ゲノム解析を活用して日本人の源流・変遷を追う特別展。科学的、相対的に日本人のアイデンティティの理解が進み、知的にエキサイティングな企画である。
私自身は受けたこと無いが、人間ドックのオプションで、遺伝子解析を行い、被験者の縄文人・弥生人割合を算出したり、かかりやすい病気について注意を発してくれる検査がある。それとは恐らくレベル違いの精密な調査だと想定するが、出土した古代人の骨のDNAをゲノム解析することで人類の進化や集団形成が明らかになり、現代日本人とのなりたちが理解できる。とってもエキサイティングな展示だ。
DNA解析についてはデイヴィッド・ライク『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(NHK出版、2018)や本展覧会の総合監修者である篠田謙一氏による『人類の起源 -古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』 (中公新書, 2022)を昨年、読んでとても興味深かったので、本展はその現物確認的な意味合いでもあった(この2冊はとってもお勧めです)。やっぱり本で読むだけと実物に触れるのはインパクトが違う。
今回の展示にもあったが、多くの日本人は縄文人と渡来系弥生人のミックスなのであるが、本州在住の日本人の場合、縄文人の割合は10~20%で渡来系弥生人割合がずっと高く、現代の韓国人とも近いDNA的ポジションだ。こういう科学的知見を日本人として冷静に理解するのは、昨今ありがちな特定の民族の優位性を強調する一部の風潮を客観的に捉えるためにも大事なことだと思う。
弥生時代の「渡来」と古墳時代の「渡来」の相違など、古墳時代への踏み込みはもう少しあってもいいのではと感じだが、微妙な政治的配慮もあるのかもしれない。
また、私にはこうした分析が、日本人の起源だけでなくて、家族や社会の在り方を解明する手掛かりになるというのも興味深かった。DNA分析だけでなく、様々な遺跡、出土物等の「証拠品」と併せて、これからも様々な過去が明らかにされていくのだろう。
とってもオススメの特別展で、会期は6月15日までなので、興味ある方はカレンダー見て訪問日を確定されることをお勧めいたします。