今日は暑かったです。蒸し暑~い!
そこで――
■The Cape Verdean Blues / Horace Silver (Blue Note)
ジャズはゴッタ煮音楽です。と、本日もいきなり極めつける私ではありますが、ゴッタ煮だって素材を活かした味付けがしっかりしていれば、一流料理になるのです。
ジャズの場合、その味付けがシンコペイションの妙、つまりリズムとビート、メロディと音符の兼ね合い、そして全体のノリという三位一体があってこそ、美味しい演奏になるのです。
このアルバムは当にそうした1枚で、基本はラテン・リズムでありながら、オフ・ビートなアクセントと擬似ロックなノリ、さらに哀愁のメロディを潜ませた演目の数々と、楽しくて深い内容になっています。
ちなみにリーダーのホレス・シルバーは1950年代のハードバップでは立役者のひとりで、ジャズ・メッセンジャーズから独立して以降、自己のハンドを率いてヒット作を連発していた黒人ピアニストです。その人気の秘密はリズミックなピアノと抜群の作曲能力、常に自己を曲げない左派的な演奏指向でしょうか。ズバリ、ジャズ的にカッコ良い人です。
録音は1965年10月1日&22日、メンバーはウディ・ショウ(tp)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、ホレス・シルバー(p)、ボプ・クランショウ(b)、ロジャー・ハンフリーズ(ds) という当時のレギュラーに加えて、B面にだけ、天才トロンボーン奏者の J.J.ジョンソンが入っています。
A-1 The Cape Verdean Blues (1965年10月1日録音)
ラテン・リズムの楽しい曲で、哀愁たっぷりのリフはポルトガルのモードでしょうか? 単純なリフを基本にしていながら、とにかく躍動的なホレス・シルバーのピアノは最高です。隙間を埋めるように絡み合うリズム隊が、また素敵♪
その土台があるのでジョー・ヘンダーソンもリズムに対するノリで勝負のアドリブを展開しています。
全体としては、ほとんどテーマの変奏に終始していますので、アッという間の4分57秒です。
A-2 The African Queen (1965年10月1日録音)
テーマのリフは、なんとなく聴いたことがあるような……。あぁ、我国が世界に誇る天才ギタリストの寺内タケシがアドリブで多用するフレーズじゃないか……? あるいはチャーリー・ベンチュラのドラム・ブギーか?
まあ、それはそれとして、全体に重苦しいムードが漂う中でジョー・ヘンダーソンが呻きます。この人は一応はコルトレーン派の第一人者なんですが、ここでは独自のヒステリックなフレーズも交え、さらにラストでは得意のサブトーンでフスススススス~、とキメてくれます。
また続くウディ・ショウは熱血派の本領発揮! 内気な想いを、ここぞとばかりに吐露する瞬間がたまりません。もちろんバックのリズム隊も抜群の反応です。特にロジャー・ハンフリーズのドラムスが◎ですねっ♪
そしてホレス・シルバーが気分はロンリーな呟きピアノで締めてくれますが、全体の暗~い雰囲気は、1970年代前半までのジャズ喫茶にドン・ピシャな演奏です。
A-3 Pretty Eyes (1965年10月1日録音)
ワルツでファンキーな哀愁曲です。全体の大らかなノリは、ホレス・シルバーだけが醸し出すことの出来る得意技♪ アドリブ先発のジョー・ヘンダーソンは、そのあたりを大切にした熱演ですが、ウディ・ショウは我関せずの態度に終始して場を盛り上げていくところが痛快です!
B-1 Nutville (1965年10月22日録音)
ここからJ.J.ジョンソンが加わっていますが、ノッケは大ハードバップ大会! 躍動的なラテン・リズムと4ビートの交錯する演奏は、本当に興奮度が大!
もちろんアドリブの先発は J.J.ジョンソンで、そのド迫力の炸裂ぶりにはバックでリフをつける若手も仰天でしょう。続くウディ・ショウも必死の吹奏ですし、ジョー・ヘンダーソンも健闘していますが、やや気迫負けでしょうか……。それほどJ.J.ジョンソンが貫禄を聴かせてくれます。
また大張り切りのロジャー・ハンフリーズのドラムスが印象的なリズム隊も強烈ですし、もちろんホレス・シルバーも爆発しています。
B-2 Boneta (1965年10月22日録音)
これも、ややネクラ系の曲ですが、深~いラテン・グループがあるので意外に心地良いノリが楽しめます。
まずホレス・シルバーが力強い左手のコード弾きを主体にペースを設定すれば、ジョー・ヘンダーソンが思わせぶりなフレーズを積み上げていきます。そして、やっぱり J.J.ジョンソン! この悠然たる存在感は凄みがありますねぇ。ですから続くウディ・ショウはチンピラ風情なんですが、そこがまた良かったりします。
B-3 Mo' Joe (1965年10月22日録音)
これもアップテンポのハードバップなんですが、要所にキメのリフとブレイクがあるのでスリル満点です。
まず J.J.ジョンソンがドギモを抜くような豪快なアドリブを聴かせれば、ジョー・ヘンダーソンはやや屈折したフレーズで応戦、ウディ・ショウも落ち着きを取り戻して熱い血潮の滾り! ロジャー・ハンフリーズの煽りも強烈です。
そしてホレス・シルバーは十八番のガンガン響く左手のコード弾き、リズミックな右手のフレーズというシルバー節をたっぷり♪ シンコペーションが全く独自なんですよ、う~ん、凄いです!
ということで、全篇が迫力の演奏で占められていますが、特にB面がジャズ喫茶向けでしょうか。
実はこのアルバム発表当時のホレス・シルバーは人気が下り坂……。この作品の評価も高くありません。というか、評論家の先生方からは無視状態……。確かに内容はマンネリ気味で、例の大ヒット「ソング・フォー・マイ・ファーザー (Blue Note)」の二番煎じを狙った部分がミエミエですからねぇ……。
しかし個人的には好きです。藤原紀香みたいなジャケ写の美女も素敵ですし、熱帯の蒸し暑さがダイレクトに伝わってくるようなグルーヴを、ぜひとも、お楽しみ下さいませ。
コメントのURLからHPにおじゃまして、ジャズのお話を興味深く拝見し←(一部項目飛ばしてます(汗)
こちらのブログにたどりつきました。同年代かとおもわれます。ゆっくり読ませていただきますね。今後もよろしくお願いします。
私は変態中年なので、ご容赦願います。
エロ物ばかりでなく、音楽についても本音で書いているつもりですので、よろしくお願い致します。