元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ミッション:インポッシブル」

2006-06-26 08:27:03 | 映画の感想(ま行)
 (原題:Mission: Impossible)今夏、第三作が公開予定だが、私は期待していない。何しろ96年製作の、この第一作からして低調の極みであるからだ。往年の人気テレビシリーズ「スパイ大作戦」の期待の映画化も、トム・クルーズが主演だとこんなになるのかと脱力できること請け合いだ。

 だいたいトム君に理詰めで動く沈着冷静なスパイ役なんかできるわけがない(極論)。ところが困ったことに、この映画は彼自身のプロダクションで製作されている。“トム君中心。あとはオマケ”のスタンスが貫かれていて、もう呆れるほどの映画の私物化ぶりだ。

 トム君の“あんまり難しいことを考えるのは得意じゃない”というキャラクターに合わせるように、プロットの展開が極めて平易。つまりサスペンス映画としてレベルが低い。冒頭の、諜報員の名簿を盗んだスパイを追いつめようとするエピソードからして、“これが「スパイ大作戦」の映画化か?”と思うほどの段取りの悪さ。ハメるつもりがハメられてしまう彼らの顛末も、大方の観客には簡単に予想がついてしまう。一番シラけた場面は、トム君が事件の裏を推理(?)すると、画面にその通りのシーンが漫然と流れるくだりで、こんなのはクライマックスのキメの部分に持ってくるならまだしも、中盤でネタを明かしてあとはトム君得意のノー天気な活劇に突入させようという意図がミエミエで、すでにTV版とは(悪い意味で)一線を画す、お手軽映画になり果てましたという作者の“投了サイン”でしかない。

 さらに、ジャン・レノやエマニュエル・ベアール、ジョン・ヴォイトにヴァネッサ・レッドグレーブという豪華な面子を脇に配しているにもかかわらず、少しも印象に残らない。考えてみればこれも当然で、“あんまり難しい演技は得意じゃない”というトム君を中心に撮らなければならないため、ちょっと本気出せば簡単に主役を食ってしまう実力派の脇のキャストには出来るだけ芝居させないようにしたためだ。これでは監督ブライアン・デ・パルマも何もやることがなく、大味なアクション演出に終始するしかない。

 「007」の向こうを張ったようなヨーロッパロケも観光映画の域を出ず、特急列車の上での活劇場面は予告編だけで十分。おなじみのテーマ音楽がむなしく響く。
コメント
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