斜視自動車評議会備忘録

実用車4台による12輪生活と気になるクルマの話題を中心に気になることをぼちぼちと

福岡の事故雑感

2006年08月31日 | みちのはなし
本日の出張中の車内で上司と話題になりました。

高欄(防護柵)が問題になっていますね。
一番悪いのは飲酒運転をしたヤツなんですけどね。
基準に則って設計された高欄を“強度不足”とあたかも問題があるかのように言われるのが、橋梁設計をする同業者として納得が出来ないので。

今後はかなり特殊な条件が重ならないと起こりえない事故まで担保する必要がでて来るかもしれません。
今回のようなレアケースまで想定して設計すると“過大設計”と通常の監査では問題になります。
我が身かわいさもあるとは思いますが、通常業務では設計者として両側の高欄を車両衝突対応するものに提案するとはないし、発注者側も採用できないでしょう。

事故の悲惨さ、3人のお子さんを理不尽な事故で失ったご両親の気持ちが分からないわけではありません。

ただ、道路管理者の判断や橋梁設計のミスのように取れる報道は如何なものでしょうか?
今回の事を踏まえて基準を改めて見詰め直すのはいいことだと思いますが、このようなことを踏まえた橋梁を設置するようになると、コストがそれなりにかかってしまうのは了承していかなくてはなりません。(トレードオフが働くのです)

公共土木設計は最小構成を設計するのが大原則です。
歩道が片面にしか設置されていない件の橋は歩行者交通量が少ない事は容易に想像できます。
また、スクールゾーンのように子供たちが多く通る橋でもなかったのでしょう。
だから歩道と車道の境に縁石しか設置されていないのだと思います。(歩行者防護にを力をいれる必要がない)

安全は何物にも変えられないと思っています。
でも、この場所に橋梁を設置する設計をしたらほとんどの設計者が同様の横断面構成を提案し、採用されると思います。(基準を照らし合わせても採用する理由は見当たらない)
反対側は歩道という緩衝スペースがないので、車両用防護柵を設置するのも当然の事です。
歩道のある事故現場側は落差1.5mいじょうあるので、歩行者・自転車の転落を防止する為の作が設置する必要があるのです。

想像力に欠ける人も発見しました。
それは、「衝突した側の欄干も車両用の規格のものなら良かったのに。」といっていた人達です。
車道には路側帯と縁石を挟んで歩道があるんですよ。
歩車道境界にガードパイプを付けたら、衝突した車が海に転落するのを防ぐだけではなく、歩道を歩く歩行者や自転車の安全も守れるのではないでしょうか?

件の橋が、場当たり的な対応が取れるのかどうかも不安があります。
限界まで軽量化に取組んだ最近の橋梁は、橋梁本体が車両用防護柵(ガードパイプだろうね)の衝突を受け止める強度的な余裕があるのかが不安です。
車両用防護柵を設置するにはひょっとしたら橋梁上部工の補強が必要になるかもしれません。

補足
設計では不利になること危険になることを敢えて採用する設計は絶対にしません。
例えば今回の事例だと、サイクリングフェンスしかつけない場合とガードパイプも設置した場合の設計の手間はまったく変わらないでしょうし。