元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「プロデューサーズ」

2006-06-24 17:42:24 | 映画の感想(は行)

 (原題:The Producers )メル・ブルックス監督のデビュー作のリメイクだということを観た後に初めて知った。ただし、舞台化は68年の映画製作後だから、これは舞台版の映画化と言っていいかもしれない。いずれにしても、無頼に楽しい映画だ。

 もちろん、ここには全盛期のMGMミュージカルのごとく現世を完全に超越したような悦楽感はないし、ジーン・ケリーやフレッド・アステア、ジンジャー・ロジャースのような天才もいない。ネイサン・レインとマシュー・ブロデリックは好演だが、往年のミュージカル・スターのような輝きには欠ける。ユマ・サーマンに至っては身体が重すぎて画面のリズムが停滞してしまう。何より、全体を覆う“ユダヤ臭さ”には愉快になれない。

 しかし、しかしである。それでも、ウキウキとした旋律に乗って登場人物が歌い踊り、絵に描いたようなハッピーなストーリーが臆面もなく展開されると、心の底から幸せな気分になれる。これがミュージカルの魔術であろう。

 特に劇中劇「春の日のヒットラー」は、あまりの煌びやかさ、あまりの脳天気さに、マジで泣けてきた。人間、涙が出るのは哀しいときや嬉しいときばかりではない。楽しくてたまらないときも目頭が熱くなるのだ。時代設定の1959年の意匠も万全で、街中に「ウエストサイド物語」や「マイ・フェア・レディ」のポスターが貼られているあたりはニコニコしてしまう。

 ミュージカル映画というジャンルは、もはやハリウッドでは作れず、インド映画の専売特許になってしまったと思っていたが、その認識は間違っていたようだ。今もブロードウェイではヒット作は次々と出ているし、トニー賞も盛り上がっている。映画のネタには困らないはずだ。今後もこういうシャシンが作られることを切望するものである。
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