京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

KIMURAの読書ノート[パパは脳研究者]

2018年04月16日 | KIMURAの読書ノート

『パパは脳研究者』
池谷裕二 著 クレヨンハウス 2017年
 
著者が我が子の0歳から4歳までの子育てをエッセイとして綴ったもの。しかし、これが一般的にイメージする子育てエッセイではない。著者の職業はタイトルにもあるように、脳研究者。脳の成長や老化について探求している。そのため、「子育て」というよりは我が子の成長発達を記録しているもので、更にその発達が脳のどの部分が関わってきているかという解説書となっている。そのため、随所に出典も明記されており、より詳しく知りたい人の道しるべにもなっている。だからと言って堅苦しい学術書ではない。もともとこれは子どもの暮らしを応援する雑誌「クーヨン」に連載されたものを加筆、改訂したもの。「我が子は可愛い」、「我が子は天才」、「我が子がこの世でいちばん」なのは、当然と
いう、親バカ丸出し上等の、軽快なタッチで記されている。それと科学者視点の融合。なかなか類似本を見かけることはないだろう。その中で、科学者視点に関して、以下に紹介する。
 
例えば、子どもが生まれて親が戸惑うことの一つに、「寝ぐずり」がある。ともかく眠たくなると泣いて、寝かかったかなと思って布団に下すとまた泣きだし、結局ずっと抱いたままというのはよくある話。実際私もかつてこれに悩まされてきた経験がある。これは著者によると、赤ちゃんにとっての睡魔は不快感覚とのこと。眠っているか起きているかはっきりしない、不安定な状況ともいえるようで、これが大人のようにふわふわした気持ちのよい感覚になるのは、経験によって快楽が強くなっていくのだそうだ。また、他にもこのようなことが記されている。脳が何を知識として覚えるかは、それを受け入れる準備があるかどうかということにかかっているらしい。つまり本人が興味をもたない限りいくら働
きかけても学習は進まない。これを専門的には「準備された心」というそうである。このことは、何に、いつ興味を持つかは一人一人異なり、他の子と学習を比べる必要性はないことを示している。実際に著者のお子さんは他の子よりもアルファベットに興味を持ち、あっという間に覚えてしまったが、ひらがな、カタカナは逆に他のお子さんよりも覚えるのが遅かったそうである。
 
著者によると脳の正しい使い方は「予測して対処する」ということなのだとか。高いところにお菓子があった時、子どもは椅子を持ってきて、それを取ろうとする。椅子を持ってくるとお菓子に手が届くと「予測」して、実践的に「対処」する。これば「予測して対処する」。人は意識をしないでこれら一連の流れを行っているが、ここに至るまでの脳の発達過程を1か月ごとの月齢でどのように変化しているかということを知ると、正直子育て以前に、自分の「脳」そのものに敬意を表してしまう。そして、我が「脳」ながら、全く独立した物質のようにも思えてくる。
 
と同時に、我が子を育てている時、このような本が存在していたらと思う。あの時悩んだ一つ一つの出来事が、ここでは「脳」の発達過程での一つの現象として記されている。それを知っていたら子育てのイライラを「脳」が発達していると捉えて少しは気楽に、対処できたかもしれない。それ位、痒い所、いや「辛いところに手が届く」1冊である。そして、本書は現在の育児書のバイブルになること間違いないと感じた。
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文責 木村綾子



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