■恋人たちの100の偽り / 太田裕美 (CBSソニー)
故・筒美京平と所縁の深い女性シンガーと云えば、いしだあゆみ、奥村チヨ、平山三紀、南沙織、岩崎宏美、ジュディ・オング等々が直ぐに思い浮かんでしまいますが、もうひとり、関係性から外せないのが太田裕美でしょう。
もちろん、それは昭和50(1975)年のメガヒット以来、今日までロングセラーになっている「木綿のハンカチーフ」が殊更に有名ではありますが、実は彼女の発売したシングル盤A面曲は前年晩秋に出したデビュー曲「雨だれ」、それに続いて翌年春から次々に製作発売された「たんぽぽ」「夕焼け」、さらに前述「木綿のハンカチーフ」を挟んで昭和51(1976)年初夏の「赤いハイヒール」、「最後の一葉」「しあわせ未満」「恋愛遊戯」「九月の雨」「恋人たちの100の偽り」「ドール」「振り向けばイエスタディ」まで、つまりソロシンガーとしてスタートした時期から、5年後の昭和53(1978)年末まで、11枚のシングルA面曲が筒美京平から提供され、しかも作詞が全て松本隆という、まさに鉄壁のヒット曲作りが太田裕美という得難い個性によって実践されていたんですねぇ~~♪
もう、これは過言では無く、昭和歌謡曲の偉大なる遺産でありましょう。
さて、そこで本日ご紹介させていただくのは、昭和52(1977)年末に発売された、太田裕美にとっては10枚目のシングル盤A面曲「恋人たちの100の偽り」です。
あらためて述べるまでもありませんが、太田裕美はピアノの弾語りも得意でしたから、所謂シンガーソングライター然としたイメージも併せ持ったアイドルシンガーであり、実際にデビューアルバムから自作自演の楽曲を発表していた事は知られてはいたものの、テレビ出演時にはシングル曲をメインに歌う場合が圧倒的に多く、愛らしいルックスと甘え口調の節回しが特徴的だった事から、今となってはプレ・ニューミュージックのスタアという位置付けさえある様です。
そのあたりを当時の制作スタッフが、どの程度意識していたかは推して知るべしというところでしょうが、とにかく「木綿のハンカチーフ」というエバーグリーンな歌謡ヒットを出した以上、ファンは常に同様のイメージを大切にした路線を望むわけで、だからこそリアルタイムの歌謡界を侵食(?)していた歌謡フォークやプレ・ニューミュージックに接近したシングル曲がウケていたのは当然が必然だったんじゃ~ないでしょうか。
そして、この「恋人たちの100の偽り」は全体のイメージが歌謡フォーク調であり、彼女のボーカルにも程好い湿っぽさがありますので、せつない歌詞に「泣き」を塗したメロディこそか、作詞:松本隆&作曲:筒美京平というクレジットの証明でありましょう。
また、特筆すべきは萩田光雄のメリハリの効いたアレンジで、ミディアムアップの曲の流れを力強く支え、涙が滲みそうになる太田裕美の節回しを活かしきっているんですから、たまりません♪♪~♪
ちょっと聞きには地味と思えるかもしれませんが、聴くほどに胸が熱くなる名曲にして名唱名演と思うばかりです。
太田裕美「恋人たちの100の偽り」 10thシングル 1977年12月
そして驚いた事は、これがヒットしてから……、23年後の平成11(1999)年に発売された太田裕美25周年記念のボックスCDセットに、なんとっ! 別テイクが収録され、それは明るさ優先のカントリーロック系のアレンジの所為もあり、メロディや歌詞の雰囲気までもが別物になっているんですねぇ~~~~!?!
もちろん、アレンジはシングルバージョンと同じく萩田光雄なんですが、これはこれで、サイケおやじは困ってしまうほど大好きなんですよっ!
告白すれば、前述のボックスセットを飼いそびれてしまった事は後悔の極みであり、それでも音源だけは友人から頂戴したデジタルコピーにて、車の中で聴きまくっているというテイタラクではありますが、それもこれも、楽曲そのものの素晴らしさがあればこそです♪♪~♪
恋人たちの100の偽り 別バージョン ★ Hiromi Ohta
あぁ~~、今、これを書きながら、両バージョンをリピートしまくって聴くほどに、ジンワリと心が温まり、せつなさに胸キュンというサイケおやじであります。
今回は特にネットから音源を貼り付けておきましたので、ぜひとも、お楽しみくださいませ。
ということで、なかなか今日は冬も間近な寒さでありましたが、こ~ゆ~時こそ、筒美京平を歌う太田裕美が愛おしい♪♪~♪