毎月、新規のお客さんがご来店されます。他のショップで修理を断られたとか、修理に出したが治っていない等のケースが多いです。旧型Vmaxの場合、1985年発売ですので、旧車の域に達していると思いますし、最近の整備士さんは、インジェクションをメインで習いますので、キャブレターになれていないとか、エラーコードの利用ができないので、面倒とかもあると思います。ただ、機械部分はそれほど変わっているわけでは無いですし、バイクの場合、ほぼガソリンエンジンでタイヤが2個(3輪等もありますが)で後輪駆動ですので、各メーカーの作り方以外は、使っている部品も似たようなものです。他店修理車両を再修理する場合も多いですが、基本的な作業ができていないケースも多く、この先、業界として大丈夫なのだろうかと思います。
千葉の方で、キャブレターの同調作業をご希望でしたが、初めて触る車両でしたので、コンディションレベルチェックパックとシートレール補強ユニット装着でお預かりです。
お預かり時に車高が低いので、前後タイヤとフロントフォークのエア圧の点検から始めました。エア圧が低いと接地面が平らに広くなるので、偏摩耗になりますし、接地面が広いと摩擦抵抗が増えるので、押し歩きも重く、加速も悪化します。また、車高も下がり下回りが接触しやすくなるので、各部空気圧は、規定値を保った方が良いです。
アクセルホルダ-スッチボックスとワイヤーが社外品ですが、ワイヤーの取り回しがあまり良くなくアクセルの戻りが悪いので、多少修正しましたが、ハンドル周りが純正では無いので直しきれていません。ステムベアリングのカバーが曲がっていましたが、タイヤ交換を行う際に、ここにロープ(ベルト)を掛けて釣り上げるとなり易いので注意が必要です。(修正済みです。)
キャブレターがゴムのジョイントに刺さっていません。乗っているだけです。また、2番(左前)のドレンボルトからガソリン漏れです。(Oリング劣化)
エアクリーナーは、ヤマハ純正ですが、汚れとスポンジ劣化があります。交換した方が良いです。ダイヤフラムは、回転や作動不良は無いので、平気そうです。
キャリパーとホース類は、点検のみです。Vブーストジョイントのバンドは、締めすぎなことが多く、ゴムジョイントが切れやすいので、締め過ぎないことが重要です。
ウォーターポンプの下側の穴からエンジンオイルが出ています。ラジエター下部のバルブが閉まっていませんので、常時ラジエターが作動しています。暖気が遅くなり、冬場は冷えすぎになります。この状態だとサーモスタットはショートカットされ、クーラントが流れます。
クーラントの量は、少し多めで、問題は無いですが、リザーブタンクとラジエターキャップ裏にエンジンオイルが付き始めていますので、酷くなる前に修理した方が良いです。
リアサスの関しては、汎用品のようなので、なんとも言えませんが、オイルは漏れてはいません。
フロントブレーキとクラッチのマスターを社外品に交換する方は、多いですが、車体側のキャリパーやクラッチレリーズとマスター側のピストン径の組み合わせを適合させないと不具合が発生することがあります。旧型Vmaxはクラッチレリーズのピストン径が大きいので、クラッチ側のピストン径は、横型換算で8/5インチ(15.875mm)になります。ピストン径が小さいと必要フルード量に対してストロークが長くなるので、レバーを握ってもクラッチが切れきれない場合があります。
フルードは、交換時期が不明ですが、新しくは無いです。クラッチ側は、エンジン側で熱がかかりやすいので、劣化が早いです。キャブレターを正常位置に戻す作業(ジョイントに押し込む)中ですが、右の2個のキャブレター(3番4番)は、フロート室の蓋が逆で、エアベントチューブの向きが違います。向きが違うとエアクリーナーボックスの下側に収まりが悪いです。
フロントフォークは、ダストシールにヒビがあることとトップキャップが錆びているので、しばらくフォークオイルを交換していないようです。
バッテリーの電圧と容量です。
少し補充電しました。エンジン始動前と始動後(ヘッドライト消灯時)の電圧です。充電系は平気そうです。
シートレール補強ユニットを装着しました。リアフェンダーが社外品でしたので、配線加工と取付部の加工を行いました。リアフェンダーが社外品の場合、取り付けが無理な場合と、加工して取り付けができる場合があります。
スパークプラグですが、デンソー製のイリジウムが付いています。左から4番、3番、1番、2番のプラグですが、3番4番の燃焼状況が悪いようです。右の写真は今回交換した部品です。補強ユニットのボルトと交換した純正ボルト、キャブレター(2番)のドレンボルトのOリングです。
最終チェックと試乗です。今回、メイン作業のキャブレター同調ですが、お預かり前に他店でキャブレターの脱着、分解を行っており、キャブレターの装着状態とアクセルワイヤーの取り回しが悪かったことは、先に修正してキャブレターの点検調整&同調を行いました。マフラーがスリップオンで、エキパイの長さの違いにより前後気筒の排圧が違いますので、合わせましたが、キャブレター内部の組み立て状態が良くないのか、少し調子が微妙です。ただ、お預かり時よりは、状況は改善しております。無事納車になりました。
2019.12.28 作業担当 ヤダ(矢田)