今年の新年最初にお預かりした車両の点検から始めます。
お預かりした次の日の朝、移動しようと思ったら、ポンプの穴から水が漏れていました。ポンプは修理しますが、漏れている箇所を直すと次に弱いところから漏れるケースが多いので、サーモスタット周辺も点検して交換になると思います。
バッテリー交換時にこの部分のプレートを外すことになりますが、プレートの前側は、グロメットがあるので、フレームに差し込み、後ろ側がボルト止めです。前側がフレームに差し込まれていないことが多いです。エアクリーナーは、ヤマハ純正新品でした。若干汚れがあるので、キャブレター調整前に掃除します。ダイヤフラムですが、4気筒とも回転していました。分解はしていないようです。
バッテリーは、現時点では、電圧容量とも平気そうです。
エンジン始動前と始動後(ヘッドライト消灯時)の電圧です。充電系は平気そうです。クーラントは漏れてはいますが、エンジンオイル混入は無いので、セパレーター部は平気そうです。
スパークプラグは、NGK製イリジウムプラグでしたが、3番気筒がカブって死んでおり、ほぼ3気筒になっていました。プラグの写真は、左から4番、3番、1番、2番です。先端の写真は、火が飛んでいる2番と死んでいる3番の比較です。火が飛んでいるとその部分のみカーボンが付いていませんが、3番は真っ黒です。プラグキャップにつないで点検しても火が飛びませんでした。
メーターケーブルに押されて、ブレーキホースが、フロントフェンダーと接触し、被膜が摩耗していました。また、フロントブレーキ、クラッチ側ともホースの通し方がズレています。
キャリパーですが、3個ともパッドは残量あり。リアは、カバーが無く、パッド抑え板が前後逆です。後ろに押えると、ブレーキをかけた際にパッドが前側(回転方向)に当たり音が出ます。
各部、配線や、ホースの通し方が、おかしくなっているので、走行時に擦れる可能性があります。
フロントフォークですが、インナーチューブが社外品のような気がします。また、アウターチューブが車両の年式とあっていないので、アッセンブリで交換されていると思います。また、ステムベアリングは、若干の劣化はあるものの調整範囲で大丈夫ですが、締め付けが緩すぎです。フロントフォークですが、一応、左右のトップの高さは合わせた方が良いと思います。エア圧は、0でしたので、0.4(標準)にしました。
オイルフィルターは、純正ではなくベスラでした。過去に社外品で分解していたケースがあったり、リリーフバルブや、設定油圧の件もあるので、当店で交換する場合は、ヤマハ純正品を使用しています。フレーム前側の左に登録形式とカラーコードのステッカーが貼ってあります。5GK7は2001年モデルで2000年5月発売、カラーコードAは、ニューシルバーダスト(ヤマハ名)という色ですが、通称は、カーボン2です。隣の写真は、デモ車2号機で、5GK5で2001年モデル、2000年5月発売です。通称カーボン1は、国内仕様最終型と同じでグレーっぽいカーボンになります。
ガソリンタンクは、新品に交換済みでした。
前回、リアホイールを外した際だと思いますが、リアのアクスルナットがほぼ閉まっていませんでした。セルフロックナットなので、脱落しなかったのだと思います。スイングアームの右側のボルトとナット部分ですが、フレーム側の形状が少しおかしいので、ロックナットがうまく締まっていませんでした。次の写真は、別車両です。仕方がないので、センターのボルトを規定値で締め、ナットを規定値で締めなおしました。
Vブーストコントローラーの配線がおかしいので、直しましたが、負圧センサーのカプラーが抜けたままだったので点火進角の負圧補正がなかったようです。以前のバッテリーが液式だったようで、その際、ブリーザーパイプが抜けていたらしく、排出された希硫酸で腐食している部分がありました。
ダイヤフラムの点検で外した際ですが、エアジェットの様子がおかしいので、外してみました。腐食していたので、磨きましたが、番手が消えており不明でしたが、この部分は、エアジェットなので、通常腐食しません。
気になって、4個ともジェットを外しましたが、同じように腐食しており、正常な#170のジェットと比べても、穴が小さく(簡易的に楊枝を刺してみました)腐食具合からするとガソリンに浸かっていたと思われ、メインジェットの#152.5ではないかと思います。エアクリーナー側のジェットは、#90でしたので、まだ、開けていませんが、キャブレター内のメインジェットが間違って#170になっている可能性があります。
各フルードです。クラッチ側はエンジン側とつながっているので、熱がかかりやすく早く劣化しますが、フロントブレーキとリアブレーキの色が違いますので、交換時期が違うと思われます。また、フロントブレーキとクラッチフルードは、劣化ではなく、細かいゴミが入っています。
一応、現状で試乗してきました。試乗前にキャブレター同調とパイロットスクリューの点検を行いましたが、同調は、全くあっておらず、パイロットスクリューも4番以外は反応しない状態でした。プラグは3番が死んでいましたので、とりあえず生きていた中古のJR8Cを試乗用に装着し、ある程度同調を合わせてから試乗しました。オーナーの感想通り、プラグがカブり易く、また、アクセルの反応が悪く、乗りにくい状況で走行はできましたが、キャブレターのセッティングが全体的に濃い状況でした。フロントフォークは、走行時もあまり動きが良くなかったです。リアサスも左側がオイル漏れしており、伸び側のダンピングもおかしいので、次回にでも、オーバーホールした方が良いと思います。
試乗後、原因を判断するためキャブレターを外しました。ヒューズ部分も外しましたが、後付配線がイグニッション配線(点火系統)に接続されていたので、シグナル系統に移動しました。点火系から配線を分岐するとバッテリー点火のため火花が弱くなるので、接続しない方が良いです。電気の流れは、水の流れと似ているので、元栓の水圧を変えずに水道管を2本にすると1本当たりの水圧が落ちるのと似ています。写真の#90のジェットはエアクリーナー側です。
キャブレターを外しました。メインジェットは、フロート室の裏蓋を外すと見えるので、見てみました。予想通り、#170が入っていました。標準が#152.5なので、これだと濃すぎてまともに走れなかったと思います。
キャブレターの組立状態が信用できないので、一旦全分解し、組み立てし直しになります。メインジェットは、全て#170でした。また、長期不動車だったようで、キャブレター内部でガソリンが腐食した跡があり、腐食しているメインジェット#152.5、スロージェット#37.5は交換し、他の腐食部分は掃除、ダメなゴム類は交換になります。油面もそろっておらず、また、締まっていなかった部分があったり、部品が足りなかったせいで、2次エアを吸っていた部分もあり、部品を足して組み直しになります。過去のどの時点からメインジェットとエアジェットが入れ替わっていたかは不明です。中古車でオーナーが購入した時点から調子が悪かったとすると、不動車を中古車にする時点でキャブレターを分解した際かと思われます。
2018.01.08 作業担当 ヤダ(矢田)