古典幾何学書の邦訳を進めて、と。今はずっと前に調べていた有名な4次元図形が次々に出てくるので親しみやすい箇所です。数学的にはかなり厳しく、前の方の章で意訳していた数学用語が変更した方が良いような気がして。古典ですから内容を明かしても差し支えないので、先にそれを言いましょうか。
立体や超立体の稜(りょう。辺(へん)のこと)に向き付けして、隣接する面を左右で白黒などに色分けしたりします。これは群論では極めて重要な操作(商群とか剰余類とか)なので、著者が名前を付けていて、「coherent(ly) index(ing)」(コヒーレント インデックス)です。さて、これをどう訳すかが問題点その1、ということ。
coherentは技術系ではレーザー光で一躍有名になった言葉です。私の少年時代など、レーザー光線と言えば漫画とかアニメに出てきて、それはそれはかっこよいものでした。殺人光線とも呼ばれていたか。殺人光線の本元は第二次世界大戦当時の我が国のマグネトロン研究と言う都市伝説があって、要は指向性電子レンジなのですが、ちっとも役立たなかった、とのこと(事故や危ない噂は今でもあります)。それが(それよりは新しい)昔のアニメとかではレーザー光線と結びついたみたいです。
レーザー光のcoherentは可干渉性と訳されていて、高校などで実演があったと思います。2重スリットを通すと見事な干渉縞が見られます。あまりにわざとらしいので、実験を見たとき(約40年前)は、ふむ、こんなものかと生意気に思ったものです。それほどはっきり出てきます。普通の電球の光では、多分、現在のLEDでも無理だと思います。こちらはcoherent光では無いのです。
coherentは英語では一般用語で、他には一貫性とか整合性とかに訳されています。何となく日本語の干渉と結びつくと思います。私なりの解釈では、情報量(エントロピー)が少ない状態、だから個別に振る舞うことが出来なくて、関連性があるように見える状態。
で、元の古典幾何学書に戻ると、出入りが一致している向きが集まるのをcoherentと表現していたみたいで、一個の稜のことでは無かったみたいです。つまり稜ですから集まっている頂点があって、入る向きを+1として、出る向きを-1として、合計が0でないとまずい(電子回路で言うキルヒホッフの法則。グラフで言えば鞍点(あんてん)の感じ)、と言うことをcoherentで表しています。いや、いくら何でも意味は分かっていましたが、一本の稜にこだわってしまったので、おそらく多分もしかして、誤訳したと思います。
(この話題も多分、続く)