元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「うた魂(たま)♪」

2008-04-10 06:59:07 | 映画の感想(あ行)

 あまり面白くはない。実績のある女子高生合唱部とヤンキー学校合唱部との対決をコメディタッチで描き、ちょうど「スウィングガールズ」のようなスポ根じみた音楽映画を撮りあげようとしたみたいだが、見事にハズしている。その理由は明白で、この手のドラマの王道である“不器用な奴らが切磋琢磨して最後には大舞台で活躍する”という図式がまるで上手くいっていないからだ。

 「スウィングガールズ」などはまったくの門外漢が畑違いの分野にのめり込み、奮闘努力の甲斐あって最後には成果をあげるが、当然その“上達度”は目覚ましいものがあり、それが観客の共感を呼ぶのだ。対して本作は、ヒロインが所属する合唱部は全国大会の常連であり、最初から“レベルが高い”という設定だ。元々スキルのある連中なので、いくら努力しても素人目から見た“上達度”はそれほどでもない・・・・ということになる。だからクライマックスが盛り上がらない。

 しかも致命的なことに、合唱の名門校であるはずなのに彼女たちのパフォーマンスはそれほど上手いとは思えないのだ。鍛練を積んで臨んだはずの大会でも、映画の最初とほとんど変わらないペースで推移する。この程度で聴衆に“あまり上手すぎて突っ込めない”なんてセリフを吐かせないでほしい。

 さらに、大会の自由曲が単なる流行歌。それも合唱の技巧を披露するだけのアレンジもされておらず平板に歌われるのみ。これで入賞しようと考えること自体がおこがましい。もっとも、審査委員がその曲を歌っているゴスペラーズの面々なんだから(爆)、出来レースと思われてもしょうがないだろう。

 ライバルとなるヤンキー合唱隊も見かけはゴツいが万人を唸らせるソウルを持っている・・・・というのは劇中ではセリフで説明されるのみ。聴いた感じはワーワー叫んでいるだけのハッタリ集団だ。いくら演じているのが合唱の経験のない俳優達とはいえ、もっとそれらしく誰にでも“上手い”と思わせるような演技指導ぐらいしてほしい。ハッキリ言ってしまえば、歌の部分は吹き替えでも良かった。演出が巧みならばそれぐらいは目をつぶってやろう。

 それでも、自分の容姿と歌唱力に陶酔する夜郎自大な主人公を嫌味なく演じる夏帆の存在感は無視できない。天然ナチュラルピュアの魅力で、お笑い演技も難なくこなすこの若手女優の将来は明るいと改めて思う。しかし、トレーニングを重ねたはずの彼女さえ、名門合唱部のリードヴォーカルはとても任せられないほど歌が下手なのだ。他のメンバーの歌唱力も万全ではない。唯一光っていたのが顧問教師役の薬師丸ひろ子で、さすが“昔取った杵柄”よろしくさすがの歌声を聴かせるが、それだけでは物足りないのは言うまでもない。

 田中誠の演出はテンポが悪く、ギャグも外しっぱなしだ。だいたいこのネタで120分は長い。あと20分は削ってタイトな作りにして欲しかった。それにしても、舞台が北海道であるはずなのに主な撮影場所は関東地方というのは、どうも納得できない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする