旧型Vmaxは発売期間が長かったことと、旧勤務先の時代からかなりの台数を作業しているので、新規のお客様の場合でも、持ち込まれた車両を見てみると以前作業したことがあったりします。今回の車両は、エンジン不調というか、始動困難になったり、始動後に走行不能になったりする症状でしたので、レッカー入庫でした。
お客様と相談の上、コンディションレベルチェックパックで作業することにしました。外装を外して点検から始めます。
シートを外すと、バッテリー周りの配線が酷い状態でした。外装を外していくと、キャブレターを外した形跡がありましたが、戻し方もひどかったので、過去の作業も怪しいです。社外品のVブーストコントローラーが付いていましたが、水が出てきました。スイッチ部も錆びて誤作動もあるので、とりあえず配線外しました。スイッチ部から水が入ったようです。
バッテリーですが、液式でしたので、点検窓から液面を見ました。バッテリー脱着時にプラグコードを外したようで、接続部が、腐食していました。
バッテリーを外して点検と補充電しましたが、充電状態も悪く、比重も上がりませんでした。レギュレーターを見ると純正コピー商品で、ヤマハ純正品ではなく、海外生産品のようです。
バッテリーが復活しないので、点検のため、他の生きている中古バッテリーを仮付けして作業を進めることにしました。
お持込時についていたのは、NGK製JR8Cでしたが、このプラグでのエンジン始動はなかったようです。以前装着されていた純正プラグ(NGK製DPR8EA-9)もお持ち頂きました。装着気筒が不明ですが、2個は、プラグが良く焼けで、2個は、カブリ気味だったようです。
オイルキャップからエンジンオイルが漏れていたので、キャップのOリングを交換しました。標準より細いか劣化したOリングで、漏れていたようです。バッテリーを仮付けし、点火系を点検修正の上、点火火花をチェックしました。4気筒とも規定値の火花は確認できました。
エアクリーナーは、純正で問題無いです。ダイヤフラムも外観上は、回転や作動不良は無いようです。
エアベントパイプが捩れていたので、エアクリーナーボックスを外してみましたが、ブリーザーパイプのクリップも無く、過去のキャブレター分解時にフロート室のフタの位置を間違えて装着されており、この状態だとエアベントチューブがうまく治まりません。組み立て方が間違っていることや、取り付け状態も怪しかったので、分解時に正常に組まれているかどうかが不安です。ガソリンタンクは、過去に新品に交換されたようでした。
パイロットスクリュー部は、圧入栓が抜かれており、ゴムキャップがなかったですが、固着はなかったです。クーラントですが、エンジンオイルが混入しており、ラジエターキャップ裏に白濁したエンジンオイルが付着しています。
リザーブタンク側にもオイルが混じっていますので、Vバンク間のセパレーター部の修理が必要です。
Vブースト部のゴムジョイントが切れてはみ出していますので、要交換です。
フロントタイヤは、まだ溝はありますが、製造が4年前、リアは、要交換で、製造は10年前でした。
フロントフォークオイルは漏れていませんが、クリップが錆びています。
なぜか、リザーブタンクに網がカブっています。リアサスは、Vmax用旧タイプオーリンズ(YA137)で現状ではオイル漏れ等は無いです。
リアキャリパーのボルトが純正ですので、頭の低いボルトに交換した方が良いです。リザ-ブタンクに当たります。
キャリパーは要点検清掃です。フロントブレーキローターは少し歪みがあります。リアキャリパーも要点検清掃ですが、パッド押え板が前後逆です。この向きだとパッドを後ろに押しているので、ブレーキをかけた際に、パッドの裏板(鉄)がキャリパーに当たって音が出る上に凹みます。
フルードは、古くはなさそうですが、交換時期不明です。
ヘッドライトですが、リム上側が外れています。大き目のカウルが付いて要るので、装着が難しいです。
ワイズギア製のウインカーですが、経年劣化で、ステーのゴムが割れています。ステーの単品販売は無いので、割れたらウインカー交換です。
各部点検の上、エンジンを始動してみました。エンジン始動前後の点検窓です。
仮付けのバッテリーですが、エンジン始動前と始動後(ヘッドライト消灯時)の電圧です。とりあえず充電系統は生きているようですが、レギュレーターがコピー商品のため、不安です。
バッテリーが中古のままですが、コンディションレベルチェックパックが一旦終了したので、チェックと試乗です。点検結果は別途お伝えしますが、作業優先事項として、バッテリー交換、キャブレター分解点検及び調整と同調、クーラントへのエンジンオイル混入のためセパレーター部修理、Vブーストジョイント部のゴム交換を引き続き行います。予算もあるので、最優先事項から作業になります。
2022.03.02 作業担当 ヤダ(矢田)
オーナーにご連絡し、こちらの判断で、優先順位から作業することになりました。
まず、バッテリーを新品交換しました。セパレーター部修理のため、クーラントを全量抜きます。
セパレーター部修理のため、Vバンク間から外しますが、この際、シリンダーからクーラントを抜いてないとVバンク間のクーラントが残ったままになるので、必ず全量抜きます。今回は、上からの写真を取りましたが、なかなか複雑な構造で、ポンプ側(写真上側)の穴からクーラントが流入し2番目の穴で3番と4番気筒のシリンダーに流れます。次にセパレーター内部を通り、反対側の1番と2番気筒に流れます。真ん中の穴は、クランクケース内からのブローバイガスの通路で、ガスは、セパレーター上部のブリーザーパイプで、エアクリーナーボックスに循環されます。真ん中の穴の左よりにオイルパイプがあり、クランクのオイルラインからエンジンオイルが上がってきて、セパレーター上部のオイルラインで、前後のシリンダーヘッドに流れます。写真一番下の穴は、マグネットローター側とブローバイガスの部屋を繋いでいます。写真の通りで、オイル関係の穴とクーラント関係の穴が隣同士に並んでいるため、ガスケット(ゴム製)が劣化すると、クーラントとエンジンオイルが混じることになります。今回は、ブローバイガスの部屋にもクーラントが入っていました。
キャブレターは、全分解し、点検と組み立て直しです。組み立て時に劣化した部品類は交換しました。今回交換した部品類です。キャブレターのOリング類、セパレーター部のガスケット、切れていたVブースト部のジョイント及びバッテリーです。
最終チェックと試乗です。キャブレターの同調を取った後、微調整で、何度か試乗しています。分解時に細かい部分も直していますが、オーリンズのリアサスに傷が入るので、ブレーキキャリパーの上側ボルトを加工したり、デジタルメーター(油温計)のアース不良を修正したり、ヘッドライトリレーが機能していなかったので修正したり、社外シートでしたがバックレストと干渉し、止まっていなかったので、ステーを加工したりしました。優先事項からの作業でしたので、修理個所は、全部は行えませんでした。とりあえず走行は可能ですが、スリップオンマフラーに交換してあり、消音のため、抜けが悪いバッフルが装着されているため、吸排気のバランスが取れておらず、調整が難しいです。残りの作業箇所は、後日になると思います。
2022.03.12 作業担当 ヤダ(矢田)
追加作業です。レギュレーターですが、前回、点検時に社外品が付いており、不調が疑われたのですが、とりあえず、充電はしていたことと、バッテリーを新品にしたので、様子を見ることにしました。ただ、デジタル電圧計が付いていたので、オーナーに社外品のレギュレーターで不調になる可能性があり、電圧が下がったら、すぐ連絡してもらうことになっていたのですが、電圧降下の症状が出たので、用意してあった純正部品に交換しました。
交換した部品です。純正と似ていますが、裏側にメーカー名と思われる印刷があり、カプラーの色も違いました。純正に交換したら、充電電圧が上がりました。バッテリーも補充電し、納車になりました。
2022.04.03 作業担当 ヤダ(矢田)