夢の漂流物

2010-04-11 | 日記
『 瀧口修造 夢の漂流物 』 展のカタログ ( 2005年 世田谷美術館・富山県立近代美術館発行 ) 。 最近、書棚で “ 発見 ” しました。巻頭には今は亡き瀧口の書斎写真が掲載されてありますが、見れば見るほどにその書籍とオブジェに引き込まれて、たった一頁の写真の中の迷宮である。日本の唯一のシュルレアリスト瀧口修造 ( 1903-1979 ) が生涯住んだ西落合の自宅書斎。彼の周りには前衛芸術の無名の“ 大作家 ” が多く集まった。

「 この社会には、過度の量産のために用途を失なった、孤独で惨めな物たちもある。
一方、たとえば尖鋭に研ぎすまされた機械が、まったく別の天体に墜落した瞬間の、烈しい価値転換を想ってみるがよい。だが、私のところでは、いま緩慢に、物たちのざわめきを聴くことができる。
しかし、かれら物たちのすべてが、私の認識の枠のなかで、飼い馴らされ、おとなしくしているわけではない。ある物たちは絶えず私に問いかける。いや、私に謎をかけるのである。私はかれらを鎮めるために、言葉を考えてやらねばならない。それがいまかれらに支払ってやれる私のせい一杯のものだ 」  ( 瀧口修造著 「 物々控 」より )