『世界のアニマルシェルターが、犬や猫を生かす場所だった。』
本庄萌 著 ダイヤモンド社 2017年
現在日本では、動物の殺処分ゼロの取り組みが行われるようになり、メディアでも多く取り上げられている。しかし、動物の「保護」という観点からまだまだ後進国であるということも耳にする。実際、私自身国内でのボランティア団体や行政の動きを見聞きすることはあっても、世界の国々ではどのような活動が行われているのか知る機会がなかった。そして今回出会ったのが本書である。
著者は親の仕事の関係で高校時代をイギリスで過ごしている。その時のアニマルシェルターでの職業体験で衝撃を受け、アメリカのロースクールで動物法を学び、現在動物法学者として日本で研究を続けている。その筆者が日本を含む世界8か国の動物保護シェルターを巡り、各国の動物に対する法律も含め、現在の動物の保護状況を報告したものが本書の内容となる。
・アメリカでは、ほとんどの州が動物虐待を厳然たる犯罪として対処しているということ。
・イギリスには、闘犬等に使われてきた犬種の飼育を制限する法律があること。
・ドイツでは、動物の法的地位を改善し、単なる「物」とは違うものであることを明記したこと(日本では動物は「物」として扱われ、動物に傷つけても法的には「器物破損」となる)。
・ロシアでは、野良犬と人が共生しているということ。
・スペインの北東部では「伝統は動物虐待を正当化しない」という理由で闘牛を禁止する法律ができたということ。
・ケニアでは国際法で禁止になっている象牙の取引に関し、かつて合法で日本と中国に1度だけ許可が下りて以降、その商品が合法か違法か判別不可になり混乱状態になっているということ。
・香港では、欧米の文化や思想とアジアの文化や思想を織り交ぜながら、動物との関わりを探っていること。
これらを踏まえた上で、最後に日本の現状を伝えている。もちろん、日本を除く7か国の話題はこれだけでなく、保護シェルターのこと、更には各国のマイナスな部分も詳細に記されている。しかし、そのマイナスな部分を知っても、日本が動物保護の観点から「後進国」と言われてしまう状況が少しは分かるのではないかと思う。各国の保護シェルターは施設も充実しているが、何よりも満床ではないことがいちばんの驚きである。その国の人たちの「意識」も高いということもあるが、何よりもその法律が抑止力になっているとも感じた。今、日本でも動物は「ペット」というよりも「家族」という意識を持っている飼い主が多くなったと聞く。それならば、家族の「人権(動物権?)」を守るためにも、もう少し踏み込んだ制度をの確立化が必要なのではないか。そしてやはり飼い主は家族として動物たちを育む「責任」は最低限の部分であり、当然の義務であると断言できる。平成27年度、日本国内で殺処分された犬や猫は約8万匹。この数字を是非覚えていて欲しい。
=====. 文責 木村綾子