めんどうくさいけど、いとおしい。
いろいろあるけど、一緒にいたい。
・・・ そうか。
『ぐるりのこと。』 を観た。
山田監督が 「精巧なガラス細工を手に持ったような繊細な仕上がり」 と評したそうだが、
ホントに繊細な感じが満ちている作品だと思った。
『おくりびと』が日本アカデミー賞各賞総なめした中、最優秀主演女優賞に輝いた 木村多江さん。
なるほど、と頷けた。
そして、リリー・フランキーさんがまたとても良かった。
夫婦愛を描いた作品としてPRされることが多かったようだが、さて、どうだろう。
“人の最終的な幸せが夫婦であるとは思わない。
夫婦ということよりも、人間同士がどう繋がって、どう関係を結び、その先に何が見えてくるかという、
人の話を描いているんだなとは思っていた”
この監督の思いを確かにキャッチできる作品になっていたとわたしは思う。
ただ、観ていて途中、すごく辛かった。
過去に引き戻される感じというか、あまりにリアリティ溢れる演技と内容に、わたしと同じじゃない と
自分とダブってしまった。
ある意味、あの頃の自分と夫を客観視出来た(してしまえた)というか。
リリーさん(夫役)がうまくて、それもまた改めて辛かった。
こんなにも見事に描ききれるものだと思ったら、監督自身うつ経験者だったことを後で知った。
監督イコール翔子。
なるほど。
だからあそこまで 観ている体験者(わたし)が相当辛くなるほど真に迫り、
心の葛藤や揺れ動きなどを 細やかに繊細に描きだせたのだろうと納得。
翔子がパニクッて、こんなことを言う場面がある。
「どうして!!? どうしてわたしといるの!? どうしてわたしなんかと・・」
こんなわたしなんかと・・
「こんなわたし」(何の役にも立てない、だれかの世話になるばかりの) としか自分を見れない時があったなって、わたしも。
いやはや、とてもいい作品だったけど、しんどい映画でもあった。
でも、翔子が良くなっていく過程にも共感を持てた。
彼女が天井絵の制作に意欲を燃やし、しだいに生き生きと命が吹き返してくる感じが
画面から実によく伝わってきた。
わたしにとっての彼女の絵は、思いきって中国で暮らしたことかな。
自分を取り戻しながら、らせん階段をしっかり上向きに登っていけてる感じ・・
いや実感?
そんなことも感じながら、観ていた。
誕生 by 中島みゆき
remember 生まれたこと
remember 出逢ったこと
remember 一緒に生きてたこと
そして 覚えていること