マジョルカピンク

水曜どうでしょう。大泉洋。大谷翔平。大好き

キャタピラー

2010-08-19 22:53:21 | 映画
本日はレディースデー。何か映画でも見ようと物色するものの夏休み期間ゆえシネコンはほとんど子供向けのラインナップ。よってキノで話題の「キャタピラー」を見ることにしました。
予告編の雰囲気がただならぬ感じだったので正直二の足踏んでいたのですが。

ウィークデーの夜狸小路をブラブラするのとか久し振り。
なんだかずいぶん雰囲気が変わって、カオス化しつつあるよなあ。歩いてる人、買い物してる人みんなアジアからの観光客なんだね。ここどこ?と思っちゃうくらい。全然日本語聞こえてきません。
チラシやティッシュ配ってる人たちもメイドだったり侍風だったり色んなコスプレしてんのね。秋葉原かよ。まあ活気が出るのはいいことなので…観光客の方々たくさん北海道にお金落としていってください。

さて映画のほうですが、ご存知映画界のアウトロー若松監督の問題作。昨年ベルリンで寺島しのぶさんが主演女優賞を受賞しました。
元々カルト的人気を誇る監督で、日本よりも海外での評価が高い方。
私は昨年「あさま山荘への道程」を見て大変感銘を受けました。
で、この作品なのですが…

うーん監督ゴメンナサイ正直あまり好みではなかったかもしれません。
ちょっと看板に偽りあり、というか。
反戦、反戦というわりには肝心の物語の筋にあまり戦争の悲惨さとか愚かさを感じなかったといいますか…。
いや一応描いているんですよ。わりとしつこく。
戦地で戦い四肢を失って戻った兵士を軍神として崇めることへの奇妙さを、昭和天皇の写真、勲章、新聞、当時の映像・音声などを折り込んでくどいくらいに描いてるんですが、どうも私は反戦のメッセージよりも、出征以前から冷え切っていたような夫婦関係に目がいってしまって。
どうしてそういう設定にしたのかわからないんですが、元々愛情の薄い夫婦だったならば戦争が愛し合う仲の良い夫婦を引き裂いた、という悲劇になりにくいし、私は戦争どうこういうよりもたとえ一度は愛し合った間柄でも情の消えた相手につきっきりで面倒みるなんて大変だなあ…という、夫婦の間でも介護って辛いわねってテーマに自分の中で摩り替わっちゃったんですよ…。多分こんな見方してる人あんまりいないと思うんですけど。

でまあそんなことが気になってしまったので、作品の本質に触れることができなかったかもしれません。
あと予算が少なく製作日数も短かったと聞きますが、さもありなんという描写が多かったのも事実。舞台がどの辺りかはっきりしませんでしたが、山奥の寒村でなんの訛りもなく美しい言葉使いだったのも違和感ありましたし、途中登場した村の男性に髪がパサっとした今風の方がいて「ん?」と思ったり…。
久蔵が良心の呵責に耐えかねるフラッシュバックのシーンが何度も出てきましたが、あれほどの負傷をしているのですからもっと戦地では怖ろしい思いをしているのでは。これも予算の関係でしょうが、久蔵が戦う場面が全然出てきませんでした。
やっぱり戦争映画って色々と難しいよね。


エンディングの曲が元ちとせの「死んだ女の子」でしたが、この曲はヒロシマで被災し亡くなった女の子の独白という歌詞ですよね。曲じたいは深いメッセージ性があり私も大好きなのですが、この映画とは合ってないような気がするし。

とはいえ、最近テレビ局が出資・製作した「?」な作品ばかりが目立つ邦画界ではこのような意欲作はあまり見られなくなりましたので。こういう議論を呼びそうな難しいテーマにあえて取り組み、ピンク映画出身らしい監督ならではのアプローチでこれまでの反戦映画とは違った視点から自分なりの戦争を描く。その心意気を買いたいと思います。多分終戦時子どもだった監督からしてみれば、戦地から帰ってきた傷痍軍人さんたちに色々と思うところがあったんじゃないかと思いますね。
寺島しのぶさんも難しい役柄を熱演されていました。ヌードになることをよく話題にされますけど、それだけ今の女優さんは脱ぐ人がいないってことだと思う。話題づくりのためにそういうシーンを作るのは感心しないけど、脱ぐべきときに潔く脱ぐのも女優の仕事かと。

整理番号をもらって入場を待っているとき、入れ替えで出てきた観客の中に友人Aちゃんを発見し、お互いかけより大笑い。私たち映画の好みが似ていて、よくあるんですこういう場面。後日あらためて会って映画の感想でも話し合いますかな。