ボッティチェリ(1445-1510)を中心としてルネサンス期のフィレンチェの芸術や社会を紹介する企画展です。半年ほど前に東京都美術館で開催された「ウフィツィ美術館」展に続いて、ルネサンス期のイタリア美術にたっぷりと浸れます。
ウフィツィ美術館を初めとして様々な美術館からボッティチェリ作品(公房作などを含む)が17点も展示してあったのは驚きでした。ここまでボッティチェリ作品に囲まれた空間に身を置いたのは初めてです。
展示群の中では、今回の目玉作品であるウフィツィ美術館のフレスコ画《受胎告知》が格別。優美ななかにも壮厳さも漂わせ、特別な味わいがあります。展示室ではこの絵の前に椅子が置いてありますが、座って眺めていると、あっという間に時間が過ぎていきます。横幅5メートルにも及ぶフレスコ画をはるばる日本に運んでくれたことに感謝感激です。
サンドロ・ボッティチェリ《受胎告知》 1481年、フレスコ、243×555cm フィレンツェ、ウフィツィ美術館
フィレンツェが衰退に向かう中、修道士サヴォナローラによる贅沢品を戒めた運動(「虚栄の焼却」)の影響を受け、ボッティチェリの作品にも変化が見られたのは興味深いものでした。当時の作品には、ボッティチェリ独特の作風は残りつつも、フィレンツェ繁栄期に見る華やかな趣は綺麗に除かれていました。
ボッティチェリの作品以外では、スケッジャ《スザンナの物語》が好みです。日本の絵巻物を見るように、1枚の絵で物語が流れる面白さがあります。
スケッジャ《スザンナの物語》 1450年頃、テンペラ・板、41×127.5cm、フィレンツェ、ダヴァンツァーティ宮殿博物館
Bunkamuraザ・ミュージアムが良いのは、金・土は夜9時までやっていることです。特に8時以降はゆったりと落ち着いて自分のペースで鑑賞に集中できるので、おすすめです。作品保護のためか、展示室内は相当寒いので、羽織るものを持っていたほうが良いと思います(ブランケットを貸してくれるようですが)
6月28日まで。