大寒の朝にきくのは、ホ長調のヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ(BWV1016)。ヨーハン・マッテゾンによれば、「ホ長調は、絶望に満ちた、あるいは死ぬほどの悲しみを比類なくうまく表す」(『新設のオルケストラ』山下道子訳)ということですが、「絶望に満ちた」情感というほどのものは、このソナタではほとんど感じられません(憂いのあるアダージョ・マ・ノン・タントは嬰ハ短調)。イザベル・ファウストとクリスティアン・ベザイデンホウトの演奏は、じつに美しく、深みがあり、こうしたデュオによる未来への「希望」に満ちあふれています。
CD : HMM 902256.57(harmonia mundi)