元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」

2008-09-09 06:36:28 | 映画の感想(は行)

 (原題:HOT FUZZ)なかなか楽しめた。コメディ映画というのはどこの国で作られようと、地元の者の“笑いのツボ”に合った展開になり、ヨソの国の住民にはピンと来ないネタが多くなるのは仕方がない。特に英国製は独特の皮肉とテンポの緩さで、クスクス笑えるけど大爆笑には至らない例が目立っていた。しかしこの映画は違う。

 ブラック仕立てのスラップスティックで、個々の(残虐)描写はB級映画慣れしていない観客は“引いて”しまう部分があるにせよ、誰が見てもその面白さが分かるように出来ている。しかも、全体の雰囲気としてはキッチリとイギリス映画のテイストを醸し出しているのが素晴らしい。

 ロンドンで検挙率アップに貢献している優秀な警官ニコラス(サイモン・ペッグ)は、あまりの有能さに周囲から疎まれ、ド田舎に左遷されてしまう。まず彼に異動を告げる上司の様子から笑わせてくれる。直属係長・課長・署長と3段階でまったく同じ前振りを使用し、それに対する主人公のリアクションをさんざん弄った後、部署全員での“左遷バンザイ歓送会”へと雪崩れ込む呼吸の巧みさに笑いながらも感心。

 くだんの田舎町の、事件なんてまるで起こらない(ということになっている)弛緩ぶりに田舎者をコケにした皮肉ネタを強調させるかと思えば、突然勃発する連続殺人の凄惨さでそれまでの微温的展開とのギャップにより観客を驚かせ、あとは一気呵成にノンストップのギャグ・アクションに突入してゆく、その変幻自在の作劇には退屈さを感じるヒマがない。

 お気楽な同僚のダニー(ニック・フロスト)は署長の息子で、ハリウッド製ポリス・アクション映画マニアだという設定も功を奏しており、そこかしこに「ダーティハリー」だの「リーサル・ウェポン」だの「バッド・ボーイズ」だのといった作品からの効果的な引用が散りばめられていて、映画好きならば思わずニヤリである。殺人事件の裏側にあるサイコ的な様相にしても「悪魔のいけにえ」をはじめとするアメリカ産ホラー映画の定番である“田舎だと思ってナメていたらヒドい目に遭った”というパターンの焼き直しであろう。

 ただし、クライマックスの主人公達のハチャメチャな大暴れにしても、ハリウッド製活劇ならば躊躇なく犯人をブチ殺しているところだが、普段は拳銃さえ携行しないという英国警察の“節度”をちゃんと守ったような段取りになっているのにも感服した。ラストのオチも含めて、さすが本国で大評判になったシャシンだと納得できるような出来映えである。監督エドガー・ライトの出世作「ショーン・オブ・ザ・デッド」も観たくなってきた。
コメント
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