元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ストロベリーショートケイクス」

2006-11-25 07:08:04 | 映画の感想(さ行)

 こりゃヒドい。今年観た邦画の中では最低の出来だ。

 とにかく主人公の女性4人(池脇千鶴、中越典子、中村優子、岩瀬塔子)が、どれも気色悪い。宣伝文句には“愛を渇望する4人の女性の日常をリアルに描き出す”とあるが、いったいどこが“リアル”なんだか。

 石ころを神棚(?)に飾って“恋がしたいでーす”なんてセリフを真顔で(声に出して)言う女なんか聞いたことがないし、棺桶で寝起きするデリヘル嬢なんてノーサンキューだし(だいたい、棺桶どこから調達してきたんだよ)、上京してから流した涙をビン詰めにしているOLなんてヘドが出そうだし、実際ヘドを吐いている過食症のイラストレーターは、そのキモいOLと同居していて、その存在にストレスを感じているらしい(だったら最初からルームメートなんかになるなよ)。

 徹頭徹尾ムカつく登場人物とムカつく描写のオンパレードで、ならばその不快さの果てに何かあるのかと言えば、取って付けたような“和解”らしきものだけ。不快さを映画的カタルシスにまで突き詰める覚悟も何もなく、ただ漫然とカメラを回しているに過ぎない。

 監督は矢崎仁司である。彼の長篇デビュー作「風たちの午後」は日本映画史上に残る傑作だと信じて疑わないが、それからの長いブランクを経て撮られた「三月のライオン」は箸にも棒にもかからない駄作だった。そして初めてメジャーな俳優陣を得て作られたこの映画の体たらくを見るにつけ、彼は結局「風たちの午後」を撮るためだけの作家だったということが分かる。ここには「風たちの午後」での切迫したパッションや美しい詩情はどこにもない。まるで“抜け殻”だ。

 さらに劇中でのイラストレーターが手掛けた本の題名に「風たちの午後」というタイトルが付けているのは、昔の自分にしがみついているような醜態と思われても仕方あるまい。映像は小綺麗だが、まるで何かのイメージフィルムみたいで、実に薄っぺらである。
コメント
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