元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ペイ・フォワード 可能の王国」

2010-05-11 06:33:47 | 映画の感想(は行)
 (原題:Pay It Forward)2000年作品。自分の手で世界を変える方法として“ペイ・フォワード計画”なるものを思い付いた少年と、周囲の人間模様を描くミミ・レダー監督作。公開当時はヒドイとかツマランとかいう評を聞いていたが、そこそこ良い映画だと思う。ラスト近くのあざとい展開も“どうせハリウッド映画”と割り切ればあまり腹も立たない(ここを“淡々としたタッチ”で終わってしまうと商売にならないのかもしれんね)。

 この“ペイ・フォワード計画”というのは、1人の人間が3人の人間に親切に振る舞い、さらにそれぞれ親切を受けた者が3人に親切をしていくというものだ。いわばネズミ講みたいな善意の押しつけシステムであるが(爆)、それを手放しで賞賛するような脳天気な展開とせず、主人公の微妙な屈託を通して“世の中、そうウマく行ってたまるかい”という作者の冷静さが垣間見える中盤までの持っていき方に納得した。

 舞台を“沙漠の中の人工都市”であるラスベガスに設定したのもテーマと呼応して効果的だ。少年役のハーレイ・ジョエル・オスメントはちょっと小芝居が気になって愉快になれないが、母親役のヘレン・ハントと教師に扮するケヴィン・スペイシーがドラマを引き締めている。

 それにしても、この映画を観て“よしっ、自分も何か人に親切にしよう”と本気で思った人は幸せである。たとえ映画理論なんて知らなくても、小賢しいウンチクを並べる評論家より、はるかに映画を楽しんだのかもしれない。
コメント
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