静かなる水の音

2010-04-08 | 日記
雪解けの小川の流れは、夜の明かりを透明にした。田んぼに映る夜の窓。それは慎みと優しさであった。夜の窓は人々の悲しみを物語った。君の窓と僕の窓の 「 麗しいデスタンス 」 。田園交響曲第一楽章の田園の夜はさらに深まった。春の夜と水の音は美しいデスタンスである。

       母  
  あゝ麗しいデスタンス、
  つねに遠のいてゆく風景……
   
  悲しみの彼方、母への、
  捜 ( さぐ ) り打つ夜半のピアニッシモ。

( 小澤書店刊 『 定本 吉田一穂全集 』 より 定本詩集 「 薔薇篇 」 )