京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

KIMURAの読書ノート 『世界の国境を歩いてみたら…』

2023年12月15日 | KIMURAの読書ノート


『世界の国境を歩いてみたら…』

「世界の国境を歩いてみたら…」番組取材班 著 河出書房新社 2018年

 今年も残すところ半月となりました。まず最初に年明けに掲げました『猫の本棚』(高野一江・編著 郵研社 2021年)に掲載されている293作品を全て読むという目標について。きっぱりと申し上げます、1冊も読んでおりません。すでに読了の作品を除いてということと、掲載されていない猫本は読みましたが、上記リストは全く意識できませんでした。というもの、一昨年末より関心をもった「山岳信仰」や「修験道」などに関する本を最優先に読んでしまいまして、11月末現在でそれらの読了冊数だけで100冊を超えております。お陰で上記の内容や古代日本についてはそこそこの知識を得ることができました。そして、これらについてはフィールドワークも週1で行い、これまでの人生インドア派だったために筋肉というものと無関係でしたが、とても素敵な筋肉も得ることをできました。これらについてはまだまだ沼から抜け出しそうにありません。そのような訳で目標は何処へという1年になってしまいました。

 さて今回取り上げる本は上記のことと少しだけ被るところがあります。それは「フィールドワーク」という部分。こちらはかつてBS11で放送されていた「世界の国境を歩いてみたら…」の中から、厳選した国境を取り上げたものです。それではそもそもなぜこのような作品が生まれたかということですが、まえがきによると新しい番組を企画するために議論を繰り返した時に出てきた合言葉が「他局にはない新しい視点」。その時に知り合いの制作会社から提案されたのが「国境線って報道されるのはほんの一面で、実際に行ってみるとしたたかな人たちの色々な顔が出るんです。そんな旅の企画はいかがでしょう」というものだったようです。

 私が知っている国境線というのはやはり危険地帯というものがいちばんに脳裏に浮かんできます。本書ではそのようなところも取り上げられていますが、なかなかユニークな国境線も多くそれは全く想像のできない世界でした。まず、大前提としてお伝えしておくことは、国境線は長いということ。当然のことと言えば当然なのですが、陸続きの国境を持つことのない日本では案外抜け落ちる前提だと思います。本書で取り上げられている国境でいちばん短いものが80㎞(シンガポールとマレーシア)。長いものはアメリカとカナダ。9000㎞あります。ちなみにこの国境の長さは世界一でもあります。取材もこの長さが活かせるように、何カ所かでかつ両国側から行われています。しかもこの長い国境に沿ってずっと検閲所があるわけではありません。その検閲所のないところでの両国の人たちはどのような生活を送っているのか、本書の肝はまさにそこにあります。

 陸続きの国境線と先程書きましたが、ベトナムとカンボジアの場合、東南アジア最大のメコン川が国境になっている部分があります。この部分ではベトナム側には川沿いまで家々が立ち並んでいるのに、カンボジア側は見渡す限り原野なのだそうです。また別の場所では国境を境にアスファルトと土煙の舞う地道。両国の状況が物語られています。このような感じで、南アフリカとモザンビーク、ノルウェーとスウェーデン、パナマとコスタリカ、タイとラオスなど全部で12国境線が掲載されています。

 本書を読むだけでも目から鱗のようなことばかりでワクワクします。それが目の前で繰り広げられたらより高揚し、本の中からはみ出した部分を発見した時には舞い上がってしまう事間違いなし。だから、私もフィールドワークがやめられないのよねーと自分の今の状況とうっかり重ね合わせてしまいました。ただ、残念なのはこの番組を見逃しているということ。文字でこれだけ面白いのですから、映像はもっと面白かったのではないかと思います。BS番組はこれだから侮れません。これまで以上にもっとBS番組に目を向けなければとこの年末に猛省するのでありました。それでは皆様、よいお年を!
         =====文責 木村綾子

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