元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「キンキーブーツ」

2006-11-01 06:44:23 | 映画の感想(か行)

 (原題:KinkyBoots)靴はメンズ・ファッションにとって重要なアイテムのひとつだが、いかんせん、良い物は高い。特に定評のある海外製、いくら“歩けば歩くほど、違いが分かります”と言われてみても、欧米人みたいに四六時中靴を履いているわけではなく、さらに高温多湿の日本ではくたびれるのも早いし、高価な物を長く愛用するより必要に応じて使い捨てする方が合理的かもしれない。

 どうやら紳士靴の本場である英国でも消費者のスタンスは我が国と似てきたみたいで、この実録映画で描かれているビジネスシューズの老舗メーカーは、1年しか保たない使い捨ての海外製に完全に押されていて倒産寸前である。

 急逝した父親の跡を継いだ若社長は、ドラッグクイーン用の派手なブーツという超ニッチな市場に乗り込んで成功を収めるが、高級紳士靴のマクロ的な需要自体には何も関係はない。洒落者野郎にとっては寂しい時代が続くのである(笑)。

 映画の内容については、イギリス映画によくある“下層階級が頑張って報われる話”であり、アメリカ映画のようなケレン味に乏しいだけにイマイチ盛り上がりに欠ける。要するに「フル・モンティ」よりは面白いという程度だ。

 唯一の収穫は黒人のドラッグクイーン・ローラに扮したキウェテル・イジョフォーで、色気があるし愛嬌もある。歌も上手い。ただし残念ながら最大の見せ場になるべきミラノのファッションショーのシーンがハッタリが不得意な監督(ジュリアン・ジャロルド)のせいか賑々しさが不足している。この際だからハリウッドでリメイクしても面白いかもしれない。
コメント (1)
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