ニイハオ! 我的朋友!

中国留学生活を綴ったのがこのブログのはじまり
今は日々のこと旅のことなど徒然に・・
そして加わった乳がんカテ

仙 人

2007-07-13 | 屋根裏部屋のおもちゃ箱
何年ぶりかで夫が 大学時代の友人を訪ねたことがあった。
もしかしたら、20年ぶりくらいだったかもしれない。

彼は理学部卒で 某有名化粧品会社研究室の研究員だった人。
いわゆる、世に言うエリートコースを順調に歩いてきた経歴の持ち主。

その彼が突然、それまでの環境からは予想だにしない世界へ入り 
もう結構な年月が過ぎていた。

都会の生活をきっぱり捨て、田舎で農業を始めたのだ。
農家の古い家を買い、わずかな土地を買い、
ほとんど機械をいれず、自分で耕しているらしい。

メインの収入源は、有精卵とのことだった。
それがまたすごい。
場所が場所なら、かなりのいい値段で売れそうな手間のかけようと育て方・・

一日一日、一年一年試行錯誤を繰り返しながら、
自分の納得のいくものを作ろうとしているみたいだった。

その頃の収入は、80万円。
年収だ。

えっ・・・     思わず、夫は耳を疑ったという。
「100くらいあると 何とかやっていけるんだけどな。」 と彼は言っていたそうだ。

「ストーブ 買ったのか?」 前に彼が欲しいと言っていたので訊ねると、まだ買っていなかった。
ストーブひとつ焚いたくらいでは、どうせ暖まらないと踏んだらしい。
古い家はあちこち隙間だらけ、暖房があっても隙間風には追いつかないのだそう。
結局、掘りごたつひとつで過ごす事に。

正味一時間くらいしか時間がなかったとかで、あわただしい訪問だった。
手を振ってくれている姿が バックミラーにいつまでもうつしだされる。

その場が見えなくなると 場所を変えながら手を振り続けてくれる彼・・
その小さくなっていく姿をミラー越しに見ながら、夫は何か考えるところがあったらしい。


まるで、偏狭の地を訪れて 最後の別れの日を迎えた 
「ウルルン ・・・」 のようだな と話を聞いていたわたしは思った。

「 あいつの暮らしは、まるで仙人だなぁ。
  俺、あいつから教わった気がしたよ。
  人ってやつは、どうやったって生きていけるもんだって。」



  彼は、今の自分の生き方に 納得 しているのだと思った。




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