ製活劇でも身体を張った立ち回りに徹して観る者を驚愕させた「マッハ!」や「チョコレート・ファイター」などにはとても及ばない。ウイシット・サーサナティアンの演出は大雑把で、シークエンスの繋ぎ方が雑だし、筋書きに辻褄の合わないところが散見されて脱力する。

 それでも何とか観ていられたのは、ヒーロー物が違和感なく成立する条件というものを提示してくれたからだ。超能力を持たない普通の人間がマスクを被っただけのヒーローが実社会に現れて“実力行使”に踏み切れば、それは単なる犯罪にしかならない。そのあたりを逆手に取った「キック・アス」という快作もあるのだが、本作はヒーローがやらかす“犯罪”を上回る“犯罪”状態を実社会の側に置くことによって、ヒーローの所業を相殺してしまおうという手口を採用している。

 つまりはヒーローがテロ活動を行う前に、公共性を担うべき政府が国民に対してテロを仕掛けているという構図を作っているのだ。そしてネタとして扱われているのが原発問題であり、リベラル派として当選した(前原誠司にチョイ似の)首相が、政権の座に就いた後はあっさりとマニフェストを反故にするあたりは、最近の日本の状況に通じるようで興味深い。

 主演のアナンダ・エヴァリンハム(写真参照)はルックスと身体のキレはまあまあだが、演技面では大根だ。刑事役のワナシン・プラスータクンの方が芸達者に思える。なお、ヒロイン役のヤリンダー・ブンナークはイマイチ魅力がない。他に適当な人材がいなかったのだろうか。
コメント
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