元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ペネロピ」

2008-04-06 06:57:15 | 映画の感想(は行)

 (原題:Penelope)主演女優クリスティーナ・リッチに尽きる。先祖が魔女にかけられた呪いのせいで、生まれた時から豚のような鼻を持っている良家の子女に扮しているが、鼻が豚でも可愛いのは(絶妙のメイクアップもさることながら)彼女の役柄のキャラクター造りによるところが大きい。

 前の「ブラック・スネーク・モーン」でのアバズレ女から打って変わり、どう転んでも育ちの良いお嬢さんにしか見えないのが凄い。特に印象的なのは抑揚のしっかりした喋り方で、言葉遣いもキレイだし、何より絶対に耳障りにならない声が良い。さらにジル・テイラーによる衣装が素晴らしく、一見ゴスロリ風なのだがまったく下品にならず実にシック。ヒロイン像を完璧にバックアップしていた。

 さて、最後まで何とか観ていられたのはリッチのおかげであり、映画のストーリーそのものは“他愛がない”を通り越して“幼稚”と言うしかない。彼女にかけられた呪いが解けるのは、上流階級の男と結ばれたときである・・・・と魔女は言うのだが、実はそうでもなかったのには目が点になった。

 確かにそれは可哀想なだけのヒロイン像を忌避して何やら“能動的な女性”のスタイルを持ち上げようという、作者のある意味フェミニズム的なスタンスからきているのだと思うが、それについての暗示も明示もないのには恐れ入った。

 マーク・パランスキーの演出は冗長に過ぎ、メリハリがないくせに、ちっとも笑えないギャグ(らしきもの)をパッチワークのように芸もなく貼り付けるのみで、そう長くはない上映時間が大層長く感じられてしまう。相手役のジェームズ・マカボイや母親役のキャサリン・オハラのヘンにわざとらしい大仰な演技も願い下げだ。あまり好きではないリース・ウィザースプーンがマトモに見えてしまうほど、本作の脇のキャストの動かし方はなっていない。

 ヒロインの部屋のインテリア等、カラフルな大道具・小道具の設定にはキュートな味わいは事欠かないので、そのへんに興味のある観客は面白く感じられるかもしれない。
コメント
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