その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書。SINCE 2008

ノット版、モーツァルト「レクイエム」 by 東響:心洗われる歌唱と演奏

2021-10-25 07:30:09 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


個人的な話で恐縮だが、この1週間は仕事上のトラブルで息つく暇もない忙しさだった。忙しいだけならまだ良いのだが、精神的にも堪える案件で参った。この金曜夜のノット・東響と土曜日のブロム翁の演奏会をとにかく楽しみに凌いだ1週間だった。なので金曜日の夕刻、週末に廻して良い仕事は放って定時退社し、へろへろ状態で初台へ。

凌いだ甲斐あり、ノット・東響の演奏会はいやな疲れを綺麗に洗い流してくれた。とりわけ、モーツァルトのレクイエムは(実演に接したのは2回目に過ぎないのだが)、合唱、独唱陣、オケが絶妙に組み合わさった至高の美しさだった。

中でも、新国立劇場合唱団の合唱の美しさは格別で、透明感あふれ、清明の極みだった。独唱陣のうち3名の日本人はコロナで来日不可となった外国人歌手の代役であったが、全く代役を感じない。特に、今年の新国オペラの「夜泣きうぐいす」で題名役を演じた三宅理恵さんの透き通るように響くソプラノに心洗われた。オケも美しいアンサンブルで、独唱・合唱を引きたてるだけでなく、しっかり存在感を示していた。レベルの高いコラボに、背筋を伸ばして、聴き入った。

コロナ禍でなかなか合唱曲のプログラムが無かったせいか、ひさしぶりに聴く合唱曲で、楽器演奏にない人の生の声を存分に味わった。オペラシティのコンサートホールはBCJがメインで使っていることもあってか、この規模の演奏や宗教曲の演奏にとってもマッチしていると思った。教会にいるかのような雰囲気が漂っていた。

いくつかのレクイエムの版を組み合わせ、終曲の前にリゲティの曲を挿むなど、ノット監督の独特の嗜好が取り入れられていた。ど素人の私には音楽的な意味合いやノット監督の意図は全くわからないが、リゲティの曲は緊張感を孕む合唱のみの音楽。レクイエム全体にどんな影響を与えたかも、私ごときでは論評できないが、全体として違和感なく、名演に大拍手。

7割(?)程度の入りながらも、聴衆からは割れんばかりの大きな拍手で、ソローカーテンコール付き。いつも熱く、いろんな音楽を新しいスタイルで聞かせてくれるノット監督の演奏会は実に楽しい。

(前半のデュティユー交響曲第1番は、私自身のヘロヘロの一週間を反映して、集中力無く、ところどころ沈没したり、漫然と聞き流してしまったので、感想を述べる資格無し。)



2021年10月22日(金)19:00
東京オペラシティコンサートホール

指揮:ジョナサン・ノット

ソプラノ:三宅理恵
メゾソプラノ:小泉詠子
テノール:櫻田亮
バスバリトン:ニール・デイヴィス

合唱:新国立劇場合唱団

デュティユー:交響曲第1番
モーツァルト:レクイエム K.626

本公演は音楽監督ジョナサン・ノットの希望により、モーツァルト作曲のレクイエム「コンムニオ:ルクス・エテルナ」の前に、コーラスがリゲティ作曲「ルクス・エテルナ」を演奏いたします。

Date:Fri 22th Oct 2021, 2:00 p.m.

Artist
Conductor : Jonathan Nott
Soprano : Rie Miyake
Mezzo Soprano : Eiko Koizumi
Tenor : Makoto Sakurada
Bariton : Nail Davis
Chorus : New National Theatre Chorus

Program
Dutilleux : Symphony No.1
Mozart : Requiem


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