旧型Vmaxも最終生産から12年がたち、それぞれの個体で走行距離が増えたり、経年劣化や使用状況により車両の状況が劣化しているものが増えてきました。個人車2台もそうですが、現状の状態をどこまで維持できるですが、使用状況や、メンテナンスにかかってきます。
新車購入で、ある程度走行後、エンジンから異音が出て、他店修理で完治せずの車両をお預かりしました。とりあえず点検のため、各部分解しいていきますが、部品の取付けや、配線の不備が多く機能していない部分もありました。
とりあえず、エンジンを始動するのに最低限の点検をし掛けてみました。確かに異音というかタペット音というか回転打音がします。キャブレターの同調がずれていると音が出る場合もあるので、仮に同調を合わせ、打音の出ている箇所を特定します。まだ、走行はしていませんが、クラッチ周りも頼まれていますので、点検しますが、まず、バックステップのリンク周りの緩みとロッドの角度が斜めになっているので修正です。
音の出所がヘッド周りなので、タペット調整の準備をします。バッテリーが弱り気味なので、外してみたら、液がほぼ無く、極板が露出しており、仕方がないので、液を規定値まで入れて補充電しました。ある程度は復活しましたが、満充電にはならないようです。
各部外しながら点検修正です。リアバンクのイグニッションコイルとコードの差し込修正です。また、Vブーストの切り替えスイッチを装着してあったのですが、配線がつながっておらず、さらに圧着端子での接続でしたので、マイナス側の配線が切れていました。
キジマ製の後付けハザードが装着されていましたが、配線がつながっておらず、作動しなかったので、まず、作動点検しましたが、片側の配線が作動不良なので、本体を開けてみたら、内部断線でしたので、補修しました。スイッチもダメでしたので、新品交換です。
逆車の場合は、走行時のオートキャンセルのため左ウインカースイッチに通常にはないリレーを作動させるスイッチが別に入っていますが、右側の接点が接触不良で作動しづらかったので、修正です。また、クラッチマスターは、ゲイルスピードのマスターをお持込でしたので、デイトナニッシン製から交換しました。
現在は、あまり見かけませんが、一時期バッテリーにコンデンサーを装着することがはやった時期があり、当時デイトナも販売しており、コンデンサーがありましたが接続されていなかったので、リレーを介して接続しました。コンデンサーをバッテリーにそのまま配線するとバッテリーに負担がかかる場合があるので、メインキーオン時のみ作動するようにしました。ウォーターポンプですが、水漏れは無いのですが、ガスケットからエンジンオイルが漏れているので、クーラントを抜いた際にガスケット交換します。
クラッチカバーのガスケットからもエンジンオイルが漏れていますが、クラッチは別件で点検するので、その際に交換します。エンジンオイル、オイルフィルター交換中です。
ヘッドカバーガスケットを外すので、クーラントを全量抜きます。
クーラントを抜いている間にウォーターポンプのガスケット交換です。ヘッドカバーガスケットを外し、タペットクリアランスを点検し、シム調整です。旧型は新型と違いカムシャフトは外さなくても調整可能なアウターシムなので、調整自体は楽です。
スパークプラグは、NGK製JR8Cですが、キャブレターの点検調整もあるので、今回は、新品交換です。キャブレターを外したところ、後ろ側の連結プレートのボルトが3本抜けて、4本目は緩んでいました。落ちていた2本はエンジンの上面から発見しましたが、1本は、脱落したようです。このままだと、点検調整ができないので、ボルトを追加し、キャブレターボディ4個の水平を出しながら連結します。
一応参考までに、冷間時の圧縮圧力を測っておきます。1番、3番です。
2番、4番ですが、前後の気筒でズレがあるようです。
電気系を修理したので、一応4気筒の火花性能をチェックします。
エンジン始動前の電圧と始動後(ヘッドライト消灯時)の電圧です。充電系は平気そうです。バッテリーもスタータを回せるので、しばらく使えそうです。クーラントリザーバータンクの排出パイプがエキパイに接触し溶けて塞がっていたので、切断しフレーム外側に出しました。
キャブレターの点検調整、同調後、一旦試乗です。クラッチ板自体の切れが悪いようで、クラッチ自体は、切れているがクラッチ板同士が貼り付いてシフトがしづらい状態です。試乗時、回転打音がエンジン温度により変化し、アクセルの開け方でも変わるので、一応、カムチェーンのテンショナーを点検です。
タペット調整の際も、カムシャフトを回転させるとベースサークルでのクリアランスが位置により少し変わるので、気にはなっていたのですが、タペット調整後は、始動直後は音が出なくなっており、温度が上がると音が出始め、さらに温度が上がると出たりでなかったりし、カムチェーンのテンションのかかり具合で音が変化するので、推測として、シリンダーヘッドとカムシャフトのクリアランス、また、カムシャフトのゆがみ等も疑われ、V型4気筒でカムシャフトが2気筒を担当する場合、旧型Vmaxの爆発間隔だと、吸気側、排気側ともカム山が2気筒ともバルブを押していない角度が発生し、この角度の間は、瞬間的にカム山のテンションが抜けるので、その時点でのクリアランスや、カムチェーンのテンションのかかり具合で打音が発生すると思われますが、今回は、カムシャフトを外して分解点検していないので、推測です。ちなみにクランクを手で回した際のカムシャフトのポンチマークとピストン上死点の関係は点検済みで合っていました。 カムシャフト周りで音が出る原因で、バルブスプリングがダブルタイプの場合、スプリング同士の接触音が疑われる場合もあるようですが、今回は、同じエンジン回転数でもアクセルの開閉でカムチェーンのテンションを変えると打音が変化することと、過去にバルブスプリングの接触音での修理例がないので、バルブスプリングの点検は行っておりません。(点検の場合、ヘッドを分解する必要があり、エンジンを下す必要があります。)
納車まで、毎日走行し、様子を見ています。
一応、暖気後の圧縮圧力です。1番と3番です。
2番と4番です。やはり前後で差が有りますが、規定値に近いに圧縮があり、気筒間差も規定値以内です。
納車可能なので、オーナーにご連絡をしたら、シートレール補強ユニットとフロントフォークスタビライザーの追加装着の依頼を受けましたので、装着です。
今回の作業内容や、状況をオーナーにご説明し、納車になりました。
2019.08.04 作業担当 ヤダ(矢田)