現在出張中ですので、例によって本日の1枚は休載させていただきます。
しかし、それにしても、おそらくは電力不足の所為でしょうか、出張の移動も様々な遅れがありますねぇ。
こんな事は被災地で艱難辛苦を重ねている皆様の事を思えば、情けない泣き事だと思いますが、今日は特に金融関係のトラブルも重なり、ちょいと難儀しております。
うむ、全くお恥ずかしいかぎり……。
明日は戻りますので、よろしくご理解願います。
現在出張中ですので、例によって本日の1枚は休載させていただきます。
しかし、それにしても、おそらくは電力不足の所為でしょうか、出張の移動も様々な遅れがありますねぇ。
こんな事は被災地で艱難辛苦を重ねている皆様の事を思えば、情けない泣き事だと思いますが、今日は特に金融関係のトラブルも重なり、ちょいと難儀しております。
うむ、全くお恥ずかしいかぎり……。
明日は戻りますので、よろしくご理解願います。
■Argent In Deep (Epic)
1960年代後半より、ロックもLPで聴くことが主流になり、つまりはシングルヒットが出せなくとも優れたアルバムを作っていれば、そのミュージシャンは大物と認められたのですから、まさに人生楽ありゃ、苦もあるさっ!
本日ご紹介の1枚は、基本的にはアルバムで勝負していたアージェントの最高傑作と認知される人気盤と書きたいところなんですが、天の邪鬼なサイケおやじにとっては、アージェントが大好きなバンドだけに、可愛さ余って憎さ百倍というところでしょうか……。
A-1 God Gave Rock And Roll To You
A-2 It's Only Money Part 1
A-3 It's Only Money Part 2
A-4 Losing Hold
B-1 Be Glad
B-2 Christmas For The Free
B-3 Candles On The River
B-4 Rosie
これが世に出た1973年春といえば、アージェントが「Hold Your Head Up」のシングルヒットを放ち、同曲収録のアルバム「オール・トゥゲザー・ナウ」も広く一般のロックファンから認められた後ですから、ようやく苦節から抜けだしたグループの意気込みが半端ではない時期でした。
しかしロッド・アージェント(vo,key)、ラス・バラード(vo,g,key)、ジム・ロッドフォード(b,vo)、ロバート・ヘンリット(ds,per) という4人のバンドメンバー、及びプロデューサーとして関わっているゾンビーズ以来の盟友たるクリス・ホワイト、それぞれの音楽性が、それゆえにバラバラになりかけていました。
もちろんそんな内部事情をサイケおやじが知ったのは、かなり後の事なんですが、そう思って聴けば、アルバムを構成する各楽曲の要素や仕上がりが纏まっていません。
結論から言えば、初めてこのアルバムに接するお若い皆様には、EL&Pとクイーンの折衷スタイルのように感じられるかもしれません。
しかし、決して安易なパクリや物真似ではなく、それこそがアージェントならではの個性だと主張するのは、贔屓の引き倒しでは無い! そう、サイケおやじは確信するのです。
例えば後にキッスがカパーしたことでロック史に残る名曲となった「God Gave Rock And Roll To You」は、いきなりの大団円的な名演でもあり、厳かにして胸が熱くなるようなロック的メロディ展開と欧州教会音楽の素晴らしき融合♪♪~♪
本当ならばアルバムのクライマックスに配置されて然るべきだと思うほどですが、それをあえてド頭に持ってきたところに、このアルバムの信憑性が疑われるほどです。
なにしろ、続く「It's Only Money Part 1」が如何にもパワーポップ全開のハードロックながら、その変奏とも言うべき「同 Part 2」では、なんとビートルズのモータウンカパー「Money」のリフとアレンジを借用する稚気やフュージョン前夜祭のようなギターアンサンブル、そしてキーボードのクールなアドリブがニクイばかりなんですねぇ~♪ しかもそれが良いところでフェードアウトし、矢鱈にポップなコーラスパートが追加されてフェードインしてくるという、洒落になっていない裏ワザがっ!?!?
ですからA面の締め括りに置かれた「Losing Hold」の勿体ぶった様式美が、なんだかなぁ……。正直、出来の悪いゼップのようでもあり、クイーンの亜流のようにも聞こえてくる始末なんですが、もちろんそれはアージェントの先見性の表れが、見事に裏目に出たという気がしますし、極言すれば同時期のイエスが作ったデモテープ? と言われても納得するかもしれません。
ところがB面トップの「Be Glad」になると一転、これぞっ、見事なアージェントロックの代表格に仕上がっている事実には溜飲が下がります。そこには強い存在感を示すピアノとオルガン、情熱のボーカル&コーラス、さらに多彩なビートをミックスさせるドラムス&ベースという、まさに当時の最先端が主張され、これをEL&Pの二番煎じと断じるのはバチアタリだと思いますよ。
しかも、これはサイケおやじの妄想ではありますが、クイーンだって、きっとこれを聴いていたに違いないと!?
また「Candles On The River」が、これまた強力なキーボードロックの決定版で、重厚なリズムとビートを背景に暴れるオルガンや巧みに組み立てられたギターアンサンブル、そこへ同時進行する熱血のボーカルと華麗なコーラスは、EL&Pと似て非なる素晴らしい世界じゃないでしょうか。この手が好きな皆様ならば、必ずや納得させられる名演でしょう。
しかし、ここまでの流れの中には既に述べたように、メンバー各人の目指す音楽性の違いが微妙ですが明確に浮かび上がっているように思います。
例えばラス・バラードはパワーポップ、ロッド・アージェントはプログレ&ロックジャズ、またジム・ロッドフォードはフュージョンであり、ロバート・ヘンリットはハードロック&ジャズという感じでしょうか。
もちろんそれらがジコチュウで表現されているわけではなく、ちゃ~んとバンドとしての機能の中に活かされているのは言うまでもありませんが、それを担うはずのプロデューサーのクリス・ホワイトが前作アルバム「オール・トゥゲザー・ナウ」のヒットで妙に欲を出したのかもしれません。サイケおやじには、このLPの曲の並びが、どうにもしっくりこないんですよねぇ……。
それは相当にシブイながらも、実は素敵なメロディが秀逸な「Christmas For The Free」というクリスマスソングの隠れ名曲が、その存在感を強くアピール出来ないという事実にも顕著だと思いますし、オーラスの「Rosie」が陽気で楽しい分だけ、逆に煮え切らないというあたりが、実に勿体無いと思うのです。
そして個人的には「God Gave Rock And Roll To You」をメインに据えたトータル的な構成こそが、アルバム中心のロック時代に相応しかったんじゃないか?
このLPを聴く度に、それほど不遜な事を考えてしまいます。
しかし、これは絶対に駄作という事ではありません。
同時代に作られた夥しいロックアルバムの中で、プログレやロックジャズに特化しなくとも、なかなか立派な作品であることに違いはないのです。ただし、そこには思い込みによる好き嫌いが確かに存在する!?
そんな屁理屈が強く滲み出る名盤(?)だと認識するだけなのでした。
■ひなぎくのジェーン c/w 希望の明日 / America (Warner Bros.)
もはや災害を超えて有事ともいえる現在の日本……。
そこで人に安心を与えることの難しさを痛感しているのは、サイケおやじばかりではないでしょう。
連日、テレビに登場しては煮え切らない談話を出す官房長官は、なんとか無難な言葉を選ぶことに腐心するだけという、その全く国民に安心感を与えない喋り方がせつなくなるほどです。
基本的に、この人は所謂「ムイテナイ」んでしょうねぇ、こういう役職が。
それは常にオドオドしている現総理大臣も同じだと思うんですが、不幸中の幸いというか、この人は以前から国民に見放されていた分だけ、諦めの境地というところかもしれませんね。
さて、そこで本日の1枚は、せつない歌詞と胸キュンメロデイが見事にジャストミートした和みのパラード盤♪♪~♪ 1975年からのロングセラーヒットになった、まさにウエストコーストポップスを象徴する名曲だと思います。
説明不要かもしれませんが、歌っているアメリカは当時が全盛期だった3人組で、例の「名前のない馬」での大ブレイク以降、英国風味の西海岸ロックとでも申しましょうか、明らかにCSN&Yの影響下にあるアコースティックなギターワークとコーラスにビートルズ系のメロディを巧みに融合させた、実に好ましい音楽性を推し進めていました。
そして「ひなぎくのジェーン / Daisy Jane」は、通算5作目のアルバム「ハート」のA面ド頭に収められたほどの秀逸な仕上がりでしたから、シングルカットされても予想どおりに大ヒットしたというわけです。
ちなみにプロデュースがビートルズを担当していたジョージ・マーティンというのも要注意! しかもサンフランシスコでレコーディングセッションが行われたのですから、このあたりも前述したアメリカの音楽性の秘密が解き明かされるキーポイントかもしれませんねぇ。
なんともせつない響きのピアノに導かれ、気分はロンリーで歌い出されるメロディが爽やかなコーラスで彩られる流れの中、少しずつ力強いビートが醸し出されていく展開は、厚みのあるストリングスやバイオリンの間奏を得て、本当に忘れ難い安らぎを表出させるのですから、たまりません。
彼女は本当に僕を愛しているのだろうか?
たぶん愛している
そうさ
ここの空は明るいから
何もかもうまくいくさ
サビで歌われる、この詞の刹那的な希望は、何時までも忘れられないものがありますよ。
その意味でB面に収録された「希望の明日 / Tomorrow」も、実はちょいと哀しい人生の機微を歌っているのですが、前向きに明るい曲の展開が心地良く、不思議な安心感を与えてくれるのですから、これはポップス史の中では隠れ名曲のひとつになるんじゃないでしょうか?
ご存じのとおり、この2曲が収録された前述のアルバム「ハート」からは、ほとんどジョージ・ハリスン? という「金色の髪の少女 / Sister Golden Hair」が特大ヒットになっていますが、流石はジョージ・マーティンというか、アルバム全体に色濃く滲んだビートルズっぽい味わいが、しぶとくアメリカ西海岸ロックに融合したのは、このシングル盤両面の2曲が象徴的だと思います。
そしてなによりも、聴いていて与えられる絶妙の安心感♪♪~♪
こういう基本的に素晴らしい部分が、今の世界には欠けているような気がしてなりません。
地獄のような被災地のラジオからこの曲が流れたら、少しは和みが提供出来るでしょうか……。なんか、リクエストの葉書でも書きたい気分であります。
■輝きの中から / くらもと恵子 (日本コロムビア)
日を追う毎に悲惨な現状が浮かび上がる大震災の被害……。
全く予断を許さない事態が続出しておりますが、運良く被災を免れた我々にしても、日々の生活や今後の状況も先が見えません。
さて、そんな中でサイケおやじは、この天災の数日前に被災地の人から某ネットオークションで落札したブツの行方を気にするという、本当に我ながら姑息で卑小な思いに囚われている情けなさです。
正直、それなりの高額代金を支払い完了済みでありながら商品は届かず、もちろん出品者との連絡がとれるはずもありません。
潔く諦めるのが人の道だと、分かっているのですが……。
こんな事を書いている自分が、せつなくなるばかりです。
さて、そんな気分の中で思い出したのが本日ご紹介のシングル盤で、これも以前、東北地方に在住の某コレクター氏から譲り受けた1枚です。
主役のくらもと恵子は今日、ちょいと忘れられた存在かもしれませんが、昭和40年代後半にはモデルやタレントとして活動しており、大きな目が魅力的で、少し新藤恵美に似ていた人でした。
作詞:羽切美代子、作曲:穂口雄右、そして編曲:高田弘によるこの曲は、昭和48(1973)年に発売されたもので、「どうにもとまらない」以降の山本リンダのセンを狙ったものと思われるスピード感が爽快な歌謡ポップスです。
タイトなリズム・セクション、歯切れの良いブラス、泣きまくるギター、そしてツボを外さないメロディ!
彼女の歌声はやや金属的で好き嫌いが分かれるところですが、これもまた様々な洋楽のエッセンスと歌謡曲本来の味が非常に上手くミックスされた、どの真似でもない昭和歌謡曲の最高の高みに達している名曲と言えましょう。
ちなみに曲を書いた穂口雄右は、現在再評価されているGSのアウト・キャストでキーボードを担当していた人で、その時は高校生でした。グループ解散後の19歳の時からスタジオ・ミュージシャンとして活動し、さらに作編曲家への道を歩みましたが、発表する作品はいずれもヒット曲マニアの琴線を刺激するものばかりで、例えば「年下の男の子 / キャンディーズ」「ポケットいっぱいの秘密 / アグネス・チャン」等があります。
また、穂口雄右と共に活動していたスタジオ・ミュージシャンには水谷公生(g)、後藤次利(b)、林立夫(ds)等々の名手が揃っており、この曲のバックにも彼等が参加している可能性が大きいと推察される事から、このシングル盤も相当な人気があって、中古盤市場では高値安定!?
それが前述したように、ひょんな事から知り合ったコレクター氏から超安値で譲られるという縁が出来たのはラッキーでした。
ただし残念ながらというか、当然ではありますが、B面が何かの薬品による酷いダメージで、全く針も落とせないという状態なんですよ。
でも、それだって人の世のあれこれのひとつかと思います。なによりも初対面の時からウマが合ったんですよねぇ、件のコレクター氏とは。忽ちに友人関係となり、ブツのトレードばかりでなく、家族ぐるみで付き合うようになりました。
それが昨年来、病の床にあって入院中と知ったのは、今年の年賀状でしたから、もしやこの大災害で……。
そんな悪い予感を打ち消す連絡手段も無く、そんなこんなで本日も暗い話になってしまいましたが、くらもと恵子の「ヘソ出しルック」に免じて、ご容赦下さい。
少しでも良い方向へ事態が推移するように願うばかりです。
■The Unissued Japanese Concerts / Miles Davis Quintet (Domino = CD)
あまりにも惨い天災から、本日の1枚を更新する気力も失っていたんですが、このプログを通じて繋がっている皆様がいると信じての再開です。
とにかく今は前を向いていきましょう!
さて、そこで権利関係は、どうなっているのかっ!?
もはや分からなくなっている事が逆に大歓迎というマイルス・デイビス関連の発掘音源復刻の中でも、かなり嬉しいのが本日ご紹介の2枚組CDです。
なにしろ昭和39年というよりも、1964年に初来日した時のライプ音源ですからねぇ~♪ ご存じのとおり、この時の巡業ステージからは公式盤「マイルス・イン・トーキョー」が既に発表され、所謂フリーブローイング期の記録としても人気が高い1枚になっていました。
それはサム・リバースという、ちょいとフリー系のテナーサックス奏者が参加している事に加え、如何にも聴衆を前にしたサービス満点のプログラムとモダンジャズ最前線の意気込み、さらにマイルス・デイビスという大スタアの存在感が圧倒的に堪能出来るからでしょう。
つまりモダンジャズが、まだまだリアルタイムで最高にイカシた音楽だった証でもあり、見事な緊張と緩和が楽しめる至福の時間が提供されているのですから、ジャズ者ならば殊更、迷う必要もないと思います。
ちなみにメンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、サム・リバース(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という、今では夢のクインテットですから、生演奏に接したファンには嫉妬さえ覚えるのが正直な気持!
☆1964年7月12日、日比谷野外音楽堂で録音 / CD-1:約40分36秒
01 Autumn Leaves / 枯葉
02 So What
03 Stella By Starlight
04 Walkin' into The Theme
まず、気になる音質は良好です。
ただし、ちょいとベースが引っ込み気味ですし、ドラムスの存在感も薄めなのが残念ではありますが、そこは再生装置で低音を補強すればOKでしょう。
そして逆にその分だけ、トランペットとテナーサックの音の強弱がクッキリと際立ち、またピアノも音源の出所を考慮すれば、なかなか綺麗に録れていると思います。
ちなみに発売元は「Unissued」なんて商品タイトルを強調していますが、ご推察のとおり、これまで度々ブートで流通していたものが、今回はリマスターされてのハーフオフィシャル化というところでしょうか? それゆえに聴いていても、妙に安心感を覚えます。
で、肝心の演奏は、やはり凄いの一言!
もちろん初っ端の「枯葉」はマイルス・デイビスならではのミュートが、やっている事はハードバップでは無いにしろ、やはり嬉しい限りの思わせぶりを披露していますよ♪♪~♪ それに呼応するリズム隊も阿吽の呼吸ですが、続くサム・リバースの硬質のテナーサックスが、これまた強烈です。なによりも音色がダーク&ハードですし、ツッコミ鋭いフレーズで疑似フリーの領域に踏み込みながら、しかしアドリブ構成は新主流派という好ましさですからねぇ~~♪
あぁ、もう、この1曲だけでアンプのボリュームをグイグイと挙げてしまう事、必定です。
そして後は例によって激烈な「So What」から静謐で力強い「Stella By Starlight」、さらに追い撃ちとしての「Walkin'」が、まさにモダンジャズ黄金時代を今に蘇らせてくれますっ!
毎度お馴染みのマンネリフレーズで押しまくるマイルス・デイビスは言わずもがな、アグレッシヴで深淵な企みも秘めた陰湿さが魅力のサム・リバースとリズム隊の奇妙(?)なコンビネーションも、実にジャズそのもののスリルに満ちていて、中でもこの日のハービー・ハンコックは特に冴えている感じがします。
また現状突破を狙うが如きトニー・ウィリアムスの爆裂ドラミングには、思わず血が騒ぎますし、ルートの音に忠実でありながら、けっこうヤバイ事をやらかしているロン・カーターも流石でしょうねぇ~♪
こういう子分達を持ったマイルス・デイビスは、幸せな親分だと羨ましくなります。
☆1964年7月15日、京都丸山音楽堂で録音 / CD-2:約45分32秒
01 If I Were A Bell
02 Oleo
03 Stella By Starlight
04 Walkin'
05 All Of You
06 Seven Steps To Heaven / 天国へ七つの階段
こちらもブートとしては以前から有名音源のひとつでしたが、とにかく良好な録音状態の中にギュ~~っと凝縮されたパワフルなジャズ魂が凄まじいかぎり! それはベースの存在感が強く、また我儘な自己主張を徹底的に演じているドラムスも、相当にしっかり録音されている事にポイントがあります。
ただし、それゆえにトランペットなテナーサックスが時折に音割する瞬間もあるんですが、それを言うのはバチアタリだと思いますし、個人的には、これほど迫力のある音で4ビート期のマイルス・デイビス・クインテットを楽しめるのは、幸せに他なりません♪♪~♪
もちろん演奏も充実と熱血や静と動の対比が鮮やかすぎるほどの出来栄えで、「If I Were A Bell」では新感覚とはいえ、積極的な歌心を披露するマイスル・デイビスに対し、あくまでもアグレッシヴな姿勢を崩さないサム・リバースが激ヤバですよ。
ちなみにこの音源の欠陥として、前半でピアノがオフ気味という現実があり、ここでもかなり良いアドリブを演じているハービー・ハンコックが……。
ただし演奏が進むにつれ、それは改善していきますし、逆にベースとドラムスが何を目論んでいるかが明確になっていますよ。そして、そういうラフな質感が強い録音故に、客席の拍手歓声等々も生々しく、また演奏そのものの躍動感やエグ味がリアルに迫ってくる事実も結果オーライ!
それはビバップからストレートに受け継いだ過激性が全開の「Oleo」、そしてトニー・ウィリアムスが大爆発する「Walkin」あたりのアップテンポ演奏に特に顕著で、中でもほとんどヤケッパチなマイルス・デイビスが凄すぎる後者のアドリブには熱くさせられますねぇ~~♪
もちろんリズム隊の容赦無い活躍とサム・リバースの突撃精神もテンションが高いわけですが、一転してじっくり構えた「Stella By Starlight」の充実性、あるいはマイルス親分が十八番の思わせぶりが全開する「All Of You」の深い味わいと醸し出されるジャズ的な熱気は唯一無二といって過言ではありません。
あぁ、こういう演奏に素直に夢中になれる自分に幸せを感じます。
本当に生きている事に感謝するばかりですよっ!
そしてオーラスには、なんと気になる「天国へ七つの階段」が配置されているんですが、ネタばれ覚悟で結論を述べれば、最高にカッコ良いテーマアンサンブルからマイルス・デイビスのアドリブとトニー・ウィリアムスのドカドカ煩いドラムソロを経た、実に短いテーマ的な演奏なのが勿体無いです。
ただし編集疑惑も濃厚なので、このあたりの真相は次回のお楽しみでしょうか。
ということで、これは即ゲットするしかない素晴らしい音源集と断言させていただきます。
もちろん全ての面で最高の音質とは申しませんが、ジャズ者ならば充分すぎるほどに許容出来るはずですし、何よりもこれほどの演奏に接することが出来る幸せを逃すことはありません。
迫力と密度の高い演奏、沸き上がる拍手歓声、そしてマイルス・デイビスのひとつの存在証明とも言える例の指パッチン♪♪~♪
注目されるサム・リバースの参加は、この巡業前後だけのようで、ご存じのとおり9月からはウェイン・ショーターが正式加入した事により、所謂黄金のクインテットが現出するわけですが、サム・リバースの存在価値は決して穴埋め的なものに終っていません。
それはウェイン・ショーター在籍時のライプ音源と比較しても、その時は些か翻弄される瞬間も否定出来ないリズム隊が、サム・リバースとは対等の関係というか、まさに丁々発止! 時にはフリーの領域にまで発展する演奏は、そのギリギリのところで踏み留まるスリルも絶大で、まさに感度良好ですよ。
おそらくは将来、新裏名盤となることは必至だと確信しています。
大災害発生からニュースの全てが悪夢のような事象の連続ですねぇ……。
被災された皆様の胸中苦渋を思えば、無事でいる自分に何か出来る事はないか!?
そう思わざるをえません。
実はサイケおやじの母の叔父さん一家が宮城県で消息不明になっていて、電話が繋がらないだけだったら、何とかなると言い聞かせるばかり……。
また仕事関係先とも連絡不能の所が幾つかあります。
そして思い出すのが阪神淡路大震災……。
告白すると、その時にサイケおやじは危うく難を逃れています。
それはあの惨劇の前日、関西に出張したサイケおやじは、予定よりも早く仕事が終了したので、学生時代からお世話になっていた神戸在住の先輩を訪ねました。
もちろん、翌朝の大地震なんて、全く想像もしていませんから、先輩とご家族から暖かい歓待を受け、その時の良い雰囲気は、今もって忘れていません。なんと先輩の奥様から今夜は泊って、ゆっくりして欲しいと言われていたほどなんですが、基本的に仕事に厳しい先輩からは、余裕が出来たら早く戻って、出張仕事を纏めるように命令されたのです。
つまりサイケおやじは、それで夜行バスに乗り、神戸を後にしたのですから、翌朝の悲劇には、もう、絶句です。
しかも先輩のご一家はモロに被災して、結局、生存出来たのは当時小学生だったお嬢様ひとりでした。
あぁ、サイケおやじは完全に死に損なったのです。
もし先輩の言うことを聞かず、その夜に泊っていたら、今、こうしている事は決してなかったでしょう。
なにか非常に責任を痛感しましたですねぇ……。
そこで自分に何か出来る事のひとつとして、まずはお金を工面して、生き残った彼女に渡そうと思い、女性ボーカル物のレコードを6百枚ほど処分しました。
ちなみに当時のサイケおやじは、セクシージャケット物も含めて、女性ボーカルの天国と地獄を彷徨していたのですが、なんとか足を洗えたのも、それがきっかけでした。
またレコードを手放す事については、知り合いのコレクター氏に事情を相談し、海外の某ディラーに委託扱いながら先払いという、なかなかの物分かりの良さに助けられましたですね。
ということで、これはサイケおやじの悲しい話のひとつにすぎませんが、今回の大災害でも、なにか出来れば……。
そう、心から思っています。
いゃ~、とんでもない災害となりました。
被災された皆様には心からお見舞い申し上げます。
情報の収集も必要です。
ケイタイは繋がらないけれど、ネットと公衆電話は生きています。
とにかく今は落ち着いて行動しましょう。
■I Feel Fine c/w She's A Woman / The Beatles (Capitol = US 7'single)
言わずもがな、ビートルズの代表曲のひとつである「I Feel Fine」のアメリカ盤シングルなんですが、掲載したピクチャースリーヴであるがゆえにゲットした1枚です。
しかし、これが昨年夏であったにもかかわらず、手元に届いたのが、なんと昨日だったんですねぇ。
実はアメリカのディラーからネットで買ったんですが、どうやら送られてくる途中で事故ったらしく……。
そういうトラブルは、まあ、この世界では珍しくないんですが、それが今回は驚くなかれ、スペイン経由でサイケおやじのところにやって来たんですよっ!?!
それは同封されていた手紙で知った事で、迂回送付してくれたのは、もちろんスペイン人のコレクターですが、間違えて自分のところへ送られてきたブツを面倒がらずに正当な受取人へ渡そうとする努力に感謝感激でした。
う~ん、これが自分だったら出来るかなぁ……。
もちろん速攻でお礼のメールは出しておきましたが、思わずそんな事が心に浮かびましたですねぇ。
とにかく、ありがとう♪♪~♪
そして長い旅をしてきたレコードの数奇な運命(?)に乾杯♪♪~♪
こんな暗い時期でも、久々にホンワカした気分にさせられました。
■A New Perspectiver / Donald Byrd (Blue Note)
結局、サイケおやじがジャズを本格的に聴くようになったのは1970年代以降ですから、その黄金時代のリアルな実相は知る由もありません。
ですからジャズ喫茶で様々なアルバムに接したり、スイングジャーナル誌等々を頼りに鑑賞を積み重ねる他は無かったのですが、既にチャーリー・パーカーは不滅の天才であり、ジョン・コルトレーンは神様と崇められ、マイスル・デイビスが帝王として君臨するそこには、鑑賞時間が増えるのに比例して、もっと日常的なプレイヤーに惹かれる自分を感じるようになりました。
そして決してガイド本にも掲載されず、またジャズ喫茶でも鳴らされることの無い作品に興味を抱き、ましてや自分がお気に入りのミュージシャンでも参加していたら、その邂逅はひとつの幸せだったんですねぇ~♪
例えばドナルド・バードが1963年に制作した本日ご紹介のアルバムは、、これがなかなかの快楽的な意欲作でありながら、何故か我国では無視され続けた現実があります。
それはドナルド・バード(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ケニー・バレル(g)、ブッチ・ウォーレン(b)、レックス・ハンフリーズ(ds)、ドナルド・ベスト(vib) という素晴らしいメンバーによるセッションでありながら、全篇に男女混声のコーラスが大胆に使われ、また作編曲にデューク・ピアソンが大きく関わったという、ある意味でのシャリコマ感覚が、聴かず嫌いの根本なのかもしれません。
もちろんご推察のとおり、サイケおやじは大好きなハンク・モブレー目当ての後追い鑑賞から、このアルバムの虜になったのです。
ちなみに録音は1963年1月12日とされていますが、なんとなくテープ編集やダビング作業もあったと推察するのは、全くの独断と偏見である事をお断りしておきます。
A-1 Elijah
針を落として最初に聞こえてくるのが既に述べたとおりの男女混声コーラスによる、ちょいと下世話なゴスペルメロディということで、そのグッと不思議な高揚感がボサロック系のモダンジャズと混ぜ合わされていくテーマアンサンブルの魅力♪♪~♪
ここを好きになれるか否かで、このアルバムに対する鑑賞姿勢が決まるような気さえ致しますが、アドリブ先発のケニー・バレルが何時もと変わらぬ都会的なブルースフィーリングを聞かせてくれますから、後は素敵なモダンジャズ天国へ直行する他はないでしょうねぇ~~♪ 実際、このケニー・バレルは最高なんですよっ!
バックで快適なビートを送り続けるリズム隊のブルーノート感度の高さも特筆物ですし、ほとんど無名のドナルド・ベストが、これまたエモーションに満ちたヴァイブラフォンを演じてくれるのも嬉しいところです。
そしてお待たせしましたっ! ハンク・モブレーのざっくばらんなテナーサックスが鳴り出せば、その場はすっかり桃源郷♪♪~♪
まあ、正直、それほど調子は良くない感じではありますが、醸し出される雰囲気が唯一無二なんですねぇ~~♪ それは主役のドナルド・バードにも共通したところで、些か集中力に欠けたようなフレーズ展開が、残念……。
しかし、こういうゴスペルコーラス&ボイスを積極的に使うという狙いは、それが頭でっかちになりつつあった当時のモダンジャズを大衆から遊離させない目論見として、方向性は間違っていなかったと思います。
特にコーラスパートをホーンリフのように用いたりするアイディアは、ゴスペル調の演奏と見事にジャストミートしていて、個人的には気に入っていますし、それに呼応して素晴らしいアドリブをやってしまうハービー・ハンコックは、まさに名演中の大名演を披露していますよ♪♪~♪
いゃ~、実にウキウキさせられますっ!
A-2 Beast Of Burden
ちょいとテンポを落したクールな演奏ですが、もちろんテーマアンサンブルを形作るのは前曲同様のゴスペルスキャットであり、そのメロディや全体の雰囲気は、鈴木清順監督あたりが撮る日活ハードボイルドの劇伴音源の趣さえ滲んできます。
あぁ、川地民夫や宍戸錠がストイックに街を歩く映像が目に浮かびますねぇ~♪
もちろんドナルド・バードはマイルス・デイビスを意識したようなモード系のアドリブを演じ、クールなヴァイブラフォンやピアノがそれを彩った後には、ハンク・モブレーが畢生ともいえる独得のアドリブで自己の世界を紡ぎ出しますから、まさにモブレーマニアは歓喜感涙が必至ですよ。
またハービー・ハンクックが、これまた良いムードで堅実な助演を聞かせてくれるのも高得点だと思います。
B-1 Cristo Redentor
これまた黒人霊歌としか言いようのないスローなテーマメロディが男女混声コーラスで歌われるという、なんとも正統派モダンジャズから遊離したスタートではありますが、やはりドナルド・バードがトランペットでリードを吹き始めると、そこには所謂ファンキージャズのムードが濃厚に醸し出されるのですから、その安心感の作り方は流石というところでしょうか。
しかも、それが同時代の他のミュージシャンがやっていた事に比べると、なかなか新しいんですよねぇ。
まあ、このあたりの感想は、後追いならではのものですし、リアルタイムではどのような受け取られ方をしたのか、興味津々です。
B-2 The Black Disciple
そして前曲のムードを引き継ぎつつ、一転、アップテンポで熱く盛り上がるのが、このゴスペルファンキーなハードバップ! もちろんテンションの高いリズム隊のアクセントや黒いコーラス&ボイスが重要なポイントを握っていますが、アドリブパートに入ってしまえば、まずはハンク・モブレーが十八番の「節」を全開という大快演ですし、ドナルド・バードも待ってましたの熱血を迸らせます。
またハービー・ハンコックの既に新主流派がど真ん中の伴奏やアドリブも心地良く、ケニー・バレルの大ハッスルも王道を行くものでしょう。
演奏は終盤のドラムソロが蛇足という感もありますが、しかしグループ全員に共通するのは、特有の歌心を大切にしていることだと思えば、結果オーライかもしれませんねぇ。
B-3 Chant
これがまたしても下世話なゴスペル歌謡というムードが、実にたまりません♪♪~♪
微妙な「泣き」の入ったソウルフルなテーマメロディを歌うコーラス&ハミングの存在感が琴線に触れるんですよねぇ~♪
そしてドナルド・バードのトランペットがマイルス・デイビスとは一味違ったクールな歌心を決定的に披露していますよ♪♪~♪ もう、このアルバムの中では最高の瞬間じゃないでしょうか。もちろん続くハンク・モブレーが如何にも「らしい」スタイルで貫録を示せば、ケニー・バレルのマンネリフレーズも良い感じ♪♪~♪
あぁ、この歌謡曲性感度の高さが、ゴスペルと演歌のコブシを共通項にしている証だとしたら、ハービー・ハンコックの前向きなジャズ魂の発露は、一体何!?
ただし、このトラックでは、あくまでも男女混声のボーカルチームが存在してこその快楽性が顕著です。
ということで、こんなに気分は最高のアルバムが、何故に我国では人気盤扱いされなかったのか? 今でも不思議に思うほどです。
おそらくはシリアスなムードに欠けた内容がウケなかったんでしょうねぇ……。つまりジャズという、ある部分では難解で、とっつきにくい音楽を聴く優越感が、このアルバムからは得られないという事かもしれません。
しかし逆に言えば、これほど黒人音楽の様々な魅力を積極的に取り入れようとした意欲的なアルバムは、モダンジャズという枠組みの中では珍しいほどです。
それは同時期のマイルス・デイビスが試みていたモードやフリーブローイング等々と呼ばれる前向きな演奏とは異なりますが、同じトランペッターとして、ドナルド・バードが志した方向性だって、やはり前向きに違いないと思いますし、なんとも思わせぶりな斬新さを表現したジャケットには、「band & voices」と記載されているのが見過ごせないところでしょう。
もちろん、「新しき見通し」と題されたアルバムタイトルは言わずもがな!
さらに下世話だの、歌謡曲だのと書き連ねたコーラス&ボイスのゴスペルらしからぬスマートさも、なかなか要注意かと思います。
今日の歴史では、ドナルド・バードがハードバップからモードやフリーの洗礼を受けつつ、最終的にはブラックファンクでウケまくった1970年代前半の輝きまで、常に時代の節目にかなりのヒット盤を出してきたことが明白であり、このアルバムも願わくば再評価されんことを祈るばかりです。
まあ、こんな気持は後追いリスナーの気まぐれかもしれませんが……。