![Douji_morita_face_3 Douji_morita_face_3](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/b2/1b3d756258d230739c32ba41e18720b6.jpg)
童子の書くリリックはどこか、先のライナーノーツに書かれたような物語性をもった抒情だ。セミ時雨や雨の音が、アルバムの中では効果音として欠かせないものになっている。そして、童子のリリックには、太宰治をはじめ漱石、高橋和己など文学者の名前が散見するが、それ以上にその頃のボクらがそうだったように、童子は『ガロ』や『夜行』のファンだったらしい。『夜行』の発行者で北冬書房主宰の高野慎三(かって『ガロ』の最盛期の編集者であったひと)はその著作『つげ義春1968』の中でこんな思い出を記している。
「70年代中頃に小さなライブハウスで、”ねじ式コンサート””大場電気鍍金工業所コンサート””夜行コンサート”のタイトルで、ひき語りを続ける一般には無名に近いミュージシャンがいた。ある日、突然、一面識もない彼女からりんごが一箱送られてきた。「いつもお世話になってます。勝手にタイトルを使わせてもらって申しわけありません。おわびのしるしです。つげ義春さんにも宜しくお伝え下さい」と書かれた丁寧な手紙が添えられてあった。」(高野慎三『つげ義春1968』)
なお、調べた限りでは「大場電気鍍金工業所コンサート」という名前をかぶせたライブは存在しないようである。これは高野さんの思い違いのようだが、あれば面白かったろう。いうまでもなく、その作品名もつげ義春が、みずからの少年期をかさねて描いた傑作短編のタイトルである。
森田童子がつげ義春や「ガロ」系の作家(マンガ家)のファンであろうとボクが気付いたのは、最初のアルバム『グッバイ』に収録されている「雨のクロール」という曲でである。その曲を最初に聞いた時、つげ義春の「海辺の叙景」という作品のラストシーン(見開き2頁のシーン)が思い浮かんできて仕方がなかった。
雨に君の 泳ぐクロール とってもきれいネ
雨に君の 泳ぐクロール とってもきれいネ
(森田童子「雨のクロール」)
あなたすてきよ
いい感じよ
(つげ義春「海辺の叙景」)
なお、このセリフは雨の降る中、海をクロールで泳いでみせる主人公にビーチで知り合った女性が投げるラストシーンのネームである。ちなみに、このビーチは今ボクにはとても親しい場所である千葉県大原の海岸がモデルになっている。
また、『ロフト』および『ロフト・プラス・ワン』の経営者である平野氏は、『ロフト』でおこなわれた1983年12月の伝説的な森田童子ラストライブの思い出をロフト関係のフリーマガジンにて回顧していた(『ロフト』が新宿小滝橋通り沿いにあった頃です)。
(つづく)
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