丁度先月の今頃、朝の 「めざましTV」 を付けていた時のこと。
意外な話題に耳を取られた。
小林多喜二の
「蟹工船」 が、かなり売れているという話題。
それも特に若い人たちに読まれているそう。
小林多喜二(1903~1933)といえば、プロレタリア文学を代表する作家。
作家と作品は知っていたものの、わたしはまだ読んだことがなかった。
この 「蟹工船(かにこうせん)・党生活者」(新潮文庫)、今年に入って “古典” としては異例の
2万7000部増刷で、例年の5倍の勢いで売れているということ。
読んでみようと思った。
どっかにあったような・・・・ と、本棚を探してみたものの見つからず。
夫に尋ねても ない というものだから、買ってきた。
そしたら次の日、あった! (夫が、家のどこからか見つけきた。 買ったってば・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_hekomu.gif)
)
左:30年以上前の文庫本(180円) 右:現代版(400円)
確かに実際に本屋さんを覗いてみて、かつてない現象に驚いた。
このところ毎週駅周辺の本屋さんを覗いているのだけれど、最も目立つところに でん! と平積みされ、
各社関連新聞記事がのっているポスターがバックには貼られていたりする。
過酷な労働の現場を描く昭和初期の名作が、なぜこうも話題になり平成の若者を中心に読まれているのか?
「ワーキングプア」 や 「名ばかり官職」 等など、ひどい働かせられ方が社会問題になっている現在。
ある新聞記事によれば、「いまの青年の働かされ方も(蟹工船と)同じだ」 という声がでたそう。
『「蟹工船」は世界大恐慌のきっかけとなったニューヨーク株式市場の大暴落
「暗黒の木曜日」が起きた1929年(昭和4年)に発表された小説。
オホーツク海でカニをとり、缶詰に加工する船を舞台に、
非人間的な労働を強いられる人々の暗たんたる生活と闘争をリアルに描いている。(引用) 』
文庫は1953年に初版が刊行され、今年に入って110万部を突破したそうだ。
ある大手書店では、「現代の 『ワーキングプア』 にも重なる 過酷な労働環境を描いた名作が 平成の 『格差社会』 に大復活!!」
などと書かれた店頭広告を立て、平積みしているとのこと。
今回、まんがになっていることを知った。
『マンガ蟹工船』
ある人がこんなことを書いていた。
『人間の生と尊厳を熱く語り続けた多喜二。
「マンガ蟹工船」には、人間の生と尊厳を踏みにじり、金儲けのためには人間を物以下にしか扱わない、資本主義社会の本質が生々しく描かれている。
そして、命さえ脅かされても抵抗すらできない労働者。その両者の極端な姿が生々しい。
もっとも優れていると思われるのは、雑多の集団だった労働者が、ひとつのまとまった集団へと変化していく様を巧みに描いているところだろう。
命さえ脅かされるもとでも、様々な「ごまかし」に惑わされ、なかなか団結できない労働者。
その労働者が目覚めていく過程を、一本道として描くのではなく、雑多な労働者がいくつものジグザグな進展・後退を繰り返しながらも、やがてまとまっていくところが巧みである。』
また、 『小林多喜二作品の魅力はなんと言っても、
生とその尊厳への慈しみ 、
それを
踏みにじるものに対する怒り を全身で語ったことではないだろうか。』 と書いていた。
そんな多喜二が特高警察に逮捕され、その日のうちに拷問によって殺されたのは 29歳。
前述したように、多喜二作品に触れたことはないけれど、三浦綾子さんの
「母」 は読んだ。
布団に入って読みながら、何回 嗚咽をこらえたことか。
「切ない」などでは表わしきれない母としての深い悲しみや、なぜ息子がこんなめにあわなければならなかったのかどう考えても分からない、もしかした自分がこの子を産んでしまったことが悪かったんだろうか、とも考える多喜二の母・・ 。
「蟹工船」ブームの中、違った角度から「母」も是非お薦めしたい作品だ。
どうしてうちに、これがあるのだろう?
かなり前から壁に掛けられた 色紙の複製。
わたしはこの 分かるようでわからないような、分からないようでわかるような、、、
この言葉が なんだか好きだった。
「我々の藝術は 飯を食えない人にとっての 料理の本であってはならぬ」
現存する唯一の直筆(複製)の言葉だそうだ。
今まさにこの言葉、輝いている気がした。