元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「愛の奴隷」

2008-01-20 18:26:52 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Of Love and Shadows )94年作品。軍事政権下のチリ。富豪の娘イレーネ(ジェニファー・コネリー)は軍人と婚約していたが、偶然知り合った地下活動家のフランシスコ(アントニオ・バンデラス)に惹かれていく。「愛と精霊の家」の原作者イザベル・アジェンデの小説の映画化で、監督はベネズエラの若手女流ベティ・カプラン。

 こういう設定の映画はだいたいストーリーが予想通りで、映画は政府当局の追求を逃れた若い二人が国外逃走する場面で終わる。ただ「愛と精霊の家」よりは観客に受け入れ易い作りで、演出も奇をてらった部分がなくスムーズに展開していくあたりが取り柄だろう。

 もちろん、当時のチリ軍政の悪行は強調される。ゲリラの濡れ衣を着せられ虐殺された人々や、クーデターを企てた若い将校たちの悲惨な末路など(すべてが事実だ)、あらためてそのヒドさを目の当たりにする思いだ。家族を殺された女性に実態を語ってもらう場面まである(ドキュメンタリー・タッチを狙っているらしい)。

 しかし、監督のスタンスは社会派作品より娯楽映画に寄っている。シビアーな場面よりラブシーンやサスペンス劇の方を楽しんで撮ってるようだ。これはこれでOK。でも、「サンチアゴに雨が降る」とか「ミッシング」「戒厳令下チリ潜入記」みたいな厳しい映画を知っている観客にとっては、物足りないのも確かだ。一番印象に残ったのは、独裁政権の意向を疑おうともしないヒロインの母親(ステファニア・サンドレッリ)。このへんの人間の弱さを突っ込んで描けば、それなりの成果があがったのではないだろうか。
コメント
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