京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

KIMURA の読書ノート『考古学者が発掘調査をしていたら、怖い目にあった話』

2024年04月04日 | KIMURAの読書ノート

『考古学者が発掘調査をしていたら、怖い目にあった話』
大城道則 芝田幸一郎 角道亮介 著 ポプラ社 2023年7月

現在、古代日本についてどっぷり、沼にはまっている私ですが、小学生の頃は古代日本よりは世界の古代遺跡にどっぷりとはまっていました。正確に言えば、「世界のミステリー」と銘打った本を読み漁っていましたので、その中にはマチュピチュやイースター島、イギリスのストーンサークルなどの記述があり、知らず知らずのうちにその世界を妄想していたという訳です。もちろん、現在も関心は薄れてはおりません。日本の古代遺跡のように、歩き回ってフィールドワークということができないので未だ知識ばかりを詰め込んでいますが、関連した本に出合った時は家にお連れするという状況です。という訳で、今回はまさにそれに関連する1冊です。

3人の著者は大城氏が古代エジプト、芝田氏が南米ペルー、角道氏は中国殷周時代がそれぞれ専門分野。彼らが現地で発掘調査をしている際に起こった出来事がエッセイ風に綴られています。「怖い目」というと、「幽霊」にあったとか、「強盗」にあったなどをうっかり想像してしまいますが、考古学者ならではの「怖い目」はそれだけではありませんでした。
 
例えば、かつてツタンカーメンの発掘調査に関わった人が、次々と死亡したということを引き合いに出し、現在も地下での発掘調査を行った後に1カ月熱が下がらなかったこととか、やはり地下での発掘調査で、2週間その地下にこもって人骨と共に過ごしたこと。別の現場では共に過ごしたどころではなく、地下に閉じ込められた話。笑えるけれど深刻なトイレの事情。食文化から伝統神事に関して日本ではありえないこと。何よりも海外で発掘調査を行うために申請する書類が100ページを超えること。この中には全く命にはかかわらない話題もありますが、どれもこれも考古学者にとっては「怖い目」。まさに聞いてみないと分からない話ばかりです。

しかし、最後に執筆を担当している芝田氏のエンディングはまさに身の毛のよだつような「怖い目」。未だ科学的には解明されていないことです。そのようなことって本当にあるのだと、ただただ読みながら呆然としつつ、やはり、さもありなんか……と思ったりもします。そして、私が幼き頃の読んでいた「世界のミステリー」にそれがつながっていく不思議な感覚がありました。これだからこそ、古代遺跡から関心を外すことができないのだなーと一人で納得した次第です。

本書はこれだけに特化したものではなく、全体的には世界を飛び回る考古学者の仕事はどのようなものなのかということがエッセイの中で綴られていて、そこには全く想像のできなかった世界(業務内容)が広がっております。そして、読了後に思ってしまったことは「この職業、気力、体力、時の運の3拍子揃ったものを持っていないと務まらないな」ということ。この3拍子を持ち合わせた考古学者なしには、私たちが果てしない世界の歴史を見て妄想することができないのだ思うと、ただただ頭が下がったのでありました。

=====文責 木村綾子

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« KIMURAの読書ノート『災害に... | トップ | KIMURAの読書ノート『古鏡の... »
最新の画像もっと見る

KIMURAの読書ノート」カテゴリの最新記事