元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「第5回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その2)

2008-04-17 06:43:11 | プア・オーディオへの招待

 オーディオシステムの音の方向性を決定するのはスピーカーなので、今回のイベントでも主な興味の対象はスピーカーだった。嬉しかったのは、米国JBL社の往年の名器である「Paragon」の音を聴けたことだ。今まで写真でしか見たことがなかったのだが、実物に接するとその存在感にビックリ。そして音を出してみると二度ビックリである。音色は明るく闊達な“お馴染みのJBLサウンド”なのだが、表情が豊かで思わず引き込まれてしまう。もちろん、試聴機は40数年前に作られた製品だけあってレンジは狭く解像度も低い。鳴らせるジャンルも古いジャズ限定みたいなところがある。しかし、聴かせどころというか、ツボというか、そういうのを設計者が完全に熟知したような音造りには感心するしかない。ユニークな外見も相まって、電気製品というより楽器のような印象を受ける。楽しい音を出すことにかけては、同社の現行のハイエンドモデル「EVEREST」より上だろう。

 初めて聴いたブランドとしては、ドイツのQUADRALが印象に残った。上級機種の「TITAN VII」はその怪異な容貌とは裏腹に、実に聴きやすい音を出す。音像に滲みや歪みといったものが全く感じられず、解像度も特上クラスだ。音場のゆったりとした展開も魅力的。オーストリアのBosendorfer社はピアノのメーカーでもあるらしく、ピアノの響板の原理を応用した独自のエンクロージャー構造を採用している。そのせいか、外見は実に薄手に仕上げていながら、音は朗々とした恰幅の良いものだ。しかも嫌味が無く音場も深い。キレの良さも兼ね備えていて、オールジャンルこなせそうだ。

 フランスのFOCAL_JMlabは随分前からオーディオファンの間で名を知られていたスピーカーのブランドだが、私はその上級機種のサウンドに接するのは初めてだった。これはもう絵に描いたような美音調で、ヴォーカルや弦楽器の艶と色気は捨てがたい魅力だ。ただし、駆動するアンプやプレーヤーには色付けの少ないものが求められよう。イスラエルのYG ACOUSTICS社のスピーカーは奇態なルックスながら何を聴いてもスムーズで余裕が感じられる。特にエンクロージャーの構造からか、上下方向の音場の再現性には目覚ましいものがある。

 あと、他にも多くの海外ブランドに接してみたが、当然の事ながらそれぞれに個性がある。サウンド面でのアプローチはそれぞれ違うが、とにかく音楽を楽しく聴かせようと腐心していることはどのメーカーも一緒だ。しかし、これが国内メーカーだと様子が違ってくる。PIONEERとSONYの最上位スピーカーも展示・デモされていたが、価格だけなら海外のハイエンド機と比べてひけは取らないものの、出てくる音がまったく面白味がない。確かに物理特性は凄いと感じる。解像度も分解能も、そしてレンジの広さもかなりのものだ。しかし、聴いていて楽しくない。

 有り体に言ってしまえば、国産スピーカーは音が暗いのだ。

 海外製スピーカーはメーカーによってキャラクターが異なるものの、ほとんどのブランドに共通して言えることは、音が明るいということ。設計者のポリシーの違いというより、国民性かもしれない。日本のメーカー(一部のガレージメーカーを除く)の開発姿勢は音楽の楽しさを伝えようというより、微分的に欠点を潰していくことを第一義的に考えられているようだ。これは個人的極論だが、日本の大手メーカーはピュア・オーディオ用のスピーカーを開発する必要はないんじゃないか。そもそも設計者が音楽好きではないと思われるので、何をやっても無駄だろう。

(この項つづく)
コメント (2)
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