元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「武士道シックスティーン」

2010-05-16 06:59:50 | 映画の感想(は行)

 大して面白くもない。青春映画の名手である古厩智之監督の作品の中でも、出来映えは下から数えた方が早いだろう。敗因はズバリ、剣道を題材に選んだ点にある。剣道は中学・高校の武道の時間にも取り入れられているから、経験した者は多い。少なくとも、硬式野球やテニス等よりも一般ピープルにとって身近な存在であったはずだ。

 しかし、競技としての剣道はマイナースポーツでしかない。名の知られた大会でも、見に行くのは出場者の身内ばかり。この“見るスポーツとして映えない”という事実は、映像化する際の大きなハードルになる。つまり、どうやれば盛り上がるのか、どう撮ればカッコ良く見えるのか、それらを把握するのが困難だということだ。

 いくら剣道の熟達者からすれば素晴らしい技だろうと、それを一般ピープルが見て感心しなければ何もならない。だから映画の作り手は、剣道の技の見せ方を観客のレベルに引き寄せるために、工夫に工夫を重ねなければならなかったのだ。ところが本作は撮影のスケジュールやら何やらで、そこまで練り上げる時間がないままクランクインしてしまったような印象を受ける。これがもしも他のポピュラーなスポーツならば、製作条件は随分とラクになっただろう。

 さて、かつては剣道の中学チャンピオンで武道一筋に生きてきた女生徒と、大会で彼女を“何かのはずみ”で破ってしまったチャランポランな女生徒とが同じ高校に進み、互いに切磋琢磨(?)するという筋書きの本作、演じている成海璃子と北乃きいの実力と存在感もあって、何とか映画が破綻しないだけのレベルには踏み止まっている。

 しかし、前述のように剣道という扱いにくいネタを採用したためか、二人にとって何がどう“成長”したのかほとんど分からない。端的に言えば、冒頭近くの主人公達の力量と、ラスト付近でのパフォーマンスとが、あまり変わらないのだ。

 これではヤバイと思ったのか、説明的なシーンとセリフを山のように挿入するハメになり、結果として上映時間が無駄に長くなった。当然のことながらドラマに締まりが無くなり、冗長な印象しか受けない。これではダメだ。舞台が首都圏の何の変哲もない街に設定されているのも不満で、内容の薄さをカバーするためにもローカル色の強い地域にロケを敢行すべきだったと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする