京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

『ダンナ様はFBI』

2015年01月03日 | KIMURAの読書ノート

 KIMURAの読書ノート 2015

『ダンナ様はFBI』
田中ミエ 著 幻冬舎 2008年

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
新春第一弾は皆様に笑っていただこうと思い、本書『ダーリンはFBI』を紹介します。

本書が刊行されたのは、今から6年前のことですが、文中の出来事はバブル期前の話。著者がダーリンとなるFBIのジムと出会いから、セミリタイアして日本にやって来て日本で送る結婚生活を中心に綴られています。

実際、私自身、FBIというのはどこかフィクションの世界という気がしたのですが、著者が綴ってくれたことで実在するのだというのが正直な感想。そして、FBIに勤務するということはその全てがFBIという職業病に侵されるのだということを爆笑しながら知ることとなりました。

<職業病その1>
相手を口説く心理作戦。著者を口説くのに2年以上の時間を費やすダーリン。著者が返信しなくとも月に1回、アメリカからエアメール。

<職業病その2>
新居にはプロの錠前師。ダーリンの言葉を借りると日本の鍵はイージーらしい。これでは安全は確保できない。ということで日本でただ一人という存在の錠前師を見つけ出し、新居は泥棒が尻尾を巻いて逃げるほどの代物で守られることになった。

<職業病その3>
情報はそのまま捨てない。紙をシュレッダーにかけることはもとよりCDをはじめとしたプラスティックを砕くシュレッダーを探す。21世紀の今ではこのような機材はあるが、当時日本にはそのようなものはなく、それを知ったダーリンの一言。「その場でCDを処分するときは、漂白剤に浸けよう」

<職業病その4>
レコードから麻薬の匂い。著者がコレクションしていたクイーンやレッド・シュッペリンなどなど。彼らはFBIの麻薬犯罪者リストに載っているらしい。そのような彼らのレコードを持っていることすら麻薬に近づく第一歩。ということで著者の気持ちをよそにさっさと処分したダーリン。

<職業病その5>
風船が割れただけで休まらない心。常に拳銃を持った職業だったため、「パアンッ」という大きな音が響いただけで、目を吊り上げて、血相を変えリビングに走ってくる。言うまでもなく家の中での大きな音は厳禁となった。

と、職業病だけを取り上げてもかなりの量になりますが、そのほか、FBI直伝のプロファイリングの仕方を著者の仕事に結びつけるように伝授した話も量的にも内容的も満足させてくれるものとなっています。実際にそれを伝授するためにお茶1杯で夫婦3時間喫茶店に張り込んでみたり、著者にスカートをはいて自転車に乗ることを禁じてみたりする場面など、具体的に描写されていますが、とりわけダーリンが至って本気なだけに、逆にどうしても吹き出さずにはいられません。FBIならではの大真面目さとそれを職業柄受け入れてしまう著者の受け皿の広さと掛け合いがより笑いをもたらしています。

しかしこのように終始笑いを与えてくれる本書で、ダーリンは常に「20年後日本はアメリカのような犯罪が増えることは間違いない」と何度も語っています。これを語っていたのが、前述したようにバブル直前。そしてその20年後、予言通りになりつつあります。恐るべしFBI。

爆笑しながらも、ダーリンの一言一言に止まりながら今の日本を見つめてみるもよし、プロファイリングを学んで、自分の仕事に活かすもよし。
2015年という1年を是非本書からスタートしてみてはいかがでしょうか。

                                         文:木村綾子
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