元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「タブロイド」

2006-06-19 06:50:47 | 映画の感想(た行)

 (原題:Cronicas)エクアドルの幼児連続殺人鬼を追うマイアミの放送局のリポーターが“私は殺人犯と知り合いだ”と言う胡散臭い男を取材したことで、取り返しのつかない事件に巻き込まれてゆくさまを描くアルフォンソ・キュアロン作品。監督・脚本は新鋭セバスチャン・コルデロが担当している。

 マスコミの欺瞞を暴く映画は数あれど、残虐度と後味の悪さではピカイチだろう。構図としては「スクープ/悪意の不在」や「破線のマリス」等と共通している部分が多々あるが、これが鬱蒼とした“緑の魔界”とでも形容したくなるようなエクアドル奥地のジャングルを背景に、この国が抱える悪しき官僚制および賄賂社会、さらにアメリカに対する従属的政治体制というハードなネタを散りばめると、得体の知れないダークな雰囲気が全篇を覆う。救いようのないラストも気分を萎えさせるのに十分だ。

 それにしても、古今東西の映画で描かれてきた、このマスコミの独善というやつは救いようがないものだ。つまらない野心と、吹けば飛ぶよなプライドと、身の程知らずの使命感で、事態をますます悪化させ、自分たちはまったく責任を取らない。権力を告発するつもりが、逆に権力に翻弄される滑稽さ。さらに自らが“権力”であることを都合良く失念している。

 “問題の男”を演じるレオノール・ワトリングは底知れぬ心の闇を体現化して圧巻だが、リポーター役のジョン・レグイザモがマスコミ人種の軽薄さをうまく表現していて感心した。スペイン語もペラペラで驚いたが、彼はコロンビア出身ということを最近知った私である(^^;)。
コメント
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