聖金曜日にきくのは、ヴンダーカンマーたちによる「ヨハネ受難曲」(BWV245)です。この受難曲には複数の稿が伝承されており、ヴンダーカンマーの録音は1725年上演の第2稿にもとづくものです。第2稿については「礒山雅『ヨハネ受難曲』(筑摩書房)」の第3部第10章「《ヨハネ受難曲》第二稿」に解説があり、興味のあるかたは一読をおすすめします。ヴンダーカンマー(驚異の部屋)は2014年に結成されたアンサンブル。ここでは12名というごく小編成(通奏低音をのぞけばパート1名)で録音にのぞんでいます。合唱(OVPP)、福音史家とイエス、レチタティーヴォとアリアは、2018年に結成されたエルプグートの歌手たち6名(一部の曲でテノール歌手が交代)が歌っています。こうした編成からもうかがえるのですが、演奏はじつにこぢんまりとしたもので、迫力ある響きを期待すると、失望してしまうかもしれません。しかし、ヴンダーカンマーたちの音楽はとても内省的といえ、これはこれでちゃんと成立しているといえるでしょう。録音は2020年です。
CD : COV 92007(COVIELLO CLASSICS)