海に吹く風

海の大好きな私
ここで皆さんとお話しましょう

日々思うこと、短歌についても書いていきます

青葉の季節

2017-02-11 19:26:47 | 短歌


長旅を終えたるごとく本を閉づチボー家のジャックの死を受け入れて

もう二度と読まぬ日記を捨てられず書棚の奥にまだおいてあり

若くして逝きたる人の遺稿集競ふがごとく皆読みし頃  

数式の答へはいつも後回しそんな生き方ができずに君は

真つ直ぐに見つむる先の自我の闇連鎖のごとき若き死のあり

駅前の楠の若葉のほの赤く頭上に揺れる学生の街

専門書を売りたる店の姿なく駅前高層ビル群の建つ

まぶしすぎる五月の光浴びながら急いで渡る横断歩道

青空が見えないほどに茂りたる楠木の奥にある時計台

なかなかに開かぬ遮断機の前で待ちたることもモラトリアムと

公園の楠の青葉が目にしみるゆつくり歩く川沿ひの道

桟橋のボート同士がぶつかれば行き場を失ふ川べりの波

閉架式図書館は建つ新緑の五月のボート祭の川辺に

青テントあつただらうかあの時代古い記憶を取り出してみる

はるばると遠くへ来たりと思ふ日の窓辺に揺れるアカシアの花

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